医療計画、介護保険計画の連携強化に向けた改訂「総合確保方針」、年内に告示へ―医療介護総合確保促進会議



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 2018年度からスタートする新たな医療計画(第7次)と介護保険事業(支援)計画(第7期)の整合性を図り、これまで以上の医療・介護連携を目指すため、「総合確保方針」が改訂されます。

 28日に開かれた医療介護総合確保促進会議では、改訂案を概ねで了承。厚生労働省は文言調整などを行った上で、年内に改訂「総合確保方針」を告示する考えです。

11月28日に開催された、「第10回 医療介護総合確保促進会議」
11月28日に開催された、「第10回 医療介護総合確保促進会議」

医療計画と介護保険事業(支援)計画の整合性確保が重要課題

 2025年には、いわゆる団塊の世代((1947-49年生まれの人)がすべて後期高齢者になるため、今後、慢性期医療や介護のニーズが加速度的に増加すると考えられます。こうしたニーズに、従前の医療・介護提供体制で対応していくことは困難なため(そもそもベッド数などが足らず、費用も高騰し、患者・利用者のQOLも低くなる)、国は「地域包括ケアシステムの構築」や「病院・病床の機能分化・連携の推進」などを柱とする医療介護総合確保推進法(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律)を制定。2013年から順次施行されています。

 医療介護総合確保推進法では、例えば「地域医療構想」や「病床機能報告制度」などのほか、医療計画のサイクルを従前の5年から6年に見直しも含まれています。これは3年単位の介護保険事業(支援)計画と整合性をとることが狙いです。2018年度から新たな医療計画、介護保険事業(支援)計画がスタートし、以後、両計画はいわば車の両輪として医療・介護提供体制のベースとなります。

 これらの計画はサイクルだけでなく、内容についても「整合性」をとることが求められ、厚労省は上位指針となる「総合確保方針」を2014年9月に策定しました。今般、新たな計画が策定されることを踏まえ、総合確保方針について、より医療・介護連携を強化するための見直しが行われるものです。

 厚労省保険局医療介護連携政策課の黒田秀郎課長は、「診療報酬や介護報酬、各種補助金、さらに地域医療介護総合確保基金によって医療提供体制、介護提供体制が整備されている。総合確保方針では、こうした整備がしっかりとなされることを前提に両者の整合性確保を目指している」と、改訂の意義を強調しています。

特に在宅医療・介護連携に向け、行政、サービス提供者、利用者の各レベルで連携を

 主な見直し内容は14日の前回会合で示されており、28日には、さらなる修正・追加案が厚労省から提案されました。前回の提示内容も含めて、見直し内容を眺めると、次のような点が目を引きます。

(1)医療計画・介護保険事業(支援)計画の一体的かつ整合的な策定を目指し、「都道府県と市町村の関係者が協議を行う場」を設ける

医療計画と介護保険事業(支援)計画の整合性を図るため、都道府県と市町村の関係者で「協議の場」を設ける(青字は11月14日の前回会合で示された修正点)
医療計画と介護保険事業(支援)計画の整合性を図るため、都道府県と市町村の関係者で「協議の場」を設ける(青字は11月14日の前回会合で示された修正点)

(2)医療計画の基礎となる2次医療圏(地域医療構想の構想区域も2次医療圏がベースとなる)と、介護保険の基礎となる老人福祉圏域について可能な限り一致させるよう努める

2次医療圏と老人福祉圏域の整合性を図ることが求められる(青字は11月14日の前回会合で示された修正点)
2次医療圏と老人福祉圏域の整合性を図ることが求められる(青字は11月14日の前回会合で示された修正点)

(3)在宅医療の整備目標(医療計画)と、介護サービスの整備目標(介護保険事業計画)とを整合的なものとする

在宅医療と介護の整備目標について整合性を図ることが求められる(青字は11月14日の前回会合で示された修正点)
在宅医療と介護の整備目標について整合性を図ることが求められる(青字は11月14日の前回会合で示された修正点)

(4)在宅医療・介護の連携を図るため、市町村の実施する「在宅医療・介護連携推進事業」について都道府県が必要な支援を行う【行政による在宅医療・介護連携の推進】

行政面で、特に在宅医療と在宅介護の連携を図るように努める(青字は11月14日の前回会合で示された修正点、赤字は11月28日の今回会合で示された修正点)
行政面で、特に在宅医療と在宅介護の連携を図るように努める(青字は11月14日の前回会合で示された修正点、赤字は11月28日の今回会合で示された修正点)

(5)在宅医療・介護を担う提供側(医療機関や訪問看護ステーションを含む介護サービス事業者などはもちろん、医師会などの職能団体)が、▼入退院支援▼日常の療養支援▼急変時の対応▼看取り―などの場面で切れ目のないサービス提供に努め、サービス利用者も医療・介護サービスについての理解を深める【利用者も含めたサービス提供側による在宅医療・介護連携の推進】

サービス提供体制・利用者も在宅医療と在宅介護の連携に向けて努めることが求められる(青字は11月14日の前回会合で示された修正点、赤字は11月28日の今回会合で示された修正点)
サービス提供体制・利用者も在宅医療と在宅介護の連携に向けて努めることが求められる(青字は11月14日の前回会合で示された修正点、赤字は11月28日の今回会合で示された修正点)

(6)医療・介護両分野に精通した人材の確保を進める

医療・介護の両分野に精通した人材の確保が重要となる(青字は11月14日の前回会合で示された修正点)
医療・介護の両分野に精通した人材の確保が重要となる(青字は11月14日の前回会合で示された修正点)

