2次医療圏、5疾病・5事業それぞれの特性も踏まえた設定を―厚労省・医療計画検討会(1)



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 2018年度からの第7次医療計画では、2次医療圏の設定について▽人口や医療資源の少ない地域では統合を促す▽5疾病・5事業それぞれの特性を踏まえる―こととしてはどうか―。

 こういった議論が、15日に開かれた「医療計画の見直し等に関する検討会」で行われました(関連記事はこちらこちら)。

6月15日に開催された、「第2回 医療計画の見直し等に関する検討会」
6月15日に開催された、「第2回 医療計画の見直し等に関する検討会」

2次医療圏、人口や受療動向、地域医療構想との整合性を勘案して設定

 2018年度からの第7次医療計画スタートに向けて、検討会では「医療計画の作成方針」(厚生労働大臣が策定)に関する議論を本格化させました。都道府県は2017年度から医療計画の作成業務に入るため、検討会は今年(2016年)内に意見を取りまとめる必要があります。

 15日の検討会では、(1)2次医療圏(2)5疾病・5事業(3)PDCAサイクル推進のための指標―をどう考えるかが議題となりました。ここでは(1)の2次医療圏のあり方に関する議論を振り返ってみます。

 (1)の2次医療圏は、もっぱら「一般の入院医療を完結する」単位として、▽地理的条件▽日常生活の需要の充足▽交通事情―などを考慮して都道府県が設定します。したがって、あまりに小さな、あるいは人口の少ない範囲を2次医療圏として設定すると、医療資源の効率的な活用が阻害される恐れがあります。

 このため前回の第6次医療計画(2012―16年度を作成する時点では、「人口20万人以下」「患者の流入率が20%未満」「患者の流出率が20%以上」という要件を満たす地域では、2次医療圏の見直しを行うことが求められました。しかし87圏域が要件に該当したものの、実際に見直されたのは3県(18医療圏)にとどまりました。医療圏を見直さなかった県では、「枠組みを変えても実効性がない」「広域化すると過疎地の患者の利便性がそがれる」「災害時の救護体制である行政圏域などとの整合性を取る必要がある」といった理由を挙げています。

前回の第6次医療計画では、「人口が20万人以下」「患者流入率が20%未満」「患者流出率が20%以上」の基準を満たす2次医療圏について、設定を見直すよう求められた
前回の第6次医療計画では、「人口が20万人以下」「患者流入率が20%未満」「患者流出率が20%以上」の基準を満たす2次医療圏について、設定を見直すよう求められた

 厚労省は、第7次医療計画での2次医療圏について、前回と同様に「人口規模」や「患者の受療動向」に応じて設定することや、地域医療構想における「構想区域」との整合性を図ることを基本としてはどうか、との考え方を示しています(関連記事はこちらこちらこちら)。この点、鈴木邦彦構成員(日本医師会常任理事)は、地域包括ケアシステムが推進される中では重症度が中等程度の患者も在宅に移行していくことを踏まえ「今後、2次医療圏単位ではより高いレベルの医療ニーズに対応していかなければならない(重症の入院患者割合が高まる)。人口が少なく、また医療資源の乏しい地域では2次医療圏の統合を進める必要がある」との考えを示しています。

 ただし、前述の「人口20万人以下」「流入率20%未満」「流出率20%以上」という要件に沿うと、2014年時点では78医療圏(6次医療計画策定時点と重複するのは57医療圏)、2025年時点では90医療圏(同69医療圏)という具合に対象医療圏が異なってきます。人口や患者の流出入率は変動するためです。

「人口が20万人以下」「患者流入率が20%未満」「患者流出率が20%以上」の基準を用いて2025年の状況を見ると、2次医療圏見直しが必要な地域は若干変わってくる
「人口が20万人以下」「患者流入率が20%未満」「患者流出率が20%以上」の基準を用いて2025年の状況を見ると、2次医療圏見直しが必要な地域は若干変わってくる

 こうした点を捉えて尾形裕也構成員(東京大学政策ビジョン研究センター特任教授)は、「見直しが必要となる2次医療圏の基準についても議論する必要がある。また人口や流出入率の指標に優先度をつける事も考えるべき」と指摘しています。

 また相澤孝夫構成員(日本病院会副会長)は、「一般病床と療養病床では、患者の流れは全く異なる。両者を区別して考えるべき」と強調しています。

急性心筋梗塞など緊急性の高い医療では、搬送体制も考慮した医療圏設定を

 ところで、心筋梗塞などの時間的猶予のない医療と、がんなどの比較的時間的猶予のある医療では、2次医療圏の考え方が異なってきます。現在でも兵庫県や北海道では、いわば5疾病・5事業ごとの2次医療圏が設定されています。

 この点について厚労省は、次のような興味深いデータを検討会に提示しました。

▼2次医療圏ごとに「脳卒中発症から30分以内に治療が開始される患者」の割合を見ると、人口50万人以上の医療圏ではほとんどが80%であるが、人口20―50万人の医療圏では80%未満のところが増え、人口20万人以下の医療圏ではゼロ%のところも散見される

脳卒中発症から30分以内に治療を受けられる患者の割合を見ると、2次医療圏の規模によるバラつきが大きい
脳卒中発症から30分以内に治療を受けられる患者の割合を見ると、2次医療圏の規模によるバラつきが大きい

▼同様に「急性心筋高速発症から30分以内に治療が開始される患者」の割合を見ると、人口50万人以上の医療圏でも80%に満たないところがあり、人口が20万人以下では相当数の医療圏でゼロ%となっている

急性心筋梗塞発症から30分以内に治療を受けられる患者の割合を見ると、脳卒中患者よりも2次医療圏ごとのバラつきが大きい
急性心筋梗塞発症から30分以内に治療を受けられる患者の割合を見ると、脳卒中患者よりも2次医療圏ごとのバラつきが大きい

 つまり、脳卒中や急性心筋梗塞を発症した場合、当該患者が居住する地域(医療圏)の人口規模によって、早期治療を受けられるかどうかに大きなバラつきがあることが、データ上から示されたことになります。

 こうした状況を踏まえて厚労省は、改めて▽脳卒中や急性心筋梗塞など緊急性の高い医療については、緊急時搬送体制を勘案した圏域▽がんなど緊急性が相対的に低い医療では、医療資源の実情に応じた広域的な圏域―を検討してはどうかと提案しています。

 この点について今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)は、「脳卒中の中でも、クモ膜下出血などでは緊急性の度合いがより高い。地域医療構想では、こうした点を細かく見ており、それを医療計画にも盛り込むと良いのではないか」との旨をコメントしています。

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