オプジーボ対象に、2018年度改定を待たず緊急的に市場拡大再算定を実施―中医協・薬価部会



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 超高額な抗がん剤であるオプジーボを対象として、2018年度の次期薬価改定を前に「市場拡大再算定」を活用した、緊急的な薬価の見直し(引き下げ)を行う―。

 こういった基本的な方向が、中央社会保険医療協議会の薬価専門部会で固まりつつあります。5日に開かれた薬価部会では中医協委員からは特段の反論は出されておらず、今後、具体的な引き下げ方法について詰めの議論が行われます。

 あわせて厚生労働省はオプジーボなどを対象に「最適使用推進ガイドライン」の作成を進めており、診療報酬上の取り扱い(例えば、どのようなケースで保険償還可能か)について、このガイドラインを踏まえた留意事項通知を発出する方針が5日の部会で了承されました。

10月5日に開催された、「第119回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」
10月5日に開催された、「第119回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

緊急対応の対象は事実上オプジーボのみ、引き下げ時期は未定で、経過措置も

 革新的な抗がん剤のオプジーボは、希少がんであるメラノーマ(根治切除不能な悪性黒色腫、推定対象患者は470人)の治療薬として超高額な薬価(100mgで72万9849円)が設定されました。その後、切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(推定対象患者は5万人)へ適応が拡大されましたが、適応拡大時期が2016年度の薬価改定の対象設定後となったため、高額な薬価が据え置かれています(関連記事はこちら)。

 現在の薬価基準制度では、こうした事態が想定されておらず、厚労省は2018年度改定に向けて新たな薬価制度や、こうした事態に対応できる制度(例えば、効能・効果が追加され、対象患者が大幅に増加する超高額薬剤について薬価改定を都度行うこと、なども考えられる)を構築する必要があると考えており、薬価専門部会を中心に今後、検討が進められます【基本的な考え方】。

 一方、厚労省はオプジーボについて「超高額な薬価を維持したまま、さらに適応が拡大する」ような状態を放置することはできないとも考えており、今般、緊急的な対応(薬価の特例的な引き下げ)が検討されています。

 5日の部会では、緊急的な対応について、次の2つの論点が改めて示されました。これは「緊急的な対応」の実施を前提とした論点ですが、これまで慎重姿勢をとっていた診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)も明確な反対をしておらず、「緊急的な対応」の実施そのものは、中医協として了承したと考えられそうです(関連記事はこちら)。

(1)対象は、「2015年10月-2016年3月までに効能追加などがなされた薬剤」のうち、「2016年度販売額が1000億円超、かつ当初予測の10倍以上となる薬剤」とする

(2)薬価引き下げの方法として「市場拡大再算定」の仕組みを活用する

 (1)は、「ルールにない、緊急的な引き下げ」の対象となる薬剤を選定するために、極めて厳格な基準が提案されています。販売額はメーカーの予想に基づく(対象候補についてメーカーで1000億超などの基準を満たすかをチェックしてもらう)ことになりますが、厚労省保険局医療課の迫井正深課長は「メーカーの申告をうのみにしてはいけないという指摘を中医協委員から受けており、厚労省でもさまざまな情報を活用する」との考えを述べています。

 なお厚労省保険局医療課の担当者は、対象薬剤について、従前同様「事実上、オプジーボのみとなるのではないか」と見通しています。ちなみにオプジーボの開発製造元である小野薬品工業では、年間市場規模を仕切り価ベースで1260億円と見積もっています。

オプジーボの製造販売元である小野薬品では、年間の市場規模を仕切り価ベースで1260億円と見込んでいる。なお、左欄は、2016年4月に財政制度等審議会で國頭英夫氏(日本赤十字社医療センター化学療法科部長)が示した見積もり(前提が小野薬品とは異なっている点、薬価ベースである点などに注意)
オプジーボの製造販売元である小野薬品では、年間の市場規模を仕切り価ベースで1260億円と見込んでいる。なお、左欄は、2016年4月に財政制度等審議会で國頭英夫氏(日本赤十字社医療センター化学療法科部長)が示した見積もり(前提が小野薬品とは異なっている点、薬価ベースである点などに注意)

 

 (1)で引き下げ対象となった薬剤について、どのように引き下げるかが(2)の論点で、厚労省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は現行の「市場拡大再算定」の仕組みを活用してはどうかと提案しています。

 市場拡大再算定は、「年間販売額が150億円超、かつ当初予測の2倍以上」または「年間販売額が100億円超、かつ当初予測の10倍以上」の場合に、最大25%薬価を引き下げる仕組みですが、2016年度改定で特例措置(巨額再算定)として、▼年間販売額が1000-1500億円、かつ当初予想の1.5倍以上の場合に最大25%薬価を引き下げる▼年間販売額が1500億円超、かつ当初予測の1.3倍以上の場合に最大50%薬価を引き下げる―という仕組みも追加されました(関連記事はこちら)。

