がん診療連携拠点病院におけるステージ別症例数や人員体制など、国民に分かりやすく情報提供―がん診療提供体制検討会



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 2017年度からの「第3期がん対策推進基本計画」策定に向けて、がん診療提供体制のあり方に関する議論が進んでいます。具体的には▽がん診療連携拠点病院の指定要件▽拠点病院の客観的な評価▽国民に対する情報提供のあり方―などを議論し、その結果をがん対策推進協議会に報告し、新たな基本計画に盛り込むことになります。

 16日に開かれた、「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」では、ゲノム医療の推進や情報提供、放射線医療を議題としました(関連記事はこちら)。

 情報提供については、今年(2016年)4月1日現在で427ある拠点病院の情報を、患者・国民目線で分かりやすく提供するために、ステージ・治療法別の症例数などを整理していく考えが厚生労働省から提示されています

6月16日に開催された、「第6回 がん診療提供体制のあり方に関する検討会」
6月16日に開催された、「第6回 がん診療提供体制のあり方に関する検討会」

がんの部位・ステージ・地域別で、各拠点病院の治療実績などが比較可能に

 がん情報については、国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」の中で提供されていますが、「専門家でも必要な情報にアクセスすることが難しい」と指摘されています。そのため、がん対策加速化プランでは、「患者や家族が必要な情報を簡単に検索でき、病院間の比較が行える」システムを構築するよう指示されています。

 そこで厚労省は今般、例えば、疾患名『胃がん』・ステージ『II』・地域『東京都』などと入力すると、該当地域においてどの拠点病院がどれだけの症例を診ており、うち開腹手術と腹腔鏡手術の件数はどれだけで(治療実績)、医師や専門看護師が何名配置されているのか(人員体制)、などが示されるようなシステムのイメージを提示しました。がん情報サービスを改善していくことになりそうです。

がん診療連携拠点病院の情報公開イメージ
がん診療連携拠点病院の情報公開イメージ

 提供される情報としては、がんの種別に▽治療前のステージ別症例数▽外科的治療件数▽体腔鏡治療件数▽内視鏡的治療件数▽放射線治療件数▽化学療法件数▽医師数▽薬剤師数▽看護師(専門看護師・認定看護師)数▽緩和ケア研修会受講率―などとする考えも示されましたす。

 こうした情報は、「院内がん登録項目」や「拠点病院の現況報告」がベースになります。厚労省健康局がん・疾病対策課の丹藤昌治がん対策推進官は、「患者・国民にとって必要な項目を、膨大な情報の中から、分かりやすく提供するために絞った」旨を説明しています。

 こうした提案に対して、「臨床心理士の配置状況なども掲載してはどうか」(三好綾構成員:がんサポートかごしま理事長)、「標準治療の適応にならない治療内容も、多くの患者が欲している」(北川雄光構成員:慶應義塾大学医学部外科学教授)といった意見が出されました。

 ところで、がん情報サービスでは、患者の特定を防ぐために少数症例はアバウトな記載(実数ではなく「1-10件」といった記載)となっています。この点、構成員からは「実数を示すべき」との意見も出ています。

 厚労省では、今後、▽少数症例の取り扱いと個人情報保護法令都の関係▽情報提供項目―についてさらなる整理を行い、早急な情報提供を進める考えです。

高精度放射線治療やRI内用療法の推進なども検討

 放射線治療は、がん対策推進基本計画の中でも重点事項に位置づけられていますが、「減少傾向にある」とも指摘されています。こうした点も踏まえて、16日の検討会では、放射線治療の専門家2名を参考人として招き、意見交換を行っています。

 大阪府立成人病センター放射線治療科の手島昭樹主任部長は、「我が国でも欧米なみの放射線治療を実施する必要があるが、現在は半分程度にとどまっている」点を指摘し、▽治療計画を担う人材(医学物理士)の養成▽IMRTなど高精度放射線治療を行う体制の整備▽拠点病院指定要件の見直し▽緩和ケアにおける放射線治療の推進―などをすべきと提言しました。

 医学物理士は現在800名ですが、その多くは放射線技師と兼務であることから、「高精度な放射線治療を推進するために、専任の医学物理士を1000名程度養成する必要がある」とメディ・ウォッチに説明。「医学物理士の国家資格化が必要」と訴えています。

