レセプト病名は不適切、禁忌の薬剤投与に留意―近畿厚生局が個別指導事例を公表



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 医療機関への個別の中で、「医学的な診断根拠がない傷病名(いわゆるレセプト病名)が記載されている」「胸部単純エックス線検査が必要以上に実施回数が多い」「ロキソニン錠を、禁忌である消化性潰瘍のある患者に投与」など事例が見受けられた―。こういった指摘事項を、厚生労働省の近畿厚生局がこのほど明らかにしました。

保険ルール違反がある場合に個別指導、保険指定取り消しになるケースも

 厚労省は、保険医療機関がルールを遵守しているかどうかを定期的に調査し、違反などが認められる場合には、指導や監査といった是正措置を行っています。指導のうち「個別指導」は、違反などが疑われる医療機関を呼び出し、面接懇談方式で保険ルールを遵守するよう指導するものです(関連記事はこちら)。

 今般、近畿厚生局はさまざまな不適切事例について指導を行ったことを公表しました。類似事例が認められる場合には、指導に繋がる可能性も高いので改善が必要です。目立つところをピックアップしてみましょう。

【診療録等】

▽外来患者及び入院患者の診療録について、医師による日々の診療内容の記載が極めて乏しく、「無診察治療」とも誤解されかねないので直ちに改める必要がある。特に、症状、所見、治療計画等について記載内容の充実を図る必要がある。

▽複数の医師が1人の患者の診療に当たる場合、診療の都度、署名・記名押印をして、診療の責任の所在を明らかにする必要がある。

▽医師が自分自身の診療録に自ら記載(自己診療)しているケースがあるが、必ず、別の医師の診療に基づいて検査・投薬・注射等を受けなければならない。

【傷病名】

▽検査、投薬などの査定を防ぐ目的で付けられたと考えられる医学的な診断根拠のない傷病名(いわゆるレセプト病名)が認められるが、不適切なので改めること。

▽「非常に多数の傷病名」「長期にわたる疑い傷病名」「長期にわたる急性疾患等の傷病名」が見受けられるので、整理を行うこと

▽急性咽頭喉頭炎、副鼻腔炎、喉頭炎、接触性皮膚炎、浮腫、足凍傷などについて、詳細な記載(急性・慢性、左右の別、部位)を行うこと

▽頻拍発作、栄養障害、胃内ガス貯留などは傷病名欄でなく、摘要欄に記載するか、別に症状詳記を作成すること。

【診療報酬明細書の記載等】

▽特定薬剤治療管理料について、摘要欄に薬剤の血中濃度を測定している薬剤名および初回の算定年月を記載していないケースがある

▽悪性腫瘍特異物質治療管理料について、摘要欄に行った腫瘍マーカーの検査名を記載していないケースがある

▽特養入所者の患者であるにもかかわらず、特記事項欄に表示していないケースがある

【初・再診料、外来管理加算】

▽現に診療継続中の患者につき、新たに発生した他の傷病で初診を行った場合には、当該新たに発生した傷病について、初診料は算定できない

▽慢性疾患など、明らかに以前受診した疾病・負傷などと同一の疾病・負傷などと推定される場合の診療は、初診として取り扱わない

▽再診時に検査などの結果説明も併せて行い、再診料を算定する場合は、再診時の診察所見等について診療録の記載内容の充実を図る必要がある

▽夜間・早朝等加算について、診療録等に受付時間を記録するなどして、算定要件を満たしていることを明確にする必要がある

【入院料など】

▽入院診療計画に、「説明に用いた文書の写し」の貼付がないケースや、「主治医以外の担当者名」「症状」「手術内容・日程」「推定される入院期間」「特別な栄養管理の必要性」などの記載がないケースがある。

