医師の地域偏在は拡大、9割超の病院で医師確保は大学医局に依存―日病調査



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 都会の大規模病院では勤務医が増加しているが、地方の中小規模病院では減少しており、医師の地域偏在は拡大している。不足する医師を確保するために、9割超の病院が大学医局からの派遣に頼っており、特に地方の病院で顕著である―。

 日本病院会が28日に公表した2015年の「地域医療再生に関するアンケート調査」報告書から、このような状況が明らかになりました(日病のサイトはこちらこちら)。

 また医師確保のために人材斡旋会社を利用する病院が増えており、中には人材斡旋会社に登録し数か月単位で病院を渡り歩く「フリーランス医師」が存在している点を考慮し、日病では「医師・看護師などの斡旋紹介業者に対して一定の規制を掛けることが必要な時期にきている」との問題提起も行っています。

地方・中小規模病院は常勤医減少、都会・大規模病院は増加、偏在は拡大

 調査は、医師の地域偏在などの状況や地域医療構想に対する考えなどを調べるために実施。664の会員病院から回答が得られました。地域において回答病院数にやや偏りがありますが、規模で見ると、日病会員の構成を概ね反映しています(今般の調査では500床以上:20%[日病会員は12%]、400-499床:12.5%[同9%]、300-399床:16%[同15%]、200-299床:13.4%[同15%]、100-199床:27%[同32%]、100床未満:11%[同17%])。

 まず常勤医師の確保状況について、2010年4月と15年4月の状況を比較すると、54.7%の病院では「増加した」ものの、21.2%の病院では「減少した」ことが分かりました。

 増加した病院の割合が多いのは、所在地別にみると「指定都市・中核市」65%、地域別にみると九州66.7%・近畿63.5%・関東58.3%、病床規模別にみると「500床以上」80%・「400-499床」71%などとなっています。

 一方、減少した病院の割合が多いには、所在地別にみると「郡部・町村」43%、地域別にみると四国36%・北海道32%・東北32%、病床規模別にみると「100-199床」30%となっています。

都市部・大病院では常勤医が増加しているが、地方・中小病院では減少している
都市部・大病院では常勤医が増加しているが、地方・中小病院では減少している

 日病では、さまざまな医師確保対策にもかかわらず「医師の地域偏在は解消するどころか、逆に拡大している」と指摘しています。

9割超の病院が医師確保で大学医局に依存、3分の1の病院が研究費など支援

 また、病院の考えに基づくものではありますが、80%の病院では「勤務医が不足している」と感じており、診療科別に見ると▽内科▽麻酔科▽整形外科▽呼吸器科▽産婦人科―などで不足感が強くなっています。

 では、病院はどのようにして勤務医を確保しているのでしょう。

 今般の調査では、「大学医局からの派遣」が91.0%と突出して高く、次いで「人脈など」47.6%、「公募」42.5%、「人材斡旋会社」37.6%などが多くなっています。

勤務医の確保について、ほとんどの病院は「大学の医局」を頼りにしている
勤務医の確保について、ほとんどの病院は「大学の医局」を頼りにしている

 「大学医局からの派遣」は、いずれの所在地・地域・開設者・病床規模でも最多となっていますが、特に「郡部・町村部(98%)」「国立・自治体立・公的(98%)」「400-499床(98%)」といった特性を持つ病院で高くなっています。

大規模病院、とくに400-499床の病院で「大学医局」を頼っている割合が高い。また都市よりも地方でその割合が高い
大規模病院、とくに400-499床の病院で「大学医局」を頼っている割合が高い。また都市よりも地方でその割合が高い

 また34.7%の病院では、大学医局への研究費支援などを行っている実態も明らかになりました。特に公金支出に規制の多い自治体立病院ですら8%の病院が研究費支援などを行っていることから、日病では「勤務医不足が深刻な状況」と述べています。

大学の医局から医師派遣を受けている病院のうち、3分の1超は研究費などの支援を行っている
大学の医局から医師派遣を受けている病院のうち、3分の1超は研究費などの支援を行っている