通常の放射線治療では、正常臓器にも損傷を与えてしまうが、IMRTなど高精度放射線治療機器では、より正常臓器に損傷を与えない治療が可能となる
通常の放射線治療では、正常臓器にも損傷を与えてしまうが、IMRTなど高精度放射線治療機器では、より正常臓器に損傷を与えない治療が可能となる
 

 また放射線医学総合研究所臨床研究クラスタ分子イメージング診断治療研究部の東達也部長は、核医学治療・RI内用治療推進の必要性を強調します。RI(radioisotope)内用治療とは、体内に取り込んだ薬剤(RI:放射性同位元素、β線やγ線などの放射線を放出する)によって、がん細胞を殺傷する治療法です。我が国では、▽甲状腺がんに対するヨウ素内用療法▽骨転移疼痛に対する塩化ストロンチウム内用療法▽再発・難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫に対するインジリウム、イットリウム内用療養▽神経内分泌腫瘍に対するヨウ素内用療法―が認められています。

日本では現在、4種のRI内用治療が認められている
日本では現在、4種のRI内用治療が認められている

 東部長は、患者数が増加しながら、治療体制の整備が遅れている甲状腺がんに対して、ヨウ素内用療法を迅速に実施できる体制を整備する必要があるとし、「RI内用療養入院ベッド数を、現在の135床(日本全国)から340-375床に拡大する」こと、そのために▽49の都道府県がん診療連携拠点病院でのRI治療ベッド確保・増床▽診療報酬の改善▽関連法制の整備と緩和―などを行うよう求めています。

患者増加が著しい甲状腺がんについては、治療病床が少ないため、東部長は増床を求めている
患者増加が著しい甲状腺がんについては、治療病床が少ないため、東部長は増床を求めている
 

 意見交換の中では、放射線治療症例のデータベース化が進められていることなども手島主任部長から報告されたほか、関係学会(外科学会も含む)と厚労省との連携を図っていくことなどが確認されました。

ゲノム医療、カウンセラーなどの人材育成も最重要課題の一つ

 ゲノム医療については、「我が国でもゲノム医療を推進していく」ことの重要性・必要性を再確認したほか、カウンセラーなどの人材育成を「車の両輪」として進めていくことが重要との認識が各構成員から示されました。

 遺伝子(ゲノム)診断を行った結果を患者や家族にどう伝えるべきなのか。現在、▽臨床遺伝専門医▽認定遺伝カウンセラー▽家族性腫瘍カウンセラー▽家族性腫瘍コーディネーター―といった国家資格が整備されていますが、これらは必ずしも「がん」を専門とはしていません。

遺伝カウンセラーが国家資格になっているが、がんを専門とした遺伝カウンセラー資格は、現在はない
遺伝カウンセラーが国家資格になっているが、がんを専門とした遺伝カウンセラー資格は、現在はない

 そこで、「新たな資格」を創設するのか、「既存の資格」を充実していくのかなどを今後検討していくことになります。この点について明確な方向性はまだ見えていませんが、北島政樹座長(国際医療福祉大学副理事長・名誉学長)は、「米国では遺伝子診断は進んでいるものの、結果を患者・家族に伝えるカウンセラーなどの人材養成が遅れている。我が国では、遺伝子診断を進めるとともに、カウンセラーなどの人材養成を同時に進め、ゲノム医療に対する『患者の不安』を解消していくことが重要」と強調しています。

 

 ところで、427ある拠点病院のすべてでゲノム医療体制をはじめとする高度医療提供構築していくことは、マンパワー・財源などさまざまな面で困難を伴います。そのため、検討会では「選択、集中、機能分担、医療機器の適正配置」などを考慮していく必要があるという点でも見解が一致。つまり、「一般的ながん医療の均てん化は今後も進める」「高度ながん医療については選択と集中も行う」という、いわば2段構えでがん診療提供体制を整備していくことになります。

 北島座長は、まず「適切なゲノム医療の構築」を行った後、それを実施するための「コアとなる施設」の整備、ゲノム医療を支える人材(専門医やカウンセラー)の養成を進めるべきとの考えも述べました。

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