レセプト審査基準の地域差など、具体的事例を基にした議論が必要―質の高い医療実現に向けた有識者検討会



Pocket

 社会保険診療報酬支払基金(支払基金)と国民健康保険団体連合会(国保連)で、レセプトの審査にどのような違いがあるのか、また支払基金の都道府県支部間でどのような違いがあるのか、今後、具体的な事例を基に議論していってはどうか―。

 こういった議論が、14日に開かれた「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」で行われました。

6月14日に開催された、「第3回 データヘルス時代の質野高い医療の実現に向けた有識者検討会」
6月14日に開催された、「第3回 データヘルス時代の質野高い医療の実現に向けた有識者検討会」

審査基準の地域差など、事例をもとにしなければ課題などを共有しにくい

 有識者検討会は、▽保険者機能強化と医療の質の向上▽審査の効率化・統一化の推進と組織体制―の2点について議論を行うために設置されました。14日の会合では、レセプト審査におけるバラつきについて、検討会構成員と、意見陳述者として出席した支払基金や国保連の関係者の間で議論が行われました(関連記事はこちらこちら)。

 医療現場からは「地方独自ルールが存在する」との批判が、かねてからあります。例えば回復期リハビリ病棟の入院患者については、1日につき9単位まで疾患別リハビリ料の算定が可能です(2016年度改定でリハビリの効果に着目した算定制限が導入された)が、ある県の国保連では「一律に6単位を上限として、超過分を査定する」といった取り扱いがなされているといった指摘です。

 この点について、国民健康保険中央会(都道府県の国保連が加盟する中央組織)の柴田雅人理事長は、「都道府県の国保連は独立した組織であり、どうしても地域差(独自の審査基準)は生じてしまう。それを是正すべく、昨年から審査情報を中央に提示してもらい、それを共有する取り組みを行っている」と説明。さらに「支払基金との審査基準統一も実施したい。最終的には審査システムに反映させたい」との考えも述べました。

 一方、石川県の支払基金で審査委員長を務める木田寛氏は、自身の経験をベースに、支払基金と国保連の違いについて、「国保連では『地域の特性』を、支払基金では『全国統一の見解』を重視する傾向にあると思う。石川県では、支払基金と国保連で審査基準のすり合わせを行い、8-9割は一致するが、一部に調整できない部分が出てくる」と説明。

 また木田氏は、支払基金の支部(都道府県)間差異について、「審査体制よりも、医療提供体制の違いによるところが大きいのではないか」と分析。「地域で医療提供体制が異なるため、ある支部ではA部分に力を入れてシビアな審査を行い、別の支部ではA部分には大きな問題はないため緩やかな審査をしている状況がある」と述べ、「全国統一の審査基準を適用すると、シビアな審査を行うことで審査結果を一定の幅に収めることができていた県で、その維持ができなくなるような事態が生じるかもしれない」との危惧を示しています。

 この点、松原謙二委員(日本医師会常任理事)も「若者のレセプトが中心となる支払基金と、高齢者のレセプトが中心となる国保連では、考え方が違っていてよいのではないか」と述べています。

 ただし、こうした「抽象的」「一般的」な議論では、構成員の間でなかなか問題点や課題を共有できません。西村周三座長(医療経済研究機構所長)は、「具体例をもとに、どのような地域差や、支払基金・国保連間の差があるのかを提示してほしい」と、厚生労働省や支払基金、国保連に要望しました。

 なお、具体例について飯塚正史構成員(元明治大学大学院客員教授)は、「両手に生じた尋常性疣贅(イボ)の除去処置が行われた際、『一連のもの』として1回の算定しか認めないのか、『右手と左手は異なる』として2回の算定を認めるのか、この辺りも都道府県によって随分異なる」と指摘。また、「同じ病院に、同年代の患者が入院し、同じ内容の治療が行われた場合、レセプトの内容も同じであろう。しかし1人が被用者保険に加入し、もう1人が国保に加入していた場合、両者で審査の結果が異なってくるという事態には同意できない」と述べています。

