AYA世代や高齢者へのがん対策、多様なニーズを踏まえられるような体制を―がん対策推進協議会



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 第3期がん対策推進基本計画においては、AYA世代や高齢のがん患者の「多様なニーズ」への対応を考えていくことや、希少がん・難治性がんへの対策もさらに充実していく必要がある―。

 9月30日に開かれたがん対策推進協議会では、こういった方向が確認されました(関連記事はこちらこちら)。

9月30日に開催された、「第60回 がん対策推進協議会」
9月30日に開催された、「第60回 がん対策推進協議会」

「AYA診療拠点」を整備し、就労支援や生殖機能温存を

 協議会では、2017年からの第3期がん対策推進基本計画策定に向けた議論が続いています。9月30日の会合では、(1)AYA世代のがん対策(2)高齢者のがん対策(3)がんの特性に応じたがん対策―の大きく3点について議論を行いました。

 (1)と(2)は、「ライフステージに応じたがん対策」としてまとめることもできます。(1)のAYA世代とは、「思春期」(Adolescent)と「若年成人」(Young Adult)を合わせた世代で、がん治療にあたって、この世代でとりわけ重要な課題が存在します。

 例えば成人期を迎えるに当たっての「就労支援」、さらに医療に関する知識が不十分ゆえの十分な「相談支援」、さらに「生殖機能温存」(卵子や精子の凍結保存など)などといった課題が考えられます。

 しかし協議会で、第2期基本計画の中間評価を行った際、AYA世代対策についてはこれまでに十分な取り組みが行われていないとの共通認識があり、次期(第3期)基本計画では、この点(AYA世代対策)にも言及される方向が確認されています(関連記事はこちら)。

がん対策推進協議会では、現行の第2期がん対策推進基本計画の中間評価を行い、ライフステージの応じたがん対策などが不十分との評価を行った
がん対策推進協議会では、現行の第2期がん対策推進基本計画の中間評価を行い、ライフステージの応じたがん対策などが不十分との評価を行った

 この点について、「総合的な思春期・若年成人(AYA)世代のがん対策のあり方に関する研究」班のメンバーである清水千佳子参考人(国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科外来医長)と小澤美和参考人(聖路加国際病院小児科医長)は、▼AYA世代のがん患者は、全国に一定の割合で存在するが、頻度が少なく、医療機関も医療者も経験数が少ない▼患者ごとのニーズは個別性が高い―といった特性を強調し、「疾患構成と個別ニーズ、生活を考慮した診療連携体制の構築」や「包括的・継続的な支援を目指した対策の推進」「患者の自立・自己管理を促す対策の推進」などが必要と提言しました。

 とくに「診療連携体制」については、▼医療者教育(担当医などがAYA世代の課題を十分に認識することが支援の第一歩)▼医療機関における相談窓口の明確化と、既存制度の周知徹底▼各種ニーズに専門的な対応が可能な「AYA支援チーム」や、「AYA病棟」などの環境を有する「AYA診療拠点」を指定する―ことを要望しています。清水・小澤両参考人は「AYA診療拠点を都道府県に1か所程度整備することが必要ではないか」との見解も示しています。

 なお、がん対策加速化プラン(2015年12月)でも、AYA世代対策の重要性が指摘され、具体的に「小児・AYA世代のがん患者に対し、専門的な治療を提供することのできる施設の整備」などを提言しています。

がん対策加速化プランでも、AYA世代対策などが重点課題に盛り込まれている
がん対策加速化プランでも、AYA世代対策などが重点課題に盛り込まれている

老年医と腫瘍医が連携し、高齢者のがん治療への意思決定支援を

 (2)の高齢者では、同じ年齢でも身体機能に大きな差があり、またがん以外の疾病を抱えている方も少なくありません。

 しかし、長島文夫参考人(杏林大学医学部内科学腫瘍科准教授)は、「『元気』な高齢者に対する治療方針は一定程度確立したが、『脆弱』な高齢者への一般化にはまだ課題がある」と指摘。高齢者へのがん治療にあたっては、「予後の延長」という視点はもちろん重要であるものの、「身体機能の維持(寝たきりにならない)」「認知機能の維持(認知障害が進まない)」「QOLの維持(軽度の副作用でもQOLは下がってしまう)」といった視点を持つことの重要性を強調しています。

