薬価の毎年改定、製薬メーカーや卸は「断固として反対」―中医協・薬価専門部会



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 経済財政諮問会議で議論されている薬価精度抜本改革に関連して、中央社会保険医療協議会の薬価専門部会は9日、関係団体からのヒアリングを実施しました(関連記事はこちらこちらこちら)。

 製薬メーカーや医薬品卸業者、薬価制度改革の必要性は理解するものの、「薬価の毎年改定」に対しては断固として反対との見解を改めて明確にしています。

12月9日に開催された、「第122回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」
12月9日に開催された、「第122回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

医薬品業界は、毎年改定によってイノベーションや医薬品安定供給が阻害されると指摘

 意見を述べたのは、▼日本製薬団体連合会(日薬連)▼米国研究製薬工業協会(PhRMA)▼欧州製薬団体連合会(EFPIA)▼日本医薬品卸売業連合会(卸連)―の4団体です。

 製薬メーカーの団体である前3者は、製薬メーカーにおける新薬開発意欲を阻害しないような薬価制度改革が必要とし、▽企業の競争力を弱体化させる▽国の成長戦略の方向性に反する▽イノベーション創出を阻害する▽医薬品の安定供給を阻害▽診療報酬本体とのバランスを失する―といった理由から「毎年の薬価改定には断固反対」との姿勢を強調しました。

 このほか、個別薬価算定ルールに関して、▽新薬創出・適応外薬解消等促進加算は現行ルールで制度化すべき(現在は試行的導入)▽特例の市場拡大再算定(巨額再算定)は廃止を検討すべき▽革新的新薬の開発を後押しする新薬の薬価算定ルールを検討すべき▽原価計算方式において「製造総原価」は、最重要企業秘密であり公表できない▽外国平均価格調整は「極端な外国価格との乖離」が生じた場合に限定すべき▽後発医薬品の初収載価格のさらなる引き下げに合理的理由はない―といった見解も披露しています。

 また卸連も、▽診療報酬と薬価が分断されてしまう▽流通改善に逆行する(単品単価取引が阻害される)▽厳しい価格交渉が予想される―といった理由をあげ、毎年改定に強く反対しました。

 

 こうした意見に対し、中川俊男委員(日本医師会副会長)や吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は「製造総原価を公表できないとするが、営利を追求する製薬メーカーの姿勢がこういった事態(経済財政諮問会議で毎年薬価が提言されているような)を招いた。『公表できない』とする表現を見直せないか」との旨を指摘。これについて日薬連の多田正世会長は、「極めて重要な企業秘密である。原価を公表すれば、それに沿った不当な価格形成につながる恐れがある。また公表こそしていないが、薬価算定組織(薬価算定ルールに則って、具体的な薬価を算定する中医協の下部組織)には詳細な情報を提供している」旨を説明し、理解を求めています。

 また、幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は卸連の主張に対し「利ざやの減少や、業務過大を理由に毎年の薬価改定に反対しているが、煩雑になることは承知したが、『物理的に対応不可能』というものではないと理解した」との見解を述べています。

 

 このほか、中川委員らが以前から指摘している「外国価格調整において、リストプライスであるアメリカの価格を除外すべきではないか」との指摘に対して、日薬連サイドは「最大の市場であるアメリカを除外することは慎重に考えるべき」との見解を披露しています。

 また、幸野委員が従前に問題提起した「実勢価格動態」(薬価改定直後に実勢価格が下がるのか、経時的に下がっていくのか、薬価調整直前になって下がるのか)について、卸連サイドは「個々の品目で異なる」と述べるにとどめています。

 なお、効能効果追加で市場が大幅に拡大した場合の薬価見直しについて、EFPIAからは「効能効果の場合には追加の治験などの投資が必要となる。安直に薬価が引き下げられれば、費用な医薬品を患者に届けられなくなるなどのデメリットがあることを理解してほしい」との要望も行われました。

 

 こうした意見や議論の内容は、塩崎恭久厚生労働大臣に伝えられ、薬価制度の基本方針策定論議(経済財政諮問会議や、厚労・財務・内閣府特命大臣に内閣官房長官を加えた4大臣会合)の中で活かされることが期待されます。

  

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