2016年度改定、内視鏡用いる手術の保険適用を拡大し、一部の重粒子線治療を保険収載―中医協総会

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 2016年度の次期診療報酬改定においては、内視鏡を用いた手術、例えば内視鏡下鼻中隔手術や関節鏡下股関節唇縫合術、腹腔鏡下臍ヘルニア手術などを新たに保険収載する―。このような方針が、20日に開かれた中央社会保険医療協議会・総会で了承されました。

 また現在、先進医療となっている内視鏡下手術用ロボット(ダ・ヴィンチ)を用いた腹腔鏡下腎部分切除術や、一部の陽子線治療・重粒子線治療なども次期改定で保険収載されます。

1月20日に開催された、「第323回 中央社会保険医療協議会 総会」
1月20日に開催された、「第323回 中央社会保険医療協議会 総会」

医療技術評価分科会と先進医療会議の2ルート

 医療技術は日々進歩しており、その果実を一般国民に分与するために、診療報酬改定においては多数の新規医療技術が保険収載されます。

 ただし保険財源には限りがあることや、新規の技術の安全性・有効性・汎用性などを考慮する必要があることから、大きく次の2つのルートによって保険収載すべき新規技術候補が選定され、その妥当性を中医協総会で審議することになっています。

(A)医学会から保険収載要望が出ている技術のうち、診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会(中医協下部組織)で、有効性・安全性・緊急性などの高いものを選定する

(B)先進医療のうち有効性・安全性の確立したものを、先進医療会議で選定する

 20日の中医協総会では、(1)(2)で選定された候補を審議し、すべて保険収載する(後述のとおり既存技術の保険からの削除もあります)方向を確認しました。今後、具体的な点数設定や当該技術を実施する上での施設基準などが練られます。

高額な衛生材料の使用状況を考慮し、処置の点数を引き上げ

 (A)のルートからは、新規技術78件・既存技術145件の合計223件について保険上の手当が行われます。ただし既存技術の中には「保険からの削除」や「減点」などが行われるものも含まれます。

 新規に保険収載される技術を眺めると、▽内視鏡下胆管膵管処置におけるバルーン内視鏡加算▽腹腔鏡下の肝切除術▽腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術▽内視鏡下鼻中隔手術▽内視鏡下鼻腔手術▽関節鏡下股関節唇縫合術▽腹腔鏡下ストーマ造設術▽腹腔鏡下臍ヘルニア手術▽腹腔鏡下半月状線ヘルニア手術▽腹腔鏡下大綱、腸間膜腫瘍摘出術―など、内視鏡を用いた手術が多い点が目立ちます。厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨企画官は「侵襲が低く、患者のQOLを高めるもの」と説明しています。

 既存技術の中では、「創傷処置の増点」や「イレウス(腸閉塞)用ロングチューブ挿入法」が注目できます。眞鍋企画官は「処置においては、高額な、新たな衛生材料を用いるケースが増えており、コスト償還が難しくなっている項目もある」と述べ、今回の点数引き上げの趣旨を説明しました。これは、外科系学会社会保険委員会連合(外保連)の要望と合致するものと言えます。

 また、2014年度の前回改定で減点された「選択帝王切開」や「緊急帝王切開」も既存技術145件の中に含まれており、次期改定での点数引き上げが予想されます。これも外保連の要望と合致する項目です。

 一方、▽気管支カメラ▽フィブリノペプチド▽酸素濃度(胃液)▽全血凝固時間―などの既存技術は、臨床現場での意義が薄くなっているため保険から削除されます。ただし、次期改定から2年間(つまり2018年3月まで)は経過措置として保険償還が可能です。

 なお、医療技術評価分科会には医学会から914件(重複あり)の要望がなされ、このうち検討が必要とされた(使用する技術が薬事法の承認を得ていない場合などは検討の余地なし)ものが737件、次期改定で保険収載などをすべきと判断されたものが223件となっています。

医療技術評価分科会では、新規78件・既存145件の合計223件の医療技術について、保険収載などの評価を行うべきと選定した
医療技術評価分科会では、新規78件・既存145件の合計223件の医療技術について、保険収載などの評価を行うべきと選定した

ダ・ヴィンチ用いた腎部分切除術、ブラッドパッチを保険収載

 (B)の先進医療会議からのルートでは、次の14の技術(現在、先進医療として実施されている)が保険収載されることになります。

(1)凍結保存同種組織を用いた外科治療

(2)陽子線治療(小児腫瘍に対するもののみ)

(3)重粒子線治療(切除非適応の骨軟部腫瘍のみ)

(4)非生体ドナーから採取された同種骨・靱帯組織の凍結保存

(5)RET遺伝子診断

(6)実物大立体臓器モデルによる手術支援

(7)単純疱疹ウイルス感染症または水痘帯状疱疹ウイルス感染迅速診断(リアルタイムPCR法)

(8)網膜芽細胞腫の遺伝子診断

(9)有床義歯補綴治療における総合的咬合・咀嚼機能検査

(10)腹腔鏡下仙骨膣固定術

(11)硬膜外自家血注入療法

(12)食道アカラシアなどに対する経口内視鏡的筋層切開術

(13)内視鏡下頸部良性腫瘍摘出術

(14)内視鏡下手術用ロボットを用いた腹腔鏡下腎部分切除術

 このうち(2)の陽子線治療と(3)の重粒子線治療については、かねてから保険収載すべきか否かが議論されており、今般、初めて一部について保険収載が認められました。それ以外の例えば前立腺がん・肺がん・肝がんに対しては、引き続き先進医療として継続することになります。

 ただし、両技術については、数多くの症例がある(2014年7月―15年6月の間に、陽子線治療は3012件、重粒子線治療は1889件)にもかかわらず、有効性などに関するエビデンスが確立しません。この背景には、実施医療機関によって手法が異なるなどの課題があります。先進医療技術会議は、「学会の示した統一方針に則って実施する」ことや、「全症例について、学会のデータベースに登録する」ことなどを、先進医療として継続するための条件とする考えです(関連記事はこちら)。

 また(11)は、いわゆる「ブラッドパッチ(Blood patch)療法」のことで、交通事故などによって脳脊髄液が漏れ、目まいや頭痛が生じる「脳脊髄漏出症」の患者に対して、患者自身の血液を硬膜外に注入し、漏出部分を閉鎖する技術です。患者・家族からは、かねてより強い保険収載要望が出されており、厚労省がこれに応えたものと言えます。

 (14)はダ・ヴィンチ(da vinci)サージカルシステムを用いた手術で、既に保険収載されている「前立腺がん」手術に続くものです。3D画像を確認しながら自由度の高い鉗子を用いて病巣の切除・縫合を行うことが可能で、「患者のQOL向上」と「がんの根治性」の両方を満足させるものと期待されます。ただし、ダ・ヴィンチのような、著しく高額な医療機器を用いる技術について、先進医療会議では「費用対効果の観点の導入」を検討すべきとの意見も出ています。なお、ダ・ヴィンチ手術の保険収載で前立腺がん治療の内容が大きく変化していることがGHCの分析で明らかになっており、腎部分切除についても今後の状況を注視する必要がありまそうです。

 

 なお、▽先天性血液凝固異常症の遺伝子診断▽経頸静脈肝内門脈大循環短絡術▽自己腫瘍・組織を用いた活性化自己リンパ球移入療法―など11の先進医療は、有効性・効率性などが十分に示されていないことから、2016年度の次期改定で削除(保険診療との併用が不可になる)されます。

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