 さらに、世界25か国の主要がんセンターで組織されるNCCN(National Comprehensive Cancer Network)では、▼余命の考慮▼患者の意思決定能力の評価▼患者の治療目標と価値観の確認▼副作用リスクの把握(併存症、高齢者特有の問題、社会経済支援など)▼リスクに応じて、標準治療か、減量治療か、対症療法かを提案する―といった「高齢者における治療法決定のプロセス」を定めていることを紹介しています。

 また長島参考人は、「院内がん登録データ」と「DPCデータ」を突合することで、どのようながん(種類、ステージ)に、どのような治療がなされたのかを明確にすることができるとも指摘。いわば「高齢者へのがん標準治療」を臨床現場から構築することができるかもしれません。ちなみにグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、がん診療連携拠点病院などが実名でDPCデータを持ち寄り、質の向上を目指すCQI研究会のお手伝い(データ分析など)をしています(関連記事はこちらこちらこちら)。

 今後、必要な取り組みとしては、▼多様性評価を診療に組み込み、意思決定を支援する▼医療者・市民へ教育・啓発(腫瘍医と老年医との連携など)▼社会として地域にマッチした体制基盤整備―が必要と訴えます。

 

 また、高齢者が認知症に罹患している場合には、患者の意思を確認することが難しくなり、さらに治療方針の決定が難しくなります。この点について、小川朝生参考人(国立がん研究センター東病院精神腫瘍科長)は、▼進行してからのがん発見が多い▼家族・医療者が気づかず、治療を開始してから気づかれる▼不適切な意思決定がなされている危険がある▼手術や薬物療法はもちろん、支持療法によってもせん妄などが発症し、認知機能が悪化する可能性がある▼緩和ケア病棟でも受け入れを断られることがあり、家族への負荷が増大している―という問題点を指摘。

 これらを解決するために、「 認知症やせん妄に関する基本的な知識・技術の早急な普及・啓発」「治療開始時点での意思決定支援のプログラム開発と標準化」「認知機能障害に配慮した支援法の開発」「基本的な支持療法のプログラム確立(せん妄、疼痛、認知症の身体管理)」などを行うよう提案しています。

 

 少子高齢化が進行する中で、「ライフステージに応じたがん対策」の重要性はますます高まっており、第3期基本計画での充実が期待されます。

希少・難治性がん対策も第3期基本計画で充実を

 (3)のがんの特性に応じたがん対策としては、希少がんや難治性がん対策の充実が重視されています。

 厚労省健康局がん・疾病対策課の丹藤昌治がん対策推進官は、第2期基本計画の中間評価において、「難治性がんに対する有効で安全な新しい治療法の開発や効果の期待できる治療法を組み合わせた集学的治療の開発」が不十分であるとされたことを確認(関連記事はこちら)。

 また、胃がんや大腸がんなどでは年齢調整死亡率が下がっている一方で、膵臓がんなどの希少・難治性がんでは逆に上がっている状況も紹介し、第3期基本計画においては、「希少がん・難治性がん対策の充実」が極めて重要になるとの見解を強調しました。

年齢調整死亡率の推移を見ると、胃がんなどは減少しているが、膵臓がんなどの希少がんでは増加している
年齢調整死亡率の推移を見ると、胃がんなどは減少しているが、膵臓がんなどの希少がんでは増加している

 この点について、若尾直子委員(NPO法人がんフォーラム山梨理事長)は、「地方では、都心とは異なり、希少がんについて正確な判断、適切な治療を受けられるまでに時間がかかる。人材(専門医)育成と、開業医から拠点病院までへの連携体制構築を急いでほしい」と要望しています。

 

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