医療事故調査制度、早ければ6月にも省令改正など行い、運用を改善―社保審・医療部会



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 昨年(2015年)10月からスタートした医療事故調査制度について、与党などからの指摘を踏まえて、「事案が医療事故に該当するかの判断などを標準化するために、支援団体等連絡協議会を設置する」「医療事故調査・支援センターが医療機関に遺族などからの相談内容を伝達できることを明確化する」といった制度運用上の改善を、早ければ今月(2016年6月)中にも行う―。

 厚生労働省は、9日の社会保障審議会・医療部会にこのように報告しました。

6月9日に開催された、「第46回 社会保障審議会 医療部会」
6月9日に開催された、「第46回 社会保障審議会 医療部会」

医療事故の再発防止を目的として、医療事故調査制度が2015年10月からスタート

 医療事故調査制度は、「医療事故の再発防止」を目的に、すべての医療機関が院内で発生した「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」のうち、「管理者が予期しなかったもの」を第三者機関(医療事故調査・支援センター)に報告するとともに、院内で調査を行う仕組みです。制度の大枠は次のように整理できます(関連記事はこちらこちら)。

(1)事故が発生した医療機関が、医療事故調査・支援センターに事故発生を報告し、遺族にも報告する(上記の基準などに照らし、医療事故と管理者が判断した事例については、まず「事故が発生した」旨を報告する)

(2)医療機関は院内調査を行い、調査結果を医療事故調査・支援センターに報告するとともに、その内容を遺族に説明する((1)の報告の後、院内で事故の状況や原因などを調査し、その結果を報告する)

(3)遺族や医療機関が院内調査結果に納得できない場合には、医療事故調査・支援センターに調査を依頼できる

(4)医療事故調査・支援センターは調査結果を遺族と医療機関に報告するとともに、事故事例を集積・分析して再発防止に向けた普及啓発に努める

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける
医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける

 昨年(2015年)10月からスタートし、今年(2016年)4月末までに医療事故調査・支援センターに報告された医療事故は222件(相談件数は1141件)に上り、うち66件で院内調査が済んでおり、医療事故調査・支援センターへの調査依頼は2件となっています(関連記事はこちら)。

パブコメを経て、早ければ6月中に関係省令・通知を改正

 医療事故調査制度を規定する医療介護総合確保推進法では、「法の公布(2014年6月25日)から2年以内に、法制上の措置その他の必要な措置を講ずる」旨の検討規定が設けられています。

 与党では、この規定に基づいて、制度の施行状況や、医療団体や患者団体からの意見を踏まえて検討を進め、次のような見解をまとめました。

(A)医師法第21条「医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」の見直しや、医療行為と刑事責任との関係などを議論していく必要があるが、さまざまな意見があり、期限(2016年6月24日)までに法改正を行うことはできない

(B)医療事故調査制度に対する信頼性の向上を図る必要があり、制度の運用上の改善を行う必要がある

 

 厚生労働省はこの見解を受け止めて、次のような改善を行う方針を決定。9日の医療部会に報告しました。

(a)医療事故調査等支援団体(日本医師会や病院団体、ナショナルセンター、学会など)や医療事故調査・支援センターが情報や意見交換する場として、中央と地方(都道府県に1か所程度)に「支援団体等連絡協議会」(仮称)を制度的に位置づける(医療法施行規則の改正)

(b)医療機関の管理者が「院内での死亡事例をもれなく把握できる体制」を確保しなければならないことを明確化する(医療法施行規則の改正)

(c)医療事故調査・支援センターが、遺族からの相談内容を、遺族からの求めに応じて医療機関に伝達できることを明確化する(関係通知の改正)

(d)支援団体や医療機関に対する研修の充実、優良事例の共有を行う(関係通知の改正)

(e)医療事故調査・支援センターが、院内調査報告書の内容に関する確認・照会などを行えることを明確化する(関係通知の改正)

医療機関が自ら行う院内調査を支援する団体、制度構築時点では医師会や病院会、大学病院、各学会などを想定
医療機関が自ら行う院内調査を支援する団体、制度構築時点では医師会や病院会、大学病院、各学会などを想定

 厚労省医政局総務課医療安全推進室の平子哲夫室長は、「パブリックコメント募集を早急に行い、省令(医療法施行規則)や関係通知の改正を早ければ6月中にも行いたい」との考えです。

「医療事故に該当するか否か」の判断を標準化するため、支援団体間で意見効果

 改善内容の(a)は、事案(死亡・死産事例)が「報告対象になる医療事故に該当するかどうか」の判断や、院内調査の方法などを標準化していくことが狙いです。

 報告すべき医療事故は、前述のとおり「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡または死産」のうち、「管理者が予期しなかったもの」です。▽事前に医療従事者などが、患者などに対して死亡・死産が予期されていることを説明していた▽事前に医療従事者などにより、死亡・死産が予期されていることを診療録その他の文書等に記録していた▽事情の聴取などを行った上で、事前に医療従事者などにより、死亡・死産が予期されていると認めた―場合には、管理者が予期していたと判断され、報告対象から除外されます。

「医療に起因する死亡・死産」の考え方、▽火災や天災▽原病の進行▽偶発的な併発症―などによる死亡は報告の対象外
「医療に起因する死亡・死産」の考え方、▽火災や天災▽原病の進行▽偶発的な併発症―などによる死亡は報告の対象外

 このような基準が規定されていますが、実際の死亡・死産事例の状況は千差万別で、報告すべきか否かの判断は困難を極めます。そこで、医師会や病院団体などの支援団体が判断をサポートすることになりますが、山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は「支援団体や地域によって、見解が180度異なる場合もある」など、サポート内容のバラつきを指摘します。

 こうした点を是正し、事故か否かの判断などを標準化するために、「支援団体が集い、情報・意見交換をする」場として支援団体等連絡協議会を設置することとなったものです。

医療事故調査・支援センターが医療機関に遺族からの相談内容を伝達、指導等はせず

 改善内容の(b)は、医療機関に伝えづらい遺族の気持ちを慮った内容と言えそうです。現在、医療事故調査・支援センターは、遺族からの相談があった場合に地域の医療安全支援センターの紹介を行っています。これを一歩すすめ、医療事故調査・支援センター自らが「遺族からの相談内容」を、遺族の同意を前提として医療機関に伝達できることを制度上明確にすることとしています。

 ただし、医療事故調査・支援センターが自ら「この事案は報告対象となる医療事故に該当する」といった判断や、医療機関への指導などをすることはありません。医療事故調査制度は、「医療機関の管理者の判断」を重視しており、管理者の判断に医療事故調査・支援センターが過度に介入することを認めるか否かは、法律改正論議などが必要になってくるためです。

 

 これらの改善内容そのものに委員から異論は出されませんでしたが、相澤孝夫委員(日本病院会副会長)は、「医療事故調査制度は、まだ『よちよち歩き』の制度で、今後、日本の優れた医療文化の1つになるように、皆で育てていかなければならない。将来の制度改善に向けて話し合い、制度を育てていく場を設けてほしい」との要望が出されています。

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