都道府県の支払基金と国保連、審査基準を統一し共同審査を実施すべき―質の高い医療実現に向けた有識者検討会で構成員が提案



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 同じ都道府県の社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険団体連合会で、審査基準の統一化を図り、共同してレセプトの審査を行うことで縦覧点検や突合点検を強化し、また支払基金は「どの疾病をどの病院が数多く見ているのか」「病院ごとの手術実績などはどのような状況か」といった情報を公開する機能も持つべき―。

 8日に開催された「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」では、構成員からこのような提案がなされました(関連記事はこちら)。

 有識者検討会は、▼審査の効率化と不合理な差異の解消▼医療・介護サービスの質を高めるためのデータ活用―に関するワーキンググループを設置。今秋までワーキンググループで集中的な検討を行い、それを踏まえて年内に結論を出す方針も固めています。

7月8日に開催された、「第4回 データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」
7月8日に開催された、「第4回 データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」

構成員から大胆な「支払基金改革案」が提示される

 例えばNDB(ナショナルデータベース)のような医療ビッグデータを、医療制度改正やデータに基づいたヘルスケア事業に用いることなどが期待されています。しかし、「支払基金の支部間」「支払基金と国保連間」などでレセプトの審査基準に大きな差異のあることが知られており、これが「活用に当たっての壁」となっています。

 有識者検討会では、この審査基準の差異解消や、ビッグデータの活用に向けた検討を行っていますが、8日の会合では飯塚正史構成員(SBIホールディング顧問、前明治大学大学院客員教授)から次のような「支払基金改革案」が提案されました。

(1)現在の点検条件は、支払基金では本部設定が96万6809件、支部設定が13万1383件(合計109万8192件)、国保連では中央会設定が8742件、県独自設定が5万8864件(合計6万7606件)と大きく異なっている(関連記事はこちら

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●まず同じ都道府県にある支払基金と国保連でレセプトの審査基準(点検条件)を統一するとともに、基準を医療機関に開示(医療機関が自主点検を進める)

飯塚構成員による支払基金改革案(1)、同じ都道府県の支払基金と国保連で、まず審査基準(点検条件)の統一を図り、それを医療機関に開示する
飯塚構成員による支払基金改革案(1)、同じ都道府県の支払基金と国保連で、まず審査基準(点検条件)の統一を図り、それを医療機関に開示する

(2)現在、支払基金は被用者保険(健康保険組合など)のレセプト、国保連は国保と後期高齢者医療のレセプトを審査している

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●同じ都道府県の支払基金と国保連のそれぞれで共同審査センター(センター長は同一人物)を設置、そこでレセプトの振り分けを行い共同審査を行う(例:特定機能病院などの審査が困難な病院を支払基金、やや困難な病院を国保連が担当し、残りは適宜分担するなど)

飯塚構成員による支払基金改革案(2)、同じ都道府県の支払基金と国保連で共同審査センターを設置、そこでレセプトを振り分けて共同審査を行う(現在は、被用者保険は支払基金、国保・高齢者医療は国保連が担当)
飯塚構成員による支払基金改革案(2)、同じ都道府県の支払基金と国保連で共同審査センターを設置、そこでレセプトを振り分けて共同審査を行う(現在は、被用者保険は支払基金、国保・高齢者医療は国保連が担当)

(3)縦覧点検・突合点検などの手法を統一し、強化する

(4)支払基金は審査支払だけでなく、「病名マップ」「薬剤使用料」「病院ごとの手術実績」などの情報も提供する

 きわめて大胆な提案ですが、飯塚構成員は「現在の支払基金の人員や組織を維持したまま、国保連と統一基準を作り、共同審査を行うのみで、現実的なものである」とコメントしています。

 もっとも規制改革会議サイドからは「支払基金の業務や組織体制をゼロベースで見直す」という指示がなされており、規制改革会議の下部組織メンバーでもある林いづみ構成員(桜坂法律事務所弁護士)も「現状を維持する提案は、規制改革会議の方向とは異なる」と指摘しています。しかしゼロベースでの見直しを行うためには、いくつかの段階を置く必要があると考えられ、厚労省保険局保険課の宮本直樹課長も「飯塚構成員の提案を経過段階のものと捉えれば、規制改革会議の意向とまったく異なるものとは言えないのではないか」と見ています。

 ところで(3)の縦覧点検・突合点検の強化は、いわば「重複受診」「頻回受診」の是正を促すもので飯塚構成員は「点検データをもとに保険者が患者を指導する」ことを考えています。この点について松原謙二構成員(日本医師会副会長)は「重複受診などは、かかりつけ医の機能強化によって是正していくもの」との考えを述べ、飯塚構成員の考えに疑問を呈しています。

「審査の差異解消」と「データ活用」、WG設置し秋までに集中検討

 ところで、「支払基金の支部間」「支払基金と国保連間」などでレセプトの審査基準に大きな差異のあることはかねてより指摘されており(関連記事はこちら)、厚労省は2010年に「審査支払機関の在り方に関する検討会」を設置。同様の議論が行われ、審査基準の差異解消に向けて「支払基金内に検討委員会を設置する」などの取り組みが行われています。

支払基金では、支部間差異解消に向けた検討委員会を設置し、差異のあった点と解消策について公表している(1)
支払基金では、支部間差異解消に向けた検討委員会を設置し、差異のあった点と解消策について公表している(1)

支払基金では、支部間差異解消に向けた検討委員会を設置し、差異のあった点と解消策について公表している(2)
支払基金では、支部間差異解消に向けた検討委員会を設置し、差異のあった点と解消策について公表している(2)

 検討会の座長を務めた森田朗座長代理(国立社会保障・人口問題研究所長)は「支払基金内部、国保連都の間での意見交換が十分ではない。より客観化・標準化が必要である」と強く指摘しました。

 また西村座長は、議論が拡散しがちな点を憂慮し、有識者検討会の下に▼審査の効率化と不合理な差異の解消▼医療・介護サービスの質を高めるためのデータ活用―に関するワーキンググループを設置することを提案、了承されました。

 ワーキンググループは今秋までに各テーマについて集中的な議論を実施。有識者検討会はそこで得られた成果を基に、年内に結論を出す考えです。

 前者の「審査の効率化と不合理な差異の解消」ワーキングでは、▽審査事務を効率化するための方法(コンピュータチェックと職員審査の役割分担の見直しやAIの活用)▽不合理な差異の解消(差異の見える化、ICTを活用した審査基準の統一化の進め方)▽マイナンバーインフラなどを活用した支払基金と国保連のレセプトデータ連結―などを議論します。

 また後者の「データ活用」ワーキングでは、▽審査支払機関のデータをどのように活用するか▽医療・介護データの分析・利活用方法▽審査支払機関の役割―について検討します。

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