 今後、具体的な事例をもとに「審査基準の地域差の状況」や「地域差が生じる原因」などを探っていくことになりそうです。

国保連サイド、「審査支払機関のあり方」論議を警戒

 14日の検討会では、国保中央会から「国保連の業務効率化」などについて意見陳述が行われました。

 有識者検討会では、「審査支払機関のあり方」そのものが議論の対象になるため、明示こそされていませんが国保連のあり方、ひいては「国保連と支払基金との統合」といったテーマも議論される可能性があります。

 こうした背景を踏まえて柴田理事長は、「国保連は、支払基金と異なり各国保連が独立している」「国保連は審査支払業務で得られた知見を保険者共同事業(医療費通知など)にも活かしており、両者を一体的に行うことで効率的な業務を行っている」ことなどを説明し、単純な「国保連と支払基金との統合」論を牽制しました。

 また国保中央会の理事である亀井利克名張市長も、「審査支払業務の効率化に関する有識者検討会の意見は受け止めるが、国保にとって最大のテーマは2018年度からの『都道府県単位』化にいかにスムーズに進めるかである」と述べ、柴田理事長と同様の牽制を行っています。

 もっとも柴田理事長は、前述のように審査の効率化・統一化を図る必要性はあるとし、▽各国保連の審査委員会における審査基準の共有化▽支払基金都の統一的な判断基準の策定―を行い、これをコンピュータによるシステムチェックに反映させていく方針を説明しています。

 さらに、審査の効率化・統一化に向けて、厚労省に対し▽医師・専門家が関与した判断基準の整備(および『検討の場』の設置)▽診療報酬点数表での「例外規定」の削減・廃止―を要望しました。

国保連では、審査の効率化・統一化を図るために、情報共有やシステムへの反映などを行う考え
国保連では、審査の効率化・統一化を図るために、情報共有やシステムへの反映などを行う考え

支払基金、改革案に対する疑問に回答するが、委員は納得せず

 14日の検討会では、支払基金から「改革案に対する疑問点」への回答も提示されました。これは、5月23日の前回会合で飯塚構成員らから出された「数字が実態とかけ離れているのではないか」との指摘に答えたもので、2014年度と2016年度の審査データをもとに、数値の根拠を明らかにしています。例えば、職員による事前チェックは記録に残っており、職員チェックはレセプト全体(コンピュータチェックで付箋のつかなかったものも含めて)の35%に該当する(2014年度データより)、といった具合です。

5月23日の前回(第2回)会合で指摘された、「実態と支払基金の現状把握が異なっている」との指摘に対し、支払基金が回答
5月23日の前回(第2回)会合で指摘された、「実態と支払基金の現状把握が異なっている」との指摘に対し、支払基金が回答

電子レセプトによる審査の流れ
電子レセプトによる審査の流れ

 しかし、飯塚構成員は「東京都の支払基金では1か月に1000万件のレセプトを審査するが、そのうち35%の350万枚を300人に職員で、10日でチェックすることなどあり得るのだろうか」と指摘。他の委員も、説明には得心がいかない様子です。

【関連記事】
支払基金の改革案に批判続出、「審査支払い能力に問題」の声も―質の高い医療実現に向けた有識者検討会
診療報酬審査ルールの全国統一、審査支払機関の在り方などをゼロベースで検討開始―厚労省が検討会設置
診療報酬の審査を抜本見直し、医師主導の全国統一ルールや、民間活用なども視野に―規制改革会議WG
ゲムシタビン塩酸塩の適応外使用を保険上容認-「転移ある精巣がん」などに、支払基金
医療費適正化対策は不十分、レセプト点検の充実や適正な指導・監査を実施せよ―会計検査院
レセプト病名は不適切、禁忌の薬剤投与に留意―近畿厚生局が個別指導事例を公表
16年度診療報酬改定に向け「湿布薬の保険給付上限」などを検討―健康・医療WG
団塊ジュニアが65歳となる35年を見据え、「医療の価値」を高める―厚労省、保健医療2035

Pocket