薬価の外国平均価格調整、診療・支払両側から「米国価格は参照対象から除外すべき」との指摘―中医協・薬価専門部会



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 医療用医薬品の公定価格(薬価)を設定する際の「外国平均価格調整」ルールにおいて、医療保険制度や医薬品の償還価格決定ルールが我が国と大きく異なる「米国」を、参照対象から除外すべきではないか―。

 25日に開かれた中央社会保険医療協議会の薬価専門部会では、診療側・支払側双方の委員からこういった指摘が出されました。ただし、米国は「医薬品の世界最大のマーケット」であり慎重な検討が行われます。

1月25日に開催された、「第125回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」
1月25日に開催された、「第125回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

「米国価格は市場実勢価格ではない」と両側委員は指摘

 中医協の薬価専門部会では、昨年(2016年)末に塩崎恭久厚生労働大臣、麻生太郎財務大臣、菅義偉内閣官房長官、石原伸晃内閣府特命担当大臣の4大臣会合で決定された「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」(基本方針)に沿って、具体的な改革案を議論しています(関連記事はこちら)。

 25日の部会では「外国平均価格調整」ルールの見直しが議題となりました。このルールは同一医薬品の内外価格差を是正するために導入されたもので、米国・英国・フランス・ドイツの平均価格に比べて、我が国の薬価が一定以上高額(あるいは低額)の場合に、価格を引き下げる(あるいは引き上げる)ものです(関連記事はこちら)。ただし、昨今の新薬算定において「為替変動により外国価格が高騰し、我が国の医薬品価格も想定外に高額になってしまう」ケースが発生するなど、課題があることが指摘されています(関連記事はこちらこちら)。

外国平均価格調整ルールの概要(その1)
外国平均価格調整ルールの概要(その1)
外国平均価格調整ルールの概要(その2)
外国平均価格調整ルールの概要(その2)

 このため基本方針でも「特に高額医薬品などについて、制度の差異を踏まえつつ外国価格をより正確に把握するなど、外国価格調整の方法の改善を検討」することを明確にしています。厚労省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は25日の部会で、(1)参照国や参照価格の妥当性(2)価格調整すべき医薬品の範囲(3)調整方法(4)再算定との関係―といった検討課題を提示しています。

 このうち(1)について支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は「医薬品の償還価格について米国は自由価格だが、我が国は公定価格であり、参照価格とすることに違和感を覚える」と指摘。また診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)も「(市場実勢価格を把握できないのであれば)米国は参照国から除外すべき」との考えを明確にしました。さらに診療側の安倍好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は、「米国価格は参照価格から除外し、『最大限参考にする』こととしてはどうか」と提案しています。

価格参照をしている4国の医療保険制度と、医薬品償還価格決定の仕組み
価格参照をしている4国の医療保険制度と、医薬品償還価格決定の仕組み

 ちなみに、英国・フランス・ドイツに比べて、米国では医薬品価格が高い傾向にあるとのデータが中山薬剤管理官から示されています。これは、我が国の薬価を設定する際に「米国価格にひっぱられて高額な方向にシフトしやすい」ことを示していると言え、逆に考えれば米国価格を除外すると「我が国の薬価が下がる」可能性が一定程度あることがわかります。

米国では我が国に比べて同一製品の医薬品価格が高くなっている(あくまで参照とする対象の価格であり、市場実勢価格ではない)
米国では我が国に比べて同一製品の医薬品価格が高くなっている(あくまで参照とする対象の価格であり、市場実勢価格ではない)

 また、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)から「米国でトランプ大統領が誕生した。参照価格から米国を除外した場合に、(日本への医薬品供給などに)影響は出ないのか」との質問が、中川委員から「2011年の日米経済調査会議で米国の関心事項として『日本における価格が外国平均価格より高いか低いかに関わらず、製品が平等に扱われるよう外国平均価格調整ルールを改定する』といった項目が盛り込まれた。これが再燃する可能性もあり、覚悟をもって検討する必要がある」との指摘があったことを受け、厚労省保険局医療課の迫井正深課長は「医薬品の価格設定や流通に関しては『公平・公正』という原則の下で、各国で適切に運用されている。米国で政権が変わったが、我が国における適切な制度運用に向けた覚悟を持って臨んでいく」との見解を示しています。

 一方、製薬メーカーの立場で出席している加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬株式会社常務執行役員)は、「外国平均価格調整のルールは非常に複雑であり、簡素化に向けた議論も行ってほしい」「対象範囲や適用の限定についても検討してほしい」との要望を行いました。

 

 なお部会の検討テーマとスケジュールについては、1月11日の前回会合で大枠が示されていますが、中山薬剤管理官は25日の会合で「前半部分」について、より詳細なスケジュール案を提示しています。

薬価制度抜本改革(前半検討部分)の詳細な検討スケジュール案
薬価制度抜本改革(前半検討部分)の詳細な検討スケジュール案

  

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