市場拡大再算定制度の概要、当初予測を大きく超え、かつ販売額が大きい場合に、薬価が引き下げられる。2016年度改定では、特例として巨額再算定が盛り込まれた(右のグリーンの部分)
市場拡大再算定制度の概要、当初予測を大きく超え、かつ販売額が大きい場合に、薬価が引き下げられる。2016年度改定では、特例として巨額再算定が盛り込まれた(右のグリーンの部分)

 ここでも「販売額」はメーカー予測がベースとなる予定ですが、「鵜呑みにすべきではない」との指摘が幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)らから出されています。ちなみにオプジーボについては、上記のとおり製薬メーカーサイドが「1260億円」との販売予測を行っており、これがダイレクトに適用されれば最大25%の薬価引き下げが行われることになりますが、具体的な適用は今後、詳細に検討されます。

 緊急的な薬価引き下げの時期は、現時点で決まっていませんが、今後「医療機関の在庫がなくなるまで経過措置をとる」ことも検討される見込みです。

 

 なお、オプジーボでは、先頃「腎がん」についての効能・効果追加が認められ、現在「非ホジキンリンパ腫」と「頭頸部がん」への効能・効果追加が審査されています。さらに11のがん種について臨床試験が進んでおり、これらすべてへの効能・効果が継続的に認められていけば、対象患者数も膨大となります。当然、医療費に与えるインパクトも大きく、迫井医療課長や中山薬剤管理官は、2018年度改定に向け、上記の【基本的考え方】に沿って超高額薬剤の薬価のあり方を検討していく考えを強調しています。

最適使用促進ガイドラインをベースに、留意事項通知で保険上の取り扱いを明記

 ところでオプジーボなどの超高額薬剤については「使用環境の整った医療機関」において、「十分な知識・経験を積んだ医師」の下で、「当該薬剤の投与が真に求められる患者」にのみ使用されるべきでしょう。超高額薬剤に関わらず、公的医療保険制度下で有限な医療費財源(公費、保険料など)を適切に配分するために、また医療安全の確保を図るために、当然の考え方と言えます。

 厚労省は、この考え方をベースに、新規の作用機序を持つ医薬品(2016年度はオプジーボとレパーサ(高コレステロール血症用薬)、さらにその類薬)を対象に「最適使用推進ガイドライン」を作成して、適切な使用を促すとともに、ガイドラインに基づいた留意事項通知を発出し、診療報酬上の取り扱いを明確にする考えです(関連記事はこちら)。

 5日の部会では、厚労省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課の山田雅信課長から、オプジーボとレパーサのガイドライン素案(施設要件イメージ、患者要件イメージなど)が示されました。厚労省では、関係学会と連携してこれから(オプジーボについては年内目途)具体的なガイドラインを作成する考えです。

抗がん剤オプジーボの最適使用促進ガイドライン案(イメージ)、詳細は今後、厚労省と関係学会で詰める
抗がん剤オプジーボの最適使用促進ガイドライン案(イメージ)、詳細は今後、厚労省と関係学会で詰める
高コレステロール血症用薬であるレパーサの最適使用促進ガイドライン案(イメージ)、詳細は今後、厚労省と関係学会で詰める
高コレステロール血症用薬であるレパーサの最適使用促進ガイドライン案(イメージ)、詳細は今後、厚労省と関係学会で詰める

 さらに中山薬剤管理官は、最適使用推進ガイドラインをベースとして、(a)ガイドラインの実効性確保(b)経済性・医薬品の特性を踏まえた保険適用のあり方(c)実臨床における医師の判断―といった観点も踏まえて、留意事項通知を発出することを提案し、了承されました。近く、中医協総会に報告されます。

 (a)では、例えば「患者要件を満たしていること」をレセプトに記載するよう求めることなどが、(b)では「用法・用量の遵守」を求めることなどが考えられます。

 もっとも患者の容態は個々に異なるため、「留意事項通知から外れている使用例は、すべて査定される」といったことはなく、一定程度、柔軟な運用がなされることになりますが、原則として施設要件(例えば、がん診療連携拠点病院などへの指定や、専門の医師の配置など)を満たさない医療機関では、保険上、当該薬剤を使うことは難しくなります。この点、中山薬剤管理官は「医療機関の在庫」などに配慮した経過措置を設けることも明らかにしています。

 この点に関連して平川則男委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)は、「ガイドラインの実効性を担保することが重要だが、医師要件などを審査支払機関できちんとチェックできるのだろうか」と指摘。中山薬剤管理官は「審査支払機関でチェックしてもらうための手法も、国で検討していく」と答弁するに止めています。

 

 なお、前述の「緊急的な薬価引き下げ」と「最適使用促進ガイドラインと留意事項通知」の実施時期について、厚労省保険局医療課の担当者は「必ずしも同時に実施する必要はないのではないか」との考えを述べています。

  

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