基準病床数、人口のベースは直近?未来? 長期入院患者は考慮する?―厚労省・地域医療構想WG(2)



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 お伝えしているとおり、医療計画の「基準病床数」と地域医療構想の「病床必要量」との関係をどう考えるのか、という議論がスタートしました(関連記事はこちら)。

 厚生労働省は29日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」(以下、ワーキング)に、基準病床数と病床必要量の計算方法の違いなどを提示し、議論を要請しました。例えば、▽人口について直近の値とするのか、未来の値とするのか▽長期入院患者を考慮すべきか▽医療資源投入量の低い患者をどう考えるのか―といった点です。

 9月までに3回のワーキングを開催。検討結果を親組織である「医療計画の見直し等に関する検討会」に報告し、秋以降に第7次医療計画作成指針の議論が詰められます。

7月29日に開催された、「第1回 地域医療構想に関するワーキンググループ」(医療計画の見直し等に関する検討会の下部組織)
7月29日に開催された、「第1回 地域医療構想に関するワーキンググループ」(医療計画の見直し等に関する検討会の下部組織)

基準病床数(医療計画)と病床必要量(地域医療構想)、計算方法・基礎データが異なる

 基準病床数と病床必要量は、その目的も計算方法も異なるため、結果も当然異なってきます。しかし、両者の方向が全く異なる(例えば、既存病床数に比べて必要病床数は小さいが、基準病床数は大きい、あるいはその逆)のでは適切な病床整備が行えないため、少なくとも「方向性」は揃える必要がありそうです(関連記事はこちら)。

基準病床数の算定式
基準病床数の算定式

 厚労省は29日のワーキングに、両者の計算方法の違いなどを提示し(関連記事はこちらこちら)、第7次医療計画において基準病床数の設定方法をどのように見直すべきか、検討を要請しました。ちなみに病床必要量(地域医療構想)はすでに策定済の都道府県もあるため、今後、仮に「整合性を図るために見直しが行われる」とすれば、それは「基準病床数」のほうとなります。具体的な論点は、例えば次のようなものです。

(1)人口:病床数の計算に当たって、基準病床数では「直近(過去)の人口」を用い、病床必要量では「2025年(未来)の人口」を用いており、今後、どの時点の人口を用いるべきか

基準病床数では「直近の人口」をもとにするが、これをどう考えるべきかが論点の1である
基準病床数では「直近の人口」をもとにするが、これをどう考えるべきかが論点の1である

(2)退院率など:病床数の計算に当たって、基準病床数ではブロック(県を跨ぐ)ごとの「退院率」「平均在院日数」をベースとし、病床必要量では構想区域(主に二次医療圏)ごとの「入院受療率」をベースとしているが、今度、どのような考え方が適当か

基準病床数では、退院率や平均在院日数がベースになっているが、これをどう考えるかが論点の1つとなっている
基準病床数では、退院率や平均在院日数がベースになっているが、これをどう考えるかが論点の1つとなっている

(3)患者の流出入:基準病床数では流出超過の場合3分の1を上限として病床数の加算を認める一方、病床必要量では知事間の協議で患者の移動を勘案できるのみとしているが、これをどう考えるか

(4)病床利用率:基準病床数では一般・療養別に直近の全国平均値を用い、病床必要量では機能ごとに全国一律の改定値を用いているが、どう考えるべきか

基準病床数では、一般・療養別に全国一律の「病床利用率」を用いているが、地域別にする必要はないのか?また経年変化を見る必要がないのか?という点も論点にあげられている
基準病床数では、一般・療養別に全国一律の「病床利用率」を用いているが、地域別にする必要はないのか?また経年変化を見る必要がないのか?という点も論点にあげられている

(5)医療資源投入量の少ない患者:基準病床数では考慮しないが、病床必要量では「1日当たり175点未満の患者のうち一定割合は在宅医療で対応する」などとしており、これをどう考えるか

慢性期・在宅医療などの需要(患者数)は、医療資源投入量ではなく、既存の患者数をベースに推計する
慢性期・在宅医療などの需要(患者数)は、医療資源投入量ではなく、既存の患者数をベースに推計する

(6)療養病床の入院受療率・介護施設対応:基準病床数では介護施設の入所需要率も勘案しており、一方、病床必要量ではこれを勘案していないが、今後、どう考えるか。あわせて基準病床数における「介護施設対応可能数の減算」(介護施設で対応する患者分は、基準病床数から差し引く)をどう考えるか

療養病床の基準病床数については「介護施設での受け入れ」を勘案することになっているが、これは果たして必要なのか?が論点の1つとなっている
療養病床の基準病床数については「介護施設での受け入れ」を勘案することになっているが、これは果たして必要なのか?が論点の1つとなっている

大阪府の地域医療構想などもとにイメージを明確化して、基準病床数の考え方を議論

 29日のワーキングでは、すでにお伝えしたように「大阪府のような基準病床数と病床必要量の乖離をどう考えるか」という点が議論の中心になりましたが、もちろん厚労省の示した論点についても議論が行われています。

 (1)の人口については、本多伸行構成員(健康保険組合連合会理事)から「少子高齢化を見据える必要がある。都市部では2025年以降にピークがくる」として、「より将来の人口」を見なければ、2025年時点で「病床不足」とされても、後に「病床過剰」となる可能性が高いと警鐘を鳴らしました。また今村知明構成員(奈良県立医科大学医学教授)も、「病床必要量と基準病床数都の整合性を考慮すれば、将来の人口を見るべき」としています。

 これに対し織田正道構成員(全日本病院協会副会長)は、「基準病床数と病床必要量は異なり、基準病床数を拙速に将来に近づけようとすれば混乱する」とし、直近の人口をベースにすべきとの考えを述べています。

 

(2)は、「基準病床数のベースとなる患者調査などからは『退院率』のデータしか出てこないが、病床必要量のベースとなるNDBなどからは『入院受療率』のデータが出る」という技術的な問題も関係してくる論点です。退院率は「ある月の退院患者の状況」を見ており、例えば数年入院しているような長期入院患者の状況は、基準病床数の中では考慮されにくくなりますが、一方で病床必要量では「現に入院している患者」として長期入院患者も考慮されます。このため、厚労省医政局地域医療計画課の担当者は、「入院受療率のほうが、退院率よりも4ポイントほど高い数値になる」と説明しています。今後、両者の差が、どれだけ基準病床数・病床必要量に影響を与えているのかも検討されることになりそうです。

 

 また(6)の療養病床について、今村構成員は「病床必要量の計算では、療養病床に入院する医療区分1の患者の7割を在宅や介護施設で対応することとしているが(関連記事はこちら)、それは現実の姿から大きく乖離している」と強調。この点について基準病床数では、病床必要量とは別の考え方を採用すべきと訴えています。

慢性期・在宅医療などの需要(患者数)は、医療資源投入量ではなく、既存の患者数をベースに推計する
慢性期・在宅医療などの需要(患者数)は、医療資源投入量ではなく、既存の患者数をベースに推計する
 

 厚労省は8月下旬にも開催される見込みの次回ワーキングに、実際の地域医療構想をもとに「基準病床数と病床必要量の関係」をパターン化した資料を提示します。そこで、より具体的なイメージをもって、上記論点についても議論を深めることになりそうです。

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