基準病床数の設定にあたり、「医療資源投入量」を考慮すべきか―地域医療構想ワーキング



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 医療計画における基準病床数の設定について、「病床過剰地域であるが、将来に向けて病床の必要量が既存病床数を大きく上回る」ような場合には、基準病床数を毎年見直すことや、特例措置で対応する―。

 こういった方針が、23日に開かれた地域医療構想に関するワーキンググループ(以下、ワーキング)で固まりました。近く、親会議である「医療計画等の見直しに関する検討会」に報告されます。

 ただし、基準病床数の中で「医療資源投入量の少ない患者」の取扱いをどうするかというテーマについては意見が固まっておらず、親会議に議論の場を移すことになります。

9月23日に開催された、「第3回 地域医療構想に関するワーキンググループ」
9月23日に開催された、「第3回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

病床の必要量が今後増大する地域では、基準病床数の毎年見直しなどで対応

 大阪府や東京都など、今後も高齢化が著しく進行する地域で生じる「既存病床数が基準病床数(事実上の病床整備上限)を上回っているために地域で増床ができないが、新たに定めた地域医療構想の『病床の必要量』(2025年において必要となる病床数)は既存病床数を超えている」という問題が浮上しています。これにどう対応するかが、ワーキングでの大きな検討テーマになっていました。端的に言えば「医療計画の『基準病床数』と、地域医療構想の『病床の必要量』の関係をどう考えるか」ということです(関連記事はこちら)。

 厚労省は、8月31日の前回会合で次のような考えを提示。今般の(9月23日)の会合で了承された格好です。

(a)高齢化の進展などに伴う医療需要の増加を毎年評価するなど、基準病床数を確認する

(b)医療法第30条の4第7項の「基準病床数算定時の特例措置」(▼急激な人口増▼特定疾病の罹患者の異常増―などがある場合には基準病床数を増やせる)で対応する

 ただし、23日の会合で厚労省は、(a)(b)によって増床する際にも、▼機能区分(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)ごとの医療需要▼高齢者人口のピークアウト後を含む医療需要の推移▼疾病別の医療供給の状況、各医療圏の患者流出入、交通機関の整備状況などの地域事情▼都道府県内の各医療圏の医療機関の分布―など、地域の実情等を十分に考慮し、検討をする必要があるともしています。現在の人口動態の傾向が続けば、東京や大阪でもいずれ医療需要は減少するため、安易な増床は「将来の病床過剰」を招いてしまいます。(a)(b)においても、慎重な増床が求められる点に留意が必要です。

今般の方針を踏まえると、医療計画期間における基準病床数の算定は図のようになる
今般の方針を踏まえると、医療計画期間における基準病床数の算定は図のようになる

 さらに、基準病床数の計算式について、「ベースとなる人口は『医療計画策定時の夜間人口』を用いる」(従来どおり)、「平均在院日数については、地域差を適切に反映させたものとする」(従来から一部変更)、「患者の流出入については、特に必要な場合に都道府県間で調整を行う仕組みとする」(従来から変更)、「病床利用率については、地域医療構想と同様に一定の値を定め、都道府県の実情を一定程度、勘案できることとする」(従来から一部変更)などの方針も固められました。2018年度からの医療計画において、計算式が見直されることになるでしょう。

基準病床数の算定式
基準病床数の算定式

医療資源投入量が少ない患者、実像を精査した上で、親検討会で議論

 ところで、厚労省は「基準病床数の設定において、医療資源投入量の少ない患者をどう考えるか」という論点も示していました。

 地域医療構想策定ガイドラインでは、「医療資源投入量」を指標として患者の医療ニーズを高度急性期(3000点以上)、急性期(600点以上)、回復期(175点以上)に区分しており、1日当たりの医療資源投入量が175点を下回る患者については、「慢性期」「在宅医療等」での対応を念頭に置くこととしています(関連記事はこちらこちら)。