▽入院診療計画の記載内容が画一的であり、個々の患者の病状に応じたものとなっていない。

▽療養病棟入院基本料において、医療区分・ADL区分の評価の根拠に関する診療録への記載が乏しい。

▽救急医療管理加算・乳幼児救急医療管理加算を算定対象でない患者に算定している。

▽短期滞在手術基本料について、退院翌日に患者の状態を確認するなど、十分なフォローアップを行う必要がある。

【医学管理など】

▽特定疾患療養管理料について、管理内容の要点を診療録に記載していない、また記載が乏しく、画一的である。

▽特定薬剤治療管理料について、薬剤の血中濃度および治療計画の要点を診療録に記載していない、または記載が乏しいケースがある。

▽悪性腫瘍特異物質治療管理料について、腫瘍マーカー検査の結果および治療計画の要点を診療録に記載していない、または記載が乏しいケースがある。

▽糖尿病合併症管理料について、専任の看護師に対して行った指示内容の診療録への記載が乏しい。

▽生活習慣病管理料について、療養計画書の内容に変更がない場合でも4か月に1回以上は交付しなければならない点に留意すること。

▽生活習慣病管理料は、脂質異常症、高血圧症、糖尿病を主病とする患者に対して、生活習慣に関する総合的な治療管理が行われている場合に算定できるものであり、他の医療機関で生活習慣に関する総合的な治療管理が行われている場合には算定できない。

▽薬剤管理指導料について、「副作用歴」「アレルギー歴」「患者への指導事項」の記載が乏しい。

▽診療情報提供料(I)について、「紹介元医療機関への受診行動を伴わない患者紹介の返事」や、「他医療機関の受診状況を確認する目的で文書を発出した場合」に算定しているケースがある。

【在宅医療】

▽往診について、「患家の求めの内容や患家からの連絡の態様、患家の求めのあった時刻」などを診療録に記載するなどし、算定根拠を明確にする必要がある。特に夜間・深夜の往診の加算では留意すること。

▽定期的ないし計画的に患家に赴き診療を行った場合には往診料は算定できない。

▽在宅自己注射指導管理料、在宅血液透析指導管理料、在宅酸素療法指導管理料、在宅中心静脈栄養法指導管理料、在宅人工呼吸指導管理料などについて、当該在宅療養を指示した根拠、指示事項、指導内容の要点を診療録に記載していない、または記載が乏しい。

【検査】

▽段階を踏んでいない検査、結果が治療に反映されていない検査がある

▽「FT3とT3」「FT4とT4」のような「重複」と見なされる検査がある。

▽「末梢血液一般検査・末梢血液像」「生化学検査(I)」「CRP定性・定量」「尿一般」「微生物核酸同定・定量検査」「心電図」「超音波検査」「眼科学的検査」「内視鏡検査」「健康診断として実施した検査」などで、必要以上に実施回数が多い

▽腫瘍マーカー検査を、「診察および他の検査・画像診断などの結果から悪性腫瘍の患者であることが強く疑われる者」以外の者に対して実施しているケースが、悪性腫瘍の診断確定または転帰の決定までの間に2回以上実施しているケースがある

【画像診断】

▽胸部単純エックス線検査は、必要以上に実施回数が多い

▽コンピューター断層診断について、読影結果の所見の診療録への記載が乏しい。

【投薬・注射】

▽ロキソニン錠を、禁忌である消化性潰瘍のある患者に対して投与していた

▽「経口摂取可能な患者などへのガスター注」「抗生物質を投与していない患者に対するレベニン散・エンテロノン-R散・エントモール散」など、適応外の投与が行われていた

▽一般感染症に対するバクタ配合錠など、用法外投与の例が認められた

▽ビタノイリンカプセル、タケプロンカプセルについて長期漫然投与の例が認められた

【リハビリテーション】

▽疾患別リハビリテーションについて、医師の診察に基づき適切な指示が行われていな、または指示内容が乏しいケースがある。

▽リハビリテーション実施計画を作成していないケースがある。

▽医学的にリハビリテーションの適応に乏しい患者に実施しているケースがある。

▽疾患別リハビリテーション料について、不適切な傷病名(寝たきりの患者へ運動器不安定症、外科手術・肺炎治療などの誘因がない患者へ廃用症候群)をつけ、早期リハビリテーション加算及び初期加算の算定をしているケースがある。

【処置】

▽人工腎臓について、「著しく人工腎臓が困難な障害者など」に該当しない患者に対して障害者等加算を算定している。

▽対象となる傷病名がないにもかかわらず、消炎鎮痛等処置を算定している。療養の給付を行うことが困難であると認め、療養費同意書を交付した患者に対して消炎鎮痛等処置は算定できない。

【手術】

▽創傷処理の「筋肉、臓器に達するもの」とは、単に創傷の深さを指すものではなく、筋肉、臓器に何らかの処理を行った場合をいうこと。

【保険外併用療養費】

▽特別療養環境室料について、患者からの同意書を取得していないケースがある

【一部負担金】

▽患者から一部負担金を徴収した後に診療報酬の請求内容を変更し、患者から徴収した一部負担金額に変更が生じた場合は、差額を徴収又は返金すること。

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