15年度介護報酬改定で特養の7割が減収、65%「基本報酬引き下げは加算で補えず」―福祉医療機構



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 2015年度の介護報酬改定後に、特別養護老人ホームの約7割が「前年度と比べて減収」になり、65%が「基本報酬の引き下げを処遇改善加算では補えない」と考えている―。こういった調査結果を、福祉医療機構(WAM)が14日に公表しました。

3か月後について、56.7%が減収を見込む

 15年度の介護報酬改定は、全体で2.27%のマイナス改定という厳しいものとなりました。特養ホームについて見てみると、▽看取り介護加算の充実▽日常生活継続支援加算の充実▽在宅・入所相互利用加算▽障害者生活支援体制加算の対象拡大―などが行われる一方で、基本報酬が引き下げられています。

 WAMでは、特養ホーム1012施設を対象に改定の影響について調査しました。

 まず、改定後にサービス活動収益がどう変化したかを見ると、増加が91施設(前年度以前から開設している施設の9.0%)、横ばいが223施設(同22.2%)、減少が692施設(同68.8%)と答えており、約7割の施設が減収になっていることが分かりました。

 減収に対する改定の影響については、95.0%とほとんどの施設が「影響している」と考えています(大いに影響している61.1%、若干影響している33.9%)。

15年度介護報酬改定後に、7割の特養ホームは減収となった
15年度介護報酬改定後に、7割の特養ホームは減収となった

 また、3か月後のサービス活動収益については、574施設・56.7%の施設が減少すると見込んでおり、増加見込みは40施設・4.0%、横ばい見込みは398施設・39.3%となっています。

3か月後の収入について、6割弱の特養ホームは減少を見込んでいる
3か月後の収入について、6割弱の特養ホームは減少を見込んでいる

 サービス活動費用に目を移すと、増加・横ばい・減少がおよそ3分の1ずつです。WAMでは、費用増の要因として「職員の処遇改善のための支出増」や「従事者要件のある加算取得のための人件費増」を挙げています。

 15年度改定に伴って削減した費用としては、▽水道高熱費▽委託費▽人件費―などが多く、また「建て替え・改修工事などの設備投資」「正規職員の採用」などを見送った施設もあります。

 収益と費用の差額である「サービス活動増減差額」については、改定後に減少したとする施設が716施設・71.2%で、増加は94施設・9.3%、横ばいは196施設・19.5%にとどまっています。収益が減少した施設(68.8%)に比べて、サービス活動増減差額が減少した施設(71.2%)のほうが多いことから、WAMは「費用の抑制に限界があった」と推測しています。

収入と費用の差である「サービス活動増減差額」について、特養ホームの7割超で、15年度介護報酬改定によって減少した
収入と費用の差である「サービス活動増減差額」について、特養ホームの7割超で、15年度介護報酬改定によって減少した

 また、3か月後のサービス活動増減差額については、616施設・60.9%の施設が減少すると見込んでおり、増加見込みは47施設・4.6%、横ばい見込みは349施設・34.5%となっています。

3か月後の「サービス活動増減差額」について、特養ホーム6割が減少する見込み
3か月後の「サービス活動増減差額」について、特養ホーム6割が減少する見込み

処遇改善加算、65%が「基本報酬引き下げを賄えない」

 次に、介護職員処遇改善加算を見てみると、99.0%とほぼすべての施設で届け出がなされています。処遇改善加算の区分別に見ると、▽加算Iが891施設・88.9%(加算を届け出ている施設が母数)▽加算IIが106施設・10.6%▽加算IIIが2施設・0.2%▽加算IVが3施設・0.3%―という状況です。

 処遇改善加算は15年度改定で、次のように整理されました。

▽加算I(新設):「職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備」(キャリアパス要件1)および「資質向上のための計画策定と、研修の実施・研修の機会確保」(キャリアパス要件2)を満たし、かつ新たな職場環境等要件を満たす(5.9%の加算)

▽加算II(従前の加算I):「職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備」(キャリアパス要件1)または「資質向上のための計画策定と、研修の実施・研修の機会確保」(キャリアパス要件2)を満たし、さらに既存の職場環境等要件を満たす(3.3%の加算)

▽加算III(従前の加算II):「職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備」(キャリアパス要件1)または「資質向上のための計画策定と、研修の実施・研修の機会確保」(キャリアパス要件2)、あるいは既存の職場環境等要件のいずれかを満たす(加算IIの90%)

▽加算IV(従前の加算III):「職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備」(キャリアパス要件1)または「資質向上のための計画策定と、研修の実施・研修の機会確保」(キャリアパス要件2)、あるいは既存の職場環境等要件のいずれも満たさない(賃金改善などは行う)(加算IIの80%)

 新設された処遇改善加算Iを算定していない理由としては、「必要な要件が達成できない」が最も多く74施設(加算II、III、IV算定施設の66.7%)で、ほかに「費用負担が発生する」が22施設・19.8%、「事務作業が煩雑になる」が7施設・6.3%などがあります。

15年度介護報酬改定で新設された処遇改善加算Iを取得しない理由としては、3分の2の施設が「要件が達成できない」点を挙げている
15年度介護報酬改定で新設された処遇改善加算Iを取得しない理由としては、3分の2の施設が「要件が達成できない」点を挙げている

 このうち「必要な要件が達成できない」と答えた74施設について、どの要件が困難なのかを尋ねたところ、▽任用要件・賃金体系整備(キャリアパス要件1)が46施設・62.2%▽研修実施・研修機会の確保(キャリアパス要件2)が15施設・20.3%▽職場環境等要件11施設・14.9%―という回答が得られました。

処遇改善加算Iで達成できない要件は、6割超がキャリアパス要件1(任用・賃金体系整備)を挙げ、ほかにキャリアパス要件2(研修)、職場環境等要件もある
処遇改善加算Iで達成できない要件は、6割超がキャリアパス要件1(任用・賃金体系整備)を挙げ、ほかにキャリアパス要件