医療事故に該当するかどうかの判断基準統一に向け、都道府県と中央に協議会を設置―厚労省



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 医療機関で発生した死亡事故について、それが報告対象となる医療事故に該当するのかの判断には難しいものがあります。そこで、医師会や病院団体などが判断などの支援を行っていますが、この支援内容の充実などを図るため、医療事故調査制度の運用を改善する―。

 こういった内容を盛り込んだ、改正医療法施行規則(省令)が24日に公布されました(厚労省のサイトはこちらこちら)(関連記事はこちら)。

医療に起因する「管理者が予期しなかった死亡・死産事例」を医療事故として報告

 医療事故調査制度は、「医療事故の再発防止」を目的として昨年(2015年)10月からスタートしました。すべての医療機関が、院内で発生した「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」のうち、「管理者が予期しなかったもの」を第三者機関である「医療事故調査・支援センター」に報告するとともに、院内で原因究明に向けた調査を行う仕組みです。制度の大枠は次のとおりです(関連記事はこちら)。

(1)院内で発生した死亡・死産事例が「医療事故に該当するであろう」と、医療機関の管理者が判断した場合、まず「事故発生」の事実を、医療事故調査・支援センターと遺族に報告する

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(2)医療機関は院内調査を行い、調査結果を医療事故調査・支援センターに報告するとともに、その内容を遺族に説明する((1)で事故発生の事実を報告した後、院内で事故の状況や原因などを調査し、その結果を報告する)

  ↓

(3)遺族や医療機関が院内調査結果に納得できない場合には、医療事故調査・支援センターに調査を依頼できる(小規模な医療機関などでは、自身で納得のいく調査ができないケースもある)

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(4)医療事故調査・支援センターが調査を行った場合、その結果を遺族と医療機関に報告するとともに、事故事例を集積・分析して再発防止に向けた普及啓発に努める

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける
医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける

医療事故調査制度における「医療事故」の範囲、(1)医療に起因する死亡・死産(2)管理者が予期しなかった―という2重の限定が設けられている
医療事故調査制度における「医療事故」の範囲、(1)医療に起因する死亡・死産(2)管理者が予期しなかった―という2重の限定が設けられている

医療事故か否かの判断を支援する支援団体でも、判断内容にバラつきあり

 このように医療事故調査制度は、医療機関の管理者が「死亡事例を医療事故と判断し、医療事故・調査支援センターに報告する」ところから始まります。医療事故の定義は前述のとおり、院内で発生した「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」のうち、「管理者が予期しなかったもの」ですが、事例の状況や背景はさまざまで判断に迷うことも少なくありません。

 そのため厚生労働大臣は、医療機関の判断や調査を支援する団体(支援団体)を告示形式で定めています。例えば、▽日本医師会▽都道府県医師会▽日本看護協会▽都道府県看護協会▽日本病院会▽全日本病院協会▽日本医療法人協会▽日本精神科病院協会▽全国自治体病院協議会▽全国医学部長病院長会議▽大学医学部および附属病院▽国立病院機構▽国立がん研究センター▽国立循環器病研究センター▽国立国際医療研究センター▽日本赤十字社▽済生会▽日本医学会に属する学会(内81学会)―などがあります(厚労省のサイトはこちら)。

 しかし、支援団体によって判断内容にバラつきがあることを指摘されており、厚労省は今般、次のような仕組み(医療事故調査制度の運用改善)を設けることとしたものです(関連記事はこちら)。

▽支援団体(上記の日本医師会や病院団体など)が、医療機関の支援を行うにあたり必要な対策を推進するために、共同で協議会(支援団体連絡協議会)を組織できることとする

▽協議会では、「医療事故の報告や調査の状況」「支援団体が行う支援の状況」に関する情報共有や、意見交換を行う(ここで支援内容のバラつきを自ら確認できる)

▽協議会では、「医療事故の報告や調査、支援団体による支援を円滑に実施するための研修」(医療機関の管理者や院内で医療事故調査制度業務に携わる者、支援団体の関係者が対象となる)や、「医療機関の管理者に対する支援団体の紹介」も行う(支援内容のバラつき是正が期待できる)

▽協議会は都道府県に1か所設置することを基本とし、さらに中央組織を全国に1か所設置する

▽中央の協議会には、医療事故調査・支援センターが参画する

▽医療事故調査・支援センターは、支援団体や医療機関などに対して「医療事故調査などにかかる優良事例」の供給も行う

「医療事故ではない」と判断した場合、遺族に分かりやすく説明を

 前述のとおり、医療事故調査制度は、医療機関の管理者が「医療事故」の報告を行うところからスタートします。つまり、管理者が「これは医療事故ではない。予期された死亡事例である」と判断した場合には、調査制度の対象にはなりません。つまり、制度上は「遺族から医療事故調査の開始を申し立てる」ことはできないのです。

 しかし、遺族側が医療機関の説明を理解・納得できないことも生じるでしょう。そこで、医療事故調査・支援センターは、遺族から相談を受けた場合には、地域の医療安全支援センター(都道府県などに設置。医療に関する苦情・心配や相談への対応などを行う機関)を紹介しています(関連記事はこちら)。

 今般の医療事故調査制度の運用改善では、これを一歩進め、「遺族からの求めに応じて、医療事故調査・支援センターが、医療機関の管理者に相談内容を伝達する」することを可能としています。

 もっとも、医療事故か否かの判断は、これまでどおり医療機関の管理者が行い、医療事故調査・支援センターが自ら「この事案は報告対象となる医療事故に該当する」と判断したり、医療機関に対して指導を行うことはできません。

 なお、厚労省は医療機関の管理者に対して、「医療事故に該当しないと判断した場合には、遺族などにその理由を分かりやすく説明する」よう求めています。

医療機関の管理者に、死亡・死産事例がもれなく報告される体制の構築を

 このほか、今般の運用改善では次のような見直しも行われています(関連記事はこちら)。

▽医療事故調査・支援センターは、再発防止策の検討を充実するため、医療機関の管理者の同意を得て、必要に応じて医療事故調査報告書(院内報告書)の内容に関する確認・照会などを行う(この場合に、医療機関の管理者が報告書の再発義務や遺族への再報告義務を負うものではない)

▽医療機関の管理者に、当該医療機関における死亡・死産を確実に把握するための体制(死亡・死産事例がもれなく管理者に報告される体制)の確保を義務づける

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