拠点病院にABCの区分設け、補助金などに反映―拠点病院の指定要件ワーキング



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 地域がん診療連携拠点病院を、▼必須要件に加えて、望ましい要件も満たす拠点病院A▼必須要件を満たす拠点病院B▼必須要件を満たしていない拠点病院C―に区分し、補助金などの配分に差を付ける。また必須要件を満たさない拠点病院Cは、一定の猶予期間を設けた上で、拠点病院の指定を取り消す―。

 2月13日に開催された「がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」(以下、ワーキング)で、このような考え方がおおむね固まりました。

2月13日に開催された、「第5回 がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」
2月13日に開催された、「第5回 がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」

第3次計画など踏まえて指定要件見直し、2019年4月の指定・更新から適用

 全国どこでも質の高いがん医療を提供できる体制の整備(がん医療の均てん化)を目指し、▼都道府県ごとに都道府県がん診療連携拠点病院(以下、ここでは都道府県拠点病院)▼二次医療圏ごとに地域がん診療連携拠点(以下、ここでは地域拠点病院)病院▼地域拠点病院のない医療圏に、隣接医療圏の拠点病院と連携して専門的ながん医療を提供する地域がん診療病院―の整備が進められています。

 都道府県拠点病院、地域拠点病院、地域がん診療病院にはそれぞれ指定要件が設けられ、新規指定や更新指定に当たって要件を満たしているか否かが、「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」(以下、検討会)で審査されます。厚生労働大臣は、検討会の意見を踏まえて、拠点病院等の新規指定などを行います(通常、毎年4月)。

 この点、昨年(2017年)10月に「第3期がん対策推進基本計画」が閣議決定されたことや、特定機能病院において「医療安全に関する規定」が厳格化されたことなどから、拠点病院等の指定要件についても、がん医療の充実や、医療安全のさらなる確保に向けた見直しが行われます。

 新たな指定要件は現在、ワーキングで検討が進められており、(関連記事はこちら)、2月13日の会合では(1)指定の方針(2)がん医療の質の確保(3)現況報告書―をテーマに議論しました。

指定要件を満たせない病院は、更新時期を待たずに指定取り消し

 まず(1)の「指定の方針」について厚労省健康局がん・疾病対策課の佐々木昌弘課長は、診療体制に応じて拠点病院の指定を細分化する考えを示しました。「医療圏によっては複数の地域拠点病院が指定されている」「一部の地域拠点病院では、診療実績の要件を満たしていない」ことから、同一医療圏の中で地域拠点病院の体制や実績を可視化し、より住民・患者に分かりやすい仕組みを目指すものです。具体的には、次のようなイメージです。
▼同一医療圏に複数の地域拠点病院がある場合、最も診療実績などが優れた病院を地域拠点病院Aに指定する(必須要件を満たし、かつ望ましい要件まで満たす地域拠点病院)
▼必須要件を満たすが、2番手以下となる病院を地域拠点病院Bに指定する
▼指定要件を満たさない病院を地域拠点病院Cとして指定する

 このうち、地域拠点病院Cについては、一定期間(例えば1年間)が経ってもなお指定要件を満たしていない場合には、更新時期を待たずに地域拠点病院の指定が取り消されます。

地域拠点病院の細分化イメージ。厚労省は、「AやBの指定は、同一医療圏に地域拠点病院が複数ある場合に限ってはどうか」と提案したが、委員からは「同一医療圏に地域拠点病院が1つしかない場合でも、診療実績が優れていればAに指定してはどうか」との意見も出ている
地域拠点病院の細分化イメージ。厚労省は、「AやBの指定は、同一医療圏に地域拠点病院が複数ある場合に限ってはどうか」と提案したが、委員からは「同一医療圏に地域拠点病院が1つしかない場合でも、診療実績が優れていればAに指定してはどうか」との意見も出ている

 地域拠点病院Aのイメージについて、佐々木がん・疾病対策課長は、「指定要件の中で『満たすことが望ましい』としている項目(例えば、▼手術部位感染に関するサーベイランス実施▼緩和ケアチームへの専従医師配置―など)の充足状況などによって、地域拠点病院Bと差を付ける。地域拠点病院Aは、がん医療に関する人材育成などの面でも医療圏の中心となってもらう」などと説明。さらに、「地域拠点病院への補助金にも、A・B・Cで差が付く運用にしたい」との考えを示しています。

 この方向性に強い反対意見は出ませんでしたが、大西洋構成員(山梨大学医学部放射線医学講座教授)は、「医療圏に拠点病院が1つしかない場合でも、実績があれば地域拠点病院Aに指定してはどうか」と提案。また若尾文彦構成員(国立がん研究センターがん対策情報センターセンター長)は、「都道府県拠点病院にもAやBを設けてほしい」と要望しています。

