富山県立中央病院、「余裕のII群維持」までの経緯と対策―全国自治体病院学会



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 10月20日から21日にかけて「第55回全国自治体病院学会」が富山県で開催され、21日のランチョンセミナーで、GHC代表取締役社長の渡辺幸子は「地域医療構想下における戦略的病院経営 ~富山県立中央病院の事例をもとに~」と題して講演しました。座長はGHCマネジャーの冨吉則行が務めました。

 高度急性期医療を提供する「富山県立中央病院」について、DPC対象病院のII群昇格と「余裕の維持」に至るまでの経緯と対策を紹介。また、急性期病院が注目する「重症度、医療・看護必要度」のデータ精度向上や重症度割合向上に向けた対策について解説しました。

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パスの徹底と在院日数短縮

 医療機関群が初めて導入された2012年、富山県立中央病院はIII群と位置付けられました。診療密度が若干足りなかったためです。そのため、同院はII群昇格に向けた診療密度の改善対策を実施。具体的には、クリニカルパスの順守を徹底し、在院日数の短縮を推進していきました。

 結果、14年には診療密度の基準をクリアして見事、II群へ昇格。この結果に安心することなく、同院はさらなるパスの徹底を推進するとともに、在院日数の短縮もこれまで以上に取り組んでいきました。並行して集患対策も進めたことで患者数も増加。16年には診療密度の基準は余裕を持ってクリアしていたため、安心してII群維持の報告を受けました。

 II群維持に向けたパスの徹底や在院日数短縮に貢献したツールの一つが、「病院ダッシュボード」です。病院ダッシュボードは、信号色のシグナルを軸に、視覚的にパッと見て「優秀」か「改善の余地あり」かが分かる次世代型経営支援ツールです。改善のポイントを探るため、分析に時間と労力を割くのではなく、改善活動に労力が割けることを目指しているためです。

 主要機能である「DPC分析」の「俯瞰マップ」を見てみると、加算算定状況の項目にオレンジ色がある以外、すべての項目が平均以上、大半は青や緑の上位の成績になっていることが分かります。例えば、症例数の多い疾患である狭心症の心臓カテーテル検査入院。これを掘り下げてみてみると、過去の在院日数は3日がほとんどでしたが、最新データを確認すると、在院日数のほとんどが2日に集中しており、大改善していることが分かります。

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 こうしたデータ確認をした上での改善活動を各診療科、疾患別で細かく、地道に取り組んできたことが、余裕のII群維持を大きく下支えしています。この日の講演では、狭心症のほかにも示唆に富むDPCケース分析の事例、急性期病院の心臓部とも言えるオペ室の状況について病院ダッシュボードのオプション機能である「手術分析」(関連記事『手術室の稼働率80%、済生会福岡総合の強さの秘密を分析』)、加算の算定状況については同じオプショの機能である「チーム医療Plus」(関連記事『経営改善の近道は「患者第一主義」、チーム医療をテーマに病院ダッシュボード体験会』)を用いて、実際の富山県立中央病院のデータを分析し、同院の強みについて解説していきました。

「看護必要度分析」が大幅バージョンアップ

 講演内容の詳細はこちらでは省かせていただきますが、病院ダッシュボードを活用すれば、視覚的に、瞬時に、病院の改善ポイントを把握することができます。ほかにも、病院ダッシュボードには「財務分析」や「マーケット分析」(関連記事『自病院の強みと弱みは何か、データに基づく正しいSWOT分析の要点』)、オプション機能では「外来分析」(関連記事『外来分析で逆紹介推進やパス改善に活用』)、「材料ベンチ」(関連記事『病院大再編促す地域医療構想を乗り切る3つの条件』)などがあります。

 最新のオプション機能としては、看護必要度データの精度チェックができる「看護必要度分析」(関連記事『看護必要度、「データ監査」に衝撃 相澤病院、教育と仕組み化で精度を大幅改善』)がありますが、この10月に大幅リニューアル。講演ではこの機能の内容と看護必要度データの精度向上の重要性についても解説しました。

 GHCの調査によると、多くの病院で看護必要度の生データは精度に問題があることが分かっています。7対1入院基本料の施設基準で最も重要な要件は重症患者割合ですが、データ精度に問題があれば、16年度改定で25%(200床以下は23%の経過措置あり)へ引き上げられた基準値を満たせなくなる可能性があります。

 具体的な7対1入院基本料の施設基準をクリアするための対策は、(1)看護必要度データの精度を高める(2)一般病棟の在院日数を適正化する(3)病床再編や機能分化を推進する(4)重症患者を集患――4つの手法が考えられます。数字が大きくなるにつれて難易度が上がることに加えて、これら対策の入口になるのがデータ精度向上のため、まずはデータ精度向上に着手すべきです。看護必要度分析はその支援をするためのツールであり、大幅リニューアルで疾患別分析などにも対応したため、過去に遡って問題のあるデータを修正することもできるようになりました(関連記事『症例単位で看護必要度データ修正可能、GHCが病院ダッシュボードの新機能刷新で新制度とベンチマーク分析に対応』)。

 看護必要度分析については、ご興味があれば以下の動画をご覧いただくか、関連の記事(記事はこちら)や看護必要度の紹介ページ(ページはこちら)をご連絡いただければと思います。

解説を担当したコンサルタント 冨吉 則行(とみよし・のりゆき)

tomiyoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
早稲田大学社会科学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。DPC分析、人財育成トレーニング、病床戦略支援、コスト削減、看護部改善支援などを得意とする。金沢赤十字病院(事例紹介はこちら)、愛媛県立中央病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う(関連記事「病院が変化の先頭に立つために今できるたった3つのこと」)。
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