2017年度、医療関係費は11兆7685億円、介護関係費は3兆130億円―厚労省予算



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 来年度(2017年度)の厚生労働省予算案が固まりました。一般会計は今年度(2016年度)当初予算に比べて3763億円・1.2%増加し、30兆6873億円となり、うち社会保障関係費は3852億円・1.3%増の30兆2483億円となっています。(厚労省のサイトはこちら

 また政府全体でみた社会保障関係費は32兆4735億円で、今年度に比べて4997億円・1.6%増となり、「5000億円増にとどめる」との指針の範囲内に収められています(関連記事はこちらこちら)。

2017年度厚労省予算の全体像、政府全体でみると社会保障関係費の伸びは5000億円内に収められている
2017年度厚労省予算の全体像、政府全体でみると社会保障関係費の伸びは5000億円内に収められている

 社会保障関係費の内訳を見ると、医療が11兆7685億円(今年度に比べて2247億円・2.9%増)で全体の38.9%と最大のシェアを占めています。ただし、増加分でみると、高齢化を受けて介護(3兆130億円)が807億円・2.8%ともっとも大きくなっています。

社会保障関係費の内訳、医療がもっとも大きなシェアを占めるが、伸び率では介護がもっとも大きい
社会保障関係費の内訳、医療がもっとも大きなシェアを占めるが、伸び率では介護がもっとも大きい

消費増税と重点化などにより、1兆8400億円を社会保障の充実に

 消費税率が2014年4月から8%に引き上げられましたが、これによる増収分は「すべて社会保障の充実・安定化に向ける」ことになっています。2017年度の増収分は8兆2000億円となり、▼3兆1000億円を基礎年金国庫負担割合2分の1に充てる▼1兆3500億円を医療・介護・子育て支援など社会保障の充実に充てる▼3700億円を診療報酬や介護報酬などの物価上昇分に充てる▼3兆3000億円を後代負担軽減に充てる―ことになりました。

消費増税分の社会保障充当の内訳
消費増税分の社会保障充当の内訳

 社会保障の充実については、上記1兆3500億円のほかに、重点化・効率化(社会保障改革プログラム法)による財政効果4900億円を活用するなどし、1兆8388億円が確保されています。その内訳を見ると、▼地域医療介護総合確保基金(医療分)による病床機能分化などに904億円▼基金(介護分)による地域包括ケアシステムの構築に724億円▼介護職員の処遇改善などに1196億円▼地域支援事業(在宅医療・介護連携推進事業など)の充実に429億円▼難病・小児慢性特定疾病制度の運用などに2089億円―などとなっています(いずれも国分と地方分の合計)。

2017年度における社会保障充実の内容
2017年度における社会保障充実の内容

介護離職ゼロなど、アベノミクスの新三本の矢実現を目指す

 次に2017年度予算の重点事項の中から、医療・介護に関係する事項を見ていきましょう。

 まず2017年度予算ではアベノミクスの「新たな第3の矢」(1)希望を生み出す強い経済(GDP600兆円の実現)(2)夢をつむぐ子育て支援(希望出生率1.3の実現)(3)安心につながる社会保障(介護離職ゼロなど)―を実現するための事項が目立ちます。

2017年度予算では、アベノミクスの新第3の矢実現を目指す
2017年度予算では、アベノミクスの新第3の矢実現を目指す

 (1)では、医療分野を成長産業の1つに位置づけており、▼医療系ベンチャーの育成支援6200億円)▼AMED(日本医療研究開発機構)を通じた研究開発の戦略的実施に479億円▼医療のICT化・保険社機能の強化(医療等ID導入や、医療情報データベースの本格運用に向けた環境整備など)に250億円▼医療の国際展開・薬事規制の国際調和の推進に1.9億円―などが充てられます。

 また(3)の介護離職ゼロに向けては、▼介護サービス基盤の整備に574億円▼介護人材の確保に437億円▼健康寿命の延伸に向けた取り組みに34億円―などが充てられます。

医療・介護データの連結や、在宅医療・在宅看取りの推進などの経費を計上

 このほか、医療・介護に関係する事項を見ると、次のような項目が計上されています。

▼医療・介護データ連結の推進:1.5億円(NDBや介護保険総合データベースなどを活用し、医療・介護のレセプト、特定健診・保健指導、要介護認定に係る情報などを連結したデータベースの構築に向けた調査研究を行う)(関連記事はこちら

▼医師の地域的な適正配置のためのデータベース構築:900万円(都道府県が医師確保対策を行うために必要な医師の研修先、勤務先、診療科などの情報を一元的に管理するデータベースを構築する)

▼新専門医制度の構築に向けた取り組み:2.6億円(医師偏在の拡大防止に向け、研修プログラムについて協議する都道府県協議会の経費を増額するとともに、医師不足地域へ各都道府県が指導医派遣などを行う経費を補助する。また日本専門医機構による専攻医の適正配置を促すためのシステム開発経費を補助する)(関連記事はこちら