 すると、仮に「医療資源投入量が175点未満となった患者をすべて在宅に移行する」という方針が決まった場合、「一般病床の基準病床数を減少する(平均在院日数が短くなるため)」という選択肢が浮上します。このため上記の論点が浮上したのですが、厚労省医政局地域医療計画課の佐々木健課長は「医療資源投入量の少ない患者の実像を分析している途中であり、ワーキングで具体的な議論をしていただける状況にない。親会議(医療計画の見直し等に関する検討会)で議論してもらうこととしてはどうか」と提案しました。

 例えば「退院間際で医療資源投入量が著しく少ない患者」であれば在宅や外来への移行が考えられますが、「抗がん剤治療のインターバルで資源投入量が少ない患者」では在宅などへの移行は非現実的です。こうしたデータを整理し、親会議で改めて検討してはどうかとの提案内容です。

 しかし、ワーキングでは「そもそも、基準病床数を計算するにあたり、医療資源投入量を勘案すべきではない」(中川俊男構成員:日本医師会副会長)、「資源投入量と医療の必要性とが相関するかは分からない」(邉見公雄構成員:全国自治体病院協議会会長)といった指摘が相次ぎ、この論点については「厚労省と尾形裕也座長(東京大学政策ビジョン研究センター特任教授)との間で練り直し、その後、構成員に確認してもらう」ことになりました。

地域医療構想の実現に向け、調整会議ではまず「各医療機関の機能の明確化」を

 また23日のワーキングでは、地域医療構想を実現するための「協議の場」(地域医療構想調整会議)での議論の進め方例も固められました。大枠は以下のとおりですが、地域によって異なる進め方をしても一向に構いません。この「進め方例」も親会議に報告されます(関連記事はこちら)。

▼構想区域における医療機関の役割を明確化し、関係者が共有する(公的医療機関や地域医療支援病院、特定機能病院、その他の構想区域における中心的な医療機関の役割、それ以外の医療機関の役割をそれぞれ明確化し共有するほか、新規参入医療機関や規模を拡大する医療機関にも方向性を共有してもらう)

  ↓

▼病床機能分化・連携に向けた方策を検討する(医療機器などのストラクチャーの共同利用やマンパワー確保、地域住民への啓発などを具体的に検討する)

ICUなどの病床数、既存病床数にカウントすべきか、除外すべきか

 さらに23日のワーキングでは、「既存病床の補正方法」見直しについても議論しました。

 現在、医療法施行規則では、▼放射線治療病室▼菌病室▼集中強化治療室(ICU)▼心疾患強化治療室(CCU)―の病床については、当該病室での治療終了後の入院のための病床(例えばICU退室後の一般病床など)が同一病院内に確保されている場合には、既存病床数にカウントしないという規定があります(規則第30条の33第1項第2号)。

基準病床数は地域における病床整備の上限であるが、一定の特例措置が設けられている
基準病床数は地域における病床整備の上限であるが、一定の特例措置が設けられている
ICUなど(2号)では、バックベッドがあれば既存病床数にカウントしない規定となっている
ICUなど(2号)では、バックベッドがあれば既存病床数にカウントしない規定となっている

 しかし、都道府県によっては必ずしもこの規定どおりに運用されていない可能性があることから、厚労省は今般、「実態に沿った取り扱いの明確化」を検討してはどうかと提案しました。合わせて、新生児特定集中治療室(NICU)や脳卒中ケアユニット(SCU)など、多様な治療室類型があることを踏まえた見直しも検討することになります。

 この点について佐々木地域医療計画課長は、「既存のベッドを取り上げるようなことは考えていない。今後、新たにNICUなどを整備するにあたり、既存病床数に含めるべきなのかどうかなど、ルールを統一化してはどうかと考えている」と説明。また厚労省医政局の神田裕二局長は「都道府県によって不公平があってはいけない。実態を見て整理し、その上で議論していただきたい」とコメントしました。

 なお既存病床数の補正については、▼介護老人保健施設は既存病床数に算定しない▼療養病床を介護老人保健施設に転換した場合は、次の基準病床数を算定するまでの間、既存病床数に算定する―という新方針案が厚労省から示され、こちらは概ね了承されました。

 

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