介護保険の福祉用具貸与・販売や住宅改修、標準価格を導入すべきか―介護保険部会(2)



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 介護保険の給付対象となっている福祉用具の貸与・販売、住宅改修について、現在は事業所の裁量による価格(つまり言い値)となっているが、標準価格などを決めるべきではないか―。

 こういった議論が、20日に開かれた社会保障審議会・介護保険部会で行われました(関連記事はこちらこちら)。

7月20日に開催された、「第60回 社会保障審議会 介護保険部会」
7月20日に開催された、「第60回 社会保障審議会 介護保険部会」

福祉用具などの価格は事業者裁量、バラつき防止が大きな課題

 公的介護保険制度では、居宅介護サービスや施設入所サービスだけでなく、福祉用具の貸与や販売、住宅改修も保険給付の対象となっています。

 例えば車いすや介護ベッド(特殊寝台)、移動用リフトなどの自費購入は、それほど容易いことではありません。また、住宅に手すりをつけたり、段差を解消したりする工事も同様です。

 一方、こうした福祉用具や住宅の改修は、要介護状態となっても在宅生活の維持を可能とするための重要な要素であるため、上限額を設定したうえで、費用の一部が保険給付されるのです。

【福祉用具貸与】

▽利用者負担は1割(一定所得以上では2割)(原則、同一種目は年間10万円が限度)

▽対象種目は、「車いす(付属品含む)」「特殊寝台(付属品含む)」「床ずれ防止用具」「体位変換器」「手すり」「スロープ」「歩行器」「歩行補助つえ」「認知症老人徘徊感知機器」「移動用リフト(つり具の部分を除く)」「自動排泄処理装置」

【福祉用具販売】

▽利用者負担は1割(一定所得以上では2割)(原則、同一種目は年間10万円が限度)

▽対象種目は、「腰掛便座」「自動排泄処理装置の交換可能部品」「入浴補助用具(入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト)」「簡易浴槽」「移動用リフトのつり具の部分」

福祉用具貸与・販売の概要
福祉用具貸与・販売の概要

【住宅改修】

▽利用者負担は1割(一定所得以上では2割)(原則として生涯20万円を上限)

▽対象は、「手すりの取り付け」「段差の解消」「滑りの防止および移動の円滑化などのための床・通路面の材料変更」「引き戸などの扉への取り換え」「洋式便器などへの取り替え」など

住宅改修の概要
住宅改修の概要

 このように在宅生活の維持にとって極めて重要な制度ですが、次のような課題・問題点模試的されています。

(1)福祉用具貸与・販売の価格は、事業者の裁量に任せられており、同一製品であっても価格のバラつき(非常に高額な請求)がある

(2)住宅改修についても、工事価格は事業者の裁量に委ねられており、価格や施行水準にバラつきがある

 こうした課題を踏まえ、20日の介護保険部会では、厚労省老健局高齢者支援課の佐藤守孝課長から、「極端な価格差が可能な限り生じず、利用者が適正な価格の福祉用具を選択する」「住宅改修の工事価格痩せ高水準のバラつきを抑え、利用者が適切な改修を受ける」ための仕組みについて議論してほしいとの要請がなされています。

標準価格設定を求める意見多いが、技術的に解決すべき事項も少なくない

 価格のバラつきを抑える方策として、多くの委員から「標準価格」の設定をしてはどうかとの意見が出されました。

 自由価格となっている背景には「事業者間の価格競争」を促すことで、より安価な利用・購入の促進という狙いがあります。厚労省の調査では、実際に1人当たり給付額は低下傾向にあり、価格水準が下がってきていることもわかっています。

福祉用具貸与の1人当たり給付額を見ると、低下傾向にあることが分かる
福祉用具貸与の1人当たり給付額を見ると、低下傾向にあることが分かる

 また保険者の中には価格情報を公表し、利用者の選択における目安を提示しているところもありますが、外れ値(極めて高額な価格)の存在は解消できておらず、今般の「標準価格」設定論につながっています。

 もっとも「標準価格」をどのように設定するのかについては、技術的な検討も必要になってきます。医療保険では、医薬品については銘柄別に、極めて品目数の多い医療材料については機能別に償還価格が設定されています(薬価基準、材料価格基準)。福祉用具などについて、どのように価格を設定し(品目別?機能別?)、また標準価格を超過した場合に差額を誰が負担するのか(利用者負担?事業者負担?)など、詰めるべき課題は数多くあります。

 ちなみに、現在テクノエイド協会に登録されている福祉用具はおよそ9000品目(流通しているものを加味するとおよそ1万2000品目)とされていることから、医薬品のように品目別の標準価格設定ができるのではないかとも思えます。しかし、新たな標準価格を設定するにあたっては、価格調査の実施や、価格算定ルールの設計など、膨大な検討が必要であるため、佐藤高齢者支援課長は「どのような仕組みがとれるのか検討したい」とコメントするにとどめています。

 この点について土居丈朗委員(慶應義塾大学経済学部教授)は、「介護報酬改定は3年に一度しか行われない」ことから、市場実勢価格の標準価格への反映が適切に行われるのかという点を危惧しています。また、福祉用具などの価格には「製品価格」と「諸経費(メンテナンス代など)」が混在していることから、これらを明確に分けて検討するべきとも提言しています。

住宅改修の施行水準確保のため、事業者登録制度などを検討

 ところで福祉用具については、福祉用具専門相談員が▽目標▽目標達成のためのサービス内容―などを記載した「福祉用具計画」を策定することになっています。さらに、より適切な福祉用具選択を目指し、福祉用具専門相談員の資質向上を狙った指定講習カリキュラムの見直しや自己研鑚の努力義務化も行われました。

福祉用具専門相談員の講習カリキュラム見直し
福祉用具専門相談員の講習カリキュラム見直し

 佐藤高齢者支援課長は、さらに適切なアセスメント・ケアプランに基づく福祉用具・住宅改修利用を目指し、どのような方法が考えられるか(例えば地域ケア会議の活用)という論点も示しています。

 この点について鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は、「ケアマネジャーと福祉用具専門相談員のスキルアップが不可欠」と指摘しています。

 また、住宅改修については施行水準のバラつき解消に向けて、「事業者の登録制度導入」(齊藤秀樹委員:全国老人クラブ連合会乗務理事)や「福祉住環境コーディネータなどの配置義務化」(鈴木邦彦委員)などを検討すべきとの意見も出されています。

【メディ・ウォッチの運営:グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン】

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