▼特定行為に係る看護師の研修制度の推進:4.3億円(特定研修機関の確保、指定研修修了者の計画的な養成、指導者育成支援など)(関連記事はこちら

▼在宅医療の推進:6400万円(在宅医療・訪問看護の専門知識・経験を備えた講師の育成や、好事例モデルの横展開など)(関連記事はこちら

▼人生の最終段階における医療体制整備:1億円(人生の最終段階における医療に関する患者からの相談に適切に対応できる医師の育成など)(関連記事はこちら

▼在宅看取り体制の整備:2200万円(医師による死亡診断に必要な情報を報告する看護師を対象にした法医学等に関する研修の実施支援)(関連記事はこちら

▼医療安全の推進:9.9億円(医療事故調査・支援センターの運営経費の支援など)(関連記事はこちら

▼救急医療体制の整備:4.2億円ほか(重篤な救急患者を24時間体制で受け入れる救命救急センターなどへの財政支援)

▼小児・周産期医療体制の充実:2.6億円ほか(総合周産期母子医療センターや地域周産期母子医療センターのNICU、MFICUへの支援など)

▼革新的な医薬品の最適仕様の推進:2.3億円(最適使用推進ガイドライン策定のための体制整備)(関連記事はこちら

▼クリニカル・イノベーション・ネットワーク構想の推進:48億円(大学やナショナルセンターなどに構築されている疾患登録レジストリの情報を利用目的ごとに収集・整理し、治験・臨床研究等のコーディネートを行うワンストップサービス化を推進する)

▼国立高度専門医療研究センターにおける臨床研究などの基盤整備:7.4億円

▼革新的医療技術創出拠点プロジェクト:39億円(臨床研究中核病院などを中心に国際水準の質の高い多施設協働臨床研究、医師主導治験などを実施する)

▼再生医療の実現化ハイウェイ構想:32億円

▼疾病克服に向けたゲノム医療実現化プロジェクト:40億円(ナショナルセンターや大学を中心としたゲノム情報などの集積拠点を整備し、集積した情報の解析などで得られた情報を医療機関に提供することで個別化医療の推進を図る)

▼ジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクト:101億円(ゲノム医療の実現、ライフステージやがんの特性に着目した研究などを重点的に推進する)

▼難病克服プロジェクト:131億円(難病患者から採取したiPS 細胞を用いた病態解明・治療法の開発研究を推進するとともに、難病の克服につながるような希少遺伝子の検査法等の開発や未診断疾患に関する検査・診断スキームの構築等を推進する)(関連記事はこちら

▼医療技術評価の推進:3.4億円(費用対効果評価にかかる調査や、患者申出療養への円滑な対応など)

▼国民健康保険への財政支援など:2100億円(財政安定化基金の造成やシステム開発経費の補助など)※なお2018年度から、未就学児までの医療費を助成した市町村の国保に対する国庫補助の減額は行わないこととする

▼介護納付金における総報酬割導入に伴う、一部被用者保険(負担増になるところ)への財政支援:94億円(関連記事はこちらこちら

▼高齢者の自立支援・介護予防の横展開:2.6億円(都道府県を通じたアドバイザー派遣や集団研修など)(関連記事はこちらこちら

▼ケアマネジメント手法の標準化:2900万円(関連記事はこちら

▼介護・医療関連情報の「見える化」推進:2.2億円(地域包括ケア「見える化」システムのデータ拡充や機能強化)

▼次世代介護技術の活用による生産性向上:5.3億円(介護ロボットの開発・普及、小規模事業所における介護記録などのICT化試行など)

▼認知症高齢者対策:88億円(認知症疾患医療センターの整備促進、認知症研究の推進など)

▼データヘルスの効果的な実施の推進:9.1億円

▼糖尿病性腎症患者の重症化予防への支援:4900万円(医療保険者が医療機関と連携した保健指導を実施する好事例の横展開)(関連記事はこちら

▼後期高齢者医療広域連合における後発医薬品使用促進の支援:2.8億円(後発医薬品を使用した場合の差額通知送付などを支援する)

▼重複頻回受診者などへの訪問指導、高齢者の低栄養防止などの推進:4.5億円(レセプトなどから選定した重複・頻回受診者などに対し、保健師などが訪問指導を実施する)

▼医療データの利用拡大のための基盤整備:4.7億円(医療情報の各種データベース事業の利活用の実現、およびさらなる臨床研究などのICT基盤の構築に向けた研究事業を実施する)

▼NDB データの利活用および医療保険分野における番号制度の利活用推進:201億円(レセプト情報などから得られる医療情報について、地域別などに集計した「NDBオープンデータ」にとりまとめて公表する)

▼DPCデータの利用促進:1.8億円(DPC データの一元管理および利活用を行うデータベースの運用を開始し、第三者提供に必要な経費を確保する)

▼がん対策:314億円(がん予防、治療・研究、がんとの共生の3本柱を推進するとともに、次期がん対策推進基本計画を見据えた対策の強化を行う)

 

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