 また名称については今後、「ランキング」と誤解されないような名称が検討されます。

 ほか、「指定の方針」に関しては、次のような方向も固められました。

▼「おおむね満たすこと」とされている診療実績の定量要件(悪性腫瘍の手術件数「年間400件以上」など)について、「おおむね」とは「9割を目安とし、個別の案件は検討会で審査する」ことを明確にする
▼拠点病院が医療圏の外に移転する場合は指定の継続を認めない
▼拠点病院が他病院と統合する場合や、病院機能の一部を分離する(例えば、外来機能を「付属外来センター」に移す)場合には、検討会で指定継続の可否を審査する

 見直し後の指定要件は、来年(2019年)4月の指定分から「一斉に適用される」予定です。仮に今年(2018年)4月に現行要件で新規指定・更新指定された病院は、通常は指定が4年間継続されますが、来年(2019年)4月に新要件を満たしていなければ、その時点で指定取り消しとなる格好です。

医療安全管理部門の設置を要件に追加

 (2)の「がん医療の質の確保」について、第3次がん対策推進基本計画では、「拠点病院などにおいても事故が度々報告され、医療安全に関する取り組みの強化が求められている」と指摘。拠点病院などの要件に「医療安全などの事項を追加することを検討する」としています。前述のように、特定機能病院において医療事故が相次ぎ、医療安全の確保に向けた指定基準の厳格化が行われたことも重要な背景の1つとなっています。

 ワーキングでは、▼都道府県拠点病院▼地域拠点病院▼地域がん診療病院―の指定要件に「医療安全管理部門の設置」を加える考えを固めました。もっとも、医療機関によって人員配置強化に向けた余力は異なり、特定機能病院と同様の医療安全に関する人員配置(副院長が医療安全管理部門の統括責任者となり、当該部門に専従の医師・薬剤師・看護師を配置するなど)を全拠点病院に要求することが難しいでしょう。西田俊朗座長(国立がん研究センター中央病院病院長)からは「特定機能病院では専従の医師配置を求めているが、それは難しいのではないか」、安藤雄一構成員(名古屋大学医学部附属病院化学療法部教授)からは「全病院に専任者を求めることも難しいのではないか」との指摘があり、佐々木がん・疾病対策課長は「医療安全管理部門担当の常勤医師を定めておくことを要件にしてはどうか」と提案しています。

 なお、具体的な配置基準などは、▼都道府県拠点病院の63.3%が特定機能病院である(49病院中31病院)▼地域拠点病院の13.8%が特定機能病院である(348病院中48病院)▼地域がん診療病院に特定機能病院は存在しない―という状況を踏まえて規定されます。例えば、都道府県拠点病院の6割超は、すでに医療安全に関する人員配置強化が義務付けられている特定機能病院であることから厳しめに規定され、地域拠点病院では1割強にとどまるため緩めに規定されると予想できます。

 またワーキングでは、拠点病院等の「診療の質」が一定水準にあることを確認するために、第三者評価(日本医療機能評価機構の「病院機能評価」など)受審や拠点病院間のピアレビュー実施を、「望ましい要件」として拠点病院等に課す考えも固めています。

 ほか、医療安全の観点から特定機能病院に課されている要件のうち、▼全死亡例および一定基準以上の有害事象等の医療安全管理部門への報告▼インフォームド・コンセントに係る責任者の配置―なども、今後、拠点病院等の指定要件に追加すべきかどうかをワーキングで検討することになっています。

現況報告書を簡素化し、事務負担を軽減

 (3)の現況報告書は、拠点病院等に▼診療実績▼人員配置―などの状況を、毎年、厚生労働大臣に提出する義務を課しているものです(拠点病院などの指定)。現況報告書の内容は国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」で公表され、患者の病院選択の重要情報の1つとなっています。

 佐々木がん・疾病対策課長は、前述の指定要件などの見直しと合わせて、現況報告書について、(a)新しい指定要件を満たしているかを確認できる項目を増やし、不要な項目は削る(b)事務負担軽減に向け、診療報酬項目の届出状況や算定状況から判別可能な項目は省略する―といった方針を示しています。

 例えば、診療報酬の【総合入院体制加算1】では、「悪性腫瘍手術を年間400件以上実施」「放射線治療(対外照射法)を年間4000件以上実施」という施設基準を満たすことが届け出にあたって必要となります。このため(b)では、「【総合入院体制加算1】を届け出ている場合には、悪性腫瘍手術の件数報告を省略する」といった運用方法が考えられます。

 ただし、この方法には「実際の悪性腫瘍手術件数が何件なのかが明らかにできない」というデメリットもあることから、具体的にどのような運用を行うのか、今後の検討を待つ必要があります。

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Cancer がんサバイバーの国際医療経済学者、病院経営コンサルタント、データサイエンティストの著者による、医療ビッグデータと実体験から浮かび上がるニッポン医療「衝撃の真実」。
がん患者としての赤裸々な体験、米国のがん患者(マイケル・カルフーン氏、スティーブ・ジョブス氏)との交友を通じて、医療経済学者、そして患者の視点から見た日米のがん医療の違い、課題に切り込み、「キャンサーナビゲーション」という制度の必要性を訴える。こちらをクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

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