2014年度国民医療費は40兆8071億円、高齢者医療費の伸び率は鈍化―厚労省



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 2014年度の国民医療費は、前年度に比べて7461億円・1.9%増加し40兆8071億円になった―。

 こうした状況が、厚生労働省が28日に公表した2014年度の「国民医療費の概況」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。

2014年度の国民医療費は、前年に比べて1.9%増加し、40兆8071億円となった
2014年度の国民医療費は、前年に比べて1.9%増加し、40兆8071億円となった

 メディ・ウォッチでお伝えした「2015年度の概算医療費」(国民医療費の98%に相当)では、41兆5000億円に達していることが分かっており、2015年度の国民医療費は42兆円を大きく上回ることが予想されます。

2014年度国民医療費、前年度に比べて1.9%増加

 国民医療費は「1年度内に保険診療の対象となり得る傷病の治療に要した費用」を推計したもので、保険診療の対象とならない評価療養、選定療養、生殖補助医療、正常な妊娠・分娩に要する費用、健康診断・予防接種等の費用は含まれません。

 2014年度の国民医療費は、前年度に続いて40兆円を超え、過去最高の40兆8071億円となりました。前年度に比べて7461億円・1.9%の伸びとなっています。

 1人当たりの国民医療費は32万1100円で、前年度に比べて6400円・2.0%増加しました。

 また、GDP(国内総生産)に対する国民医療費の比率は8.33%で、前年度に比べて0.3ポイント増加、NI(国民所得)に対する比率は11.20%で、こちらは0.4ポイントの増加となっています。

2014年度の国民医療費は、前年に比べて1.9%増加し、40兆8071億円となった
2014年度の国民医療費は、前年に比べて1.9%増加し、40兆8071億円となった

 国民医療費の伸び率は、2012年度に1.6%、13年度に2.2%、14年度に1.9%と比較的低い水準に抑えられていますが、前述した「概算医療費」などから15年度には3.8%という高い伸びを示しており、今後の動向に注目が集まります。

 ところで医療費が増加する要因として、「人口の高齢化」「医療技術の高度化」などが考えられます。後者の「医療技術の高度化」については、とくに画期的なC型肝炎治療薬のハーボニーやソバルディ、新たな作用機序を持つ抗がん剤のオプジーボなど、超高額薬剤の出現が注目を集め、中央社会保険医療協議会で「超高額医薬品の薬価制度のあり方」が当面の最重要検討テーマとなっています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

高齢者医療費が全体の32.8%を占め、シェア拡大が進む

 医療費を誰がどのように負担しているかを見てみると、現在のところ国がおよそ4分の1(25.8%)、地方が8分の1(13.0%)、事業主が2割(20.4%)、被保険者(国民)が3割弱(28.3%)、患者が1割強(11.7%)という状況です。患者負担は若人では3割に設定されていますが、暦月1か月の医療費が一定額以上の場合には、超過分が高額療養費として保険から給付されるため、患者全体で見た場合の実際の自己負担(実効負担率といいます)が1割強に抑えられているのです。

国民医療費の負担者を見ると、国(4分の1程度)、自治体(8分の1程度)、事業主(2割程度)、被保険者(3割弱)、患者(1割強)のそれぞれで分担していることが分かる
国民医療費の負担者を見ると、国(4分の1程度)、自治体(8分の1程度)、事業主(2割程度)、被保険者(3割弱)、患者(1割強)のそれぞれで分担していることが分かる

 また制度区分別に国民医療費のシェアを見てみると、▽被用者保険(健保組合や協会けんぽなど)が22.4%(前年度から0.2ポイント増)▽国民健康保険が23.8%(同0.2ポイント減)▽後期高齢者医療給付分(75歳以上)が32.8%(同0.1ポイント増)▽患者等負担が12.4%(同0.1ポイント減)―などとなっています。

制度別に医療費の状況を見ると、高齢者の医療費で伸び率(増加率)が高いことが分かる
制度別に医療費の状況を見ると、高齢者の医療費で伸び率(増加率)が高いことが分かる

 後期高齢者医療給付分のシェアが増加を続けており、今後、高齢化がさらなる進展を続ける中で、このシェアはさらに拡大していきます。医療費の適正化に向けて、「後期高齢者医療」が重要テーマと言われる所以です。

訪問看護の医療費、シェアは小さいが前年度に比べて15.7%増

 次に診療種類別に国民医療費のシェアを見てみると、▽医科が71.7%(同0.1ポイント減)▽歯科が6.8%(同増減なし)▽調剤が17.9%(同0.1ポイント増)▽訪問看護が0.3%(同増減なし)―などとなりました。訪問看護は、医療費に対するシェアが小さいですが、金額を見ると13年度に1086億円だったものが、14年度には1256億円となっており、170億円・15.7%の伸びを示しています。訪問看護の浸透が進んでいる状況が伺えます。