(7)医療・介護連携はもとより、地域包括ケアシステムのベースとも言える「住宅や居住」に係る施策との連携も進める

医療・介護連携にとどまらず、住宅・居住施策との連携も重要となる(青字は11月14日の前回会合で示された修正点、赤字は11月28日の今回会合で示された修正点)
医療・介護連携にとどまらず、住宅・居住施策との連携も重要となる(青字は11月14日の前回会合で示された修正点、赤字は11月28日の今回会合で示された修正点)

(8)医療・介護連携が特に重要な場面の1つとして認知症施策があり、地域ごとに、認知症の状態に応じた適切なサービス提供の流れを確立し、早期からの適切な診断や対応などを行う必要がある

とくに認知症施策において医療・介護連携が極めて重要となる(赤字は11月28日の今回会合で示された修正点)
とくに認知症施策において医療・介護連携が極めて重要となる(赤字は11月28日の今回会合で示された修正点)

(9)医療・介護連携を進めるための重要なツールとして情報通信技術(ICT)があり、多様な活用方法が期待されるが、「互換性が十分に確保されていない」といった課題があることを踏まえる

医療・介護連携にあたってはICTの活用が重要だが、課題もある点に留意が必要となる(赤字は11月28日の今回会合で示された修正点)
医療・介護連携にあたってはICTの活用が重要だが、課題もある点に留意が必要となる(赤字は11月28日の今回会合で示された修正点)

(10)地域包括ケアシステムにおいては疾病予防・介護予防も重要な施策であり、疾病予防において、医療保険者(協会けんぽや健康保険組合、国民健康保険など)が実施する保健事業(ヘルス事業)との連携も重要である

疾病予防にあたっては、医療保険者の保健事業との連携も重要となる(赤字は11月28日の今回会合で示された修正点)
疾病予防にあたっては、医療保険者の保健事業との連携も重要となる(赤字は11月28日の今回会合で示された修正点)

 

 このうち(8)の認知症対策は、樋口恵子構成員(高齢社会をよくする女性の会理事長)や馬袋秀男構成員(民間介護事業推進委員会代表委員)の強い要望を踏まえて新たに追加された見直し項目です。高齢化の進展とともに認知症患者も飛躍的に増加すると見込まれており、早期の確定診断を前提とした初期集中支援が重要とされており、医療・介護の両方の側面からの支援が必要な分野です。

 (9)は、例えば「電子カルテにおいて、ベンダーが異なるとデータの互換性が極めて低い」といった課題を認識した上で、今後、医療・介護双方のデータを蓄積・連結してさまざまな事業に結びつけることの重要性を指摘したものです。医療・介護分野においてビッグデータを活用した研究(例えば画期的な医薬品の開発)や保健事業(いわゆるデータヘルス)が期待されており、将来を見据えた重要なテーマと言えます。

 また(10)は西澤寛俊構成員(全日本病院協会会長)の要望を踏まえた追加項目です。当初、「医療保険者はさまざまであり、総合確保方針などに医療保険者の保健事業を盛り込むことは困難」(盛り込まれずとも保健事業は当然推進する)とされていましたが、連携の重要性が謳われることになりました。

 

 部会では、こうした見直し案について前向きな「追加修正」意見が出されています。(5)のサービス提供者による在宅・医療介護連携の推進に関しては、「サービス提供者自身が予防の重要性を認識した上で連携することが重要である」(菊池令子構成員:日本看護協会副会長)、「サービス利用者はもちろん、背後にいる地域住民が医療・介護について理解を深めるべきである」(馬袋構成員や樋口構成員)といった指摘が出ました。厚労省保険局医療介護連携政策課の黒田秀郎課長は、こうした指摘を踏まえて、より分かりやすく記述する考えを示しています。

 また(6)の人材確保については、黒田医療介護連携政策課長から「医療の専門家が介護分野にも視野を広げ、介護の専門家が医療分野にも視野を広げる」ことで、両分野に精通する人材が育つという考え方が説明されています。この点について平川則男構成員(日本労働組合総連合会総合政策局長)は「自治体では人事異動があり、専門的人材の育成が難しい。また両分野に精通した人材はなかなおらず、そこで連携が重要になる」と指摘したほか、「具体的にどういった人材が必要とされ、先行自治体ではどういった取り組みで人材確保しているのか」などを解釈通知などで示すよう厚労省に要望しています。

 さらに(7)の「住宅や居住」施策との連携に関連し、馬袋委員らから「地域づくり」の視点を盛り込んではどうかとの提案も行われています。

 

 こうした意見は、厚労省と田中滋座長(慶應義塾大学名誉教授)、森田朗座長代理(国立社会保障・人口問題研究所長)で忖度し、具体的な修正内容を固めることが了承されました。黒田医療介護連携政策課長は「修正内容を固め、年内に告示を行う」ことを明確にしています。

 なお、医療計画や介護保険事業(支援)計画の策定方針は、厚労省の別の審議会・検討会で議論が進められています。総合確保方針はこれらのベースとなるもので、医療計画などの策定論議の中に、医療介護総合確保促進会議で出された意見や考え方は随時盛り込まれていきます。具体的には、24日に「医療計画の見直し等に関する検討会」で示された意見とりまとめ(叩き台)や、25日に「社会保障審議会・介護保険部会」で示された意見素案には、両計画の整合性を図るために(1)の「協議の場」を設置することなどが、すでに盛り込まれています。

  

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