看護師の特定行為で「手順書例集」を公表、「医療現場で手順書作成の参考に」―全日病



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 全日本病院協会はこのほど、「特定行為に係る手順書例集」を公表しました。

 一定の研修(特定行為研修)を受けた看護師は、医師・歯科医師の包括的指示の下で手順書に基づいて38の特定行為を実施することが可能です。特定行為研修は、すでに日本看護協会や日本慢性期医療協会で開始されており、今秋(2016年10月)には特定行為を行える看護師が誕生する見込みです(関連記事はこちら)。

 今回の手順書例集について、全日病は「医療現場で手順書を作成する際の参考にしてほしい」とコメントしています。

研修を受けた看護師が、医師の包括的指示の下で38の特定行為を実施

 2014年6月に成立した医療介護総合確保推進法には、看護師が医師の包括的指示を受けた上で、手順書(プロトコル)に基づいて一定の診療の補助(38の特定行為)を実施するための「研修」制度(特定行為研修)の創設が盛込まれました。

 特定行為の実施については、これまで厚労省の「チーム医療推進会議」やその下部組織で検討が進められ、次のような枠組みが固められました(関連記事はこちらこちら)。

(1)医師・歯科医師が患者を特定した上で、院内で作成した手順書(プロトコル)により特定行為を実施するよう看護師に指示する

(2)看護師は、指示に基づいて患者の病状から「現在の看護師の能力」で特定行為の実施が可能かどうかを確認し、病状が能力の範囲外なら医師・歯科医師にあらためて判断を仰ぐ

(3)病状が能力の範囲内であると確認できた場合には、手順書に定められた「診療の補助(特定行為)」を実施し、看護師は医師・歯科医師に結果を報告する

 今回の手順書例集は、「(1)の手順書を各病院が作成する際の参考資料」という位置づけです。メディ・ウォッチでは、38の特定行為の中から、医療現場で注目される2つの行為をピックアップして紹介します。

直接動脈穿刺による採血、意識レベルや穿刺部位の血腫などの注意

 まず「直接動脈穿刺法による採血」について見てみましょう。全日病では患者を2つに区分し、手順書をかき分けています。

 1つ目の手順書は、▽何らかの原因で経皮的酸素飽和度(SpO2)の測定が適切に実施できない▽酸素濃度の低下が疑われる▽二酸化炭素濃度の高値が疑われる▽重篤な酸・塩基平衡障害(代謝性アシドーシスなど)が疑われる―のいずれにも該当しない患者が対象となります。

 こうした患者について、「意識レベルの低下」「末梢循環不全徴候(収縮期血圧90mmHg以下、四肢の皮膚蒼白と冷や汗など)」などの病状がない場合には、看護師に特定行為(直接動脈穿刺法による採血)を行わせることが考えられます(「行わせなければならない」わけではない点に注意)。

 行為実施中に看護師は、▽意識レベル▽バイタルサイン▽穿刺する動脈部位―を確認し、いずれか1つにでも変化が見られた場合には、「穿刺した動脈の触知状態・血腫形成の有無」「出血傾向の有無」を見て、担当医師に直接連絡し、指示を仰がなければいけません。

直接動脈穿刺法による採血の手順書例(1)
直接動脈穿刺法による採血の手順書例(1)

 

 2つ目の手順書は、▽呼吸回数の増加▽SpO2の低下▽チアノーゼの出現―のいずれもがない患者が対象です。

 これらの患者について、「意識状態の悪化」と「血圧低下」のどちらもが認められない場合には、看護師に特定行為を行わせることが考えられます。逆に言えば、意識状態の悪化、血圧低下のいずれかがある場合には、看護師に特定行為を行わせることはできません。

 特定行為を行うに当たって、看護師は▽意識状態の悪化▽血圧の低下▽心拍数の変化(頻脈、徐脈、不整脈)▽呼吸状態の悪化▽SpO2の著しい低下―が生じていないかをチェックし、仮に1つでも認められた場合には、バイタルサインを確認し、担当医師に直接連絡して指示を仰ぐ必要があります。

直接動脈穿刺法による採血の手順書例(2)
直接動脈穿刺法による採血の手順書例(2)

 いずれの場合でも、特定行為終了後には「担当医師への直接連絡」と「診療録への記載」によって経過を報告することになります。

胸腔ドレーンの抜去、意識状態やSpO2に注意

 次に「胸腔ドレーンの抜去」を見てみます。抜去のタイミングを誤れば気胸が生じかねないため、細心の注意が必要です。これも、患者の状態に応じて手順書が2区分に分かれています。

 1つ目は、「持続吸引でエアリークが消失し、12時間以上経過した後の胸部X線写真で肺虚脱を認めない患者」あるいは、「持続吸引により排液量が1日当たり150ミリリットル以下で、外観は漿液性であり、胸部X線写真で肺虚脱を認めない患者」のいずれかが対象です。

 こうした患者が、「意識状態の変化」「バイタルサインの変化」「ルームエアーでの呼吸苦」がなく、抗凝固剤を使用していない場合に、看護師に特定行為(胸腔ドレーンの抜去)を行わせることが考えられます。いずれかのケースに該当した場合、看護師に特定行為を行わせることはできません。

 特定行為実施中、看護師は▽意識状態の変化▽バイタルサインの変化▽SpO2が95%以下―になっていないかをチェックし、いずれか1項目でもあった場合には、「呼吸回数」「出血」「皮下気腫」の有無を確認して担当医師に直接連絡。その指示を仰がなければいけません。

胸腔ドレーンの抜去の手順書例(1)
胸腔ドレーンの抜去の手順書例(1)

 

 2つ目は、「胸腔ドレナージの必要がなくなった患者」が対象ですが、▽意識状態の変化なし▽バイタルサインの変化なし▽SpO2が92%以上▽胸腔ドレーンに呼吸性動揺が認められる▽胸腔ドレーンの1日排液量が200ミリリットル未満かつ性状が漿液性▽胸腔ドレーンからの気洩を認めない―というすべての条件を満たす場合のみ、看護師に特定行為を実施させることが可能です。

 特定行為実施中に、上記項目のいずれかに変化が生じた場合には「呼吸性動揺の有無」「出血の有無、排液が白濁していないか」「気洩の有無」を確認して、担当医師に直接連絡して指示を仰ぎます。

胸腔ドレーンの抜去の手順書例(2)
胸腔ドレーンの抜去の手順書例(2)

 胸腔ドレーンを看護師が抜去した場合には、「担当医師に直接連絡」「診療録への記載」によって経過を報告する必要があります。

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