医師・看護師の人材斡旋会社に一定の規制が必要な時期にきている

 勤務医の確保を「人材斡旋会社」に頼っている病院のうち、41%が1年間に500万円以上の報酬を人材斡旋会社に支払っています。別の日病調査では「全国の病院から総額で340億円が人材斡旋会社に支払われている」と推計されています。

 また日病では、人材斡旋会社に登録し数か月単位で病院を渡りあるく「フリーランス」医師にも注目し、医療の質や安全面で影響が出ることを危惧。

 こうした点を踏まえて「医師・看護師などの斡旋紹介業者に対して一定の規制をかけることが必要な時期にきているのではないか」と問題提起しています。

医師偏在是正、医療現場は「総合診療医」や「医学部地域枠」などが有効と考える

 こうした勤務医不足の本質はどこにあると医療現場は考えているのでしょう。

 今般の調査では72.9%の病院が、「医師の絶対数不足ではなく、地域・診療科偏在にある」と答えています。また、地域偏在の原因については「大病院の都市部集中」60.4%、「新医師臨床研修制度」44.3%、「大学医局制度の崩壊」39.1%などが多くなっています。

 さらに、地域・診療科偏在の解消策については、「総合診療医の育成」79.7%、「医学部地域枠入学の活用」73.1%、「医師の計画配置」70.2%などが高くなっています。この点、「新専門医制度が医師の偏在を助長する」と指摘されていますが、今般の調査では「新専門医制度とリンクさせた偏在是正」については35.7%の病院しか賛同していません(関連記事はこちらこちらこちら)。

医師偏在を解決する方策として、「総合診療医」「医学部地域枠入学の活用」「医師の計画配置」を挙げる意見が多い
医師偏在を解決する方策として、「総合診療医」「医学部地域枠入学の活用」「医師の計画配置」を挙げる意見が多い

 このうち「医学部入学地域枠」については、卒業生の地域定着に大きな効果があることが分かっています。日病では、この点を重視し「有効性・期待が高いからこそ、制度設計や運用ルールを全国レベルである程度統一し、実効性を確保することが必要」と提案しています。

 また「医師の計画的配置」とは、開業の自由などを一定程度制限することにつながります。この点、日本医師会と全国医学部長病院長会議会長の『医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言』では、「医師の地域・診療科偏在の解決のためには、医師自らが新たな規制をかけられることも受け入れなければならない」との考えが明記されています。しかし、今般の調査結果を見ると、規制的手法へ賛同する病院の割合は、以前に比べて低くなっており「規制的手法」の導入は現場レベルでは理解を得るまでに苦労が伴うことを物語っています(関連記事はこちら)。

地域医療構想策定GL、「過疎地の医療提供体制」という視点が欠落

 ところで、現在、各都道府県で地域医療構想の策定が進んでいます。この点、厚労省の地域医療構想策定ガイドラインを拠り所に、地域の事情などを勘案して構想を策定することになりますが、55.8%の病院では「過疎地での医療確保といった視点が乏しい」と感じているようです。

 地域医療構想では、地域の医療ニーズを推計した上で、2025年時点で▽高度急性期▽急性期▽回復期▽慢性期―の各病床がどの程度必要になるのかなどを描きます。都道府県単位で見ると、現在と比べて概ね急性期の病床数が過剰で、回復期が不足するため、「急性期から回復期への転換」をどう促進していくかが鍵と見られています。

 しかし、日病では「医療必要量が少なく、かつ医療資源も乏しい中山間地の過疎地では、高度急性期・急性期はもとより、回復期・慢性期の病床すべてが不足しており、『調整する以前問題』である場合が多い」と指摘。ガイドラインには、こうした過疎地の医療提供体制構築には触れていないと批判しています。

 ただし、今般の調査では「都会の病院の約半数が、『地域医療構想策定ガイドラインに過疎地の視点が不足している』と考えている」ことが分かりました。日病では「病院関係者が所在地や規模に関係なく、医療提供体制そのものの課題を認識している」と強調しています。

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