診療種類別の医療費を見ると、訪問看護においてシェアは小さいものの、伸び率が大きなことが分かる
診療種類別の医療費を見ると、訪問看護においてシェアは小さいものの、伸び率が大きなことが分かる

 調剤医療費の伸びが鈍化していますが、ここには2014年度の診療報酬改定で「大規模薬局の調剤報酬の適正化」などが行われた影響が現れていると見ることもできます。ただし、前述のように超高額薬剤が調剤医療費(とくに薬剤料)を大きく伸ばしている状況が確認されており、今後の診療報酬改定論議における「医療費財源の奪い合い」が激しくなると予想されます。

 なお、医科の内訳は、入院が37.4%(同増減なし)、入院外が36.4%(同0.1ポイント増)となっています。

65歳以上の医療費は、65歳未満の4倍だが、伸び率は鈍化

 年齢階級別に1人当たり国民医療費を見てみると、65歳未満では17万9600円(同1900円・1.1%増)であるのに対して、65歳以上では72万4400円(同100円・0.0%増)となりました。高齢者では若人に比べて医療費が4倍と高いのですが、伸び率は高齢者のほうが小さくなっています。

 診療種類別に見ると、次のような状況です。

▽医科では、65歳未満は12万3000円(同900円・0.7%減)だが、65歳以上は53万5700円(同400円・0.7%増)で、高齢者が若人の4.4倍

▽歯科では、65歳未満は18万3000円(同400円・2.2%増)だが、65歳以上は32万5000円(同200円・0.61%増)で、高齢者が若人の1.8倍

▽調剤では、65歳未満は3万2600円(同600円・1.9%増)だが、65歳以上は12万7700円(同500円・0.4%増)で、高齢者が若人の3.9倍

 このように医科、歯科、調剤のすべてにおいて、高齢者と若人の医療費に特に大きな格差があることも明らかになっています。

年齢階級別に1人当たり医療費を見ると、高齢者は若人の4倍程度であることがわかる
年齢階級別に1人当たり医療費を見ると、高齢者は若人の4倍程度であることがわかる

 高齢者医療費は、「高齢者数」と「1人当たり医療費」に分解することができます。前者については、人口動態から今後も増加することが確実です。一方、後者の「1人当たり医療費」については、金額こそ若人より高いものの、伸び率は2014年度の数字から「低く抑えられている」ことが分かります。

 高齢者の「1人当たり医療費」が高い要因は、主に「受診回数」(外来では受診日数、入院では入院期間)が多い点にあることも分かっています。この点、厚労省は「在院期間の短縮」(例えば入院料の逓減制など)や「重複受診・重複投薬、頻回受診・投薬の是正」(例えば2014年度改定で導入された外来の包括報酬である地域包括診療料など)に力を入れており、その効果が徐々に現れている可能性もあります。今後の詳細な分析が期待されます。

若人では新生物、高齢者では循環器系疾患の医療費が高いシェア

 最後に、傷病分類別に国民医療費のシェアを見てみると、依然として「循環器系」が20.1%(前年度から0.4ポイント減)と最も多く、次いで▽新生物13.6%(同0.1ポイント増)▽筋骨格系及び結合組織7.8%(同増減なし)▽呼吸器系7.4%(同増減なし)▽損傷、中毒及びその他の外因の影響7.4%(同0.3ポイント増)―などとなりました。

 傷病による医療費のシェアを年齢別に見ると、次のような状況です。

▽65歳未満では新生物のシェアが最も高く(13.0%)、次いで「循環器系」11.3%、「呼吸器系」10.2%、「精神及び行動の障害」9.2%、「腎尿路生殖器系」7.2%と続く

▽65歳以上では循環器系のシェアが最も高く(25.9%)、次いで「新生物」13.9%、「筋骨格系及び結合組織」8.6%、「損傷、中毒及びその他の外因の影響」7.6%、「腎尿路生殖器系」7.2%と続く

傷病分類別の医療費を見ると、高齢者と若人では上位疾患とその動向に若干の違いがあることが分かる
傷病分類別の医療費を見ると、高齢者と若人では上位疾患とその動向に若干の違いがあることが分かる

 このデータを見ると、高齢者医療費の4分の1を占める「循環器系」疾患をターゲットにした医療費適正化対策が効果的と言えます。例えば食生活などの生活習慣改善による「高血圧」などの防止などが考えられ、この点に対する取り組みにも厚労省は以前から力を入れています。高齢者の「循環器系」疾患医療費のシェアは前年度から0.6ポイント下がっており、また伸び率も1.3%増と他疾患に比べて低く抑えられている(損傷などでは8.2%増、腎尿路系では5.7%)ので、こうした取り組みの効果が出ている可能性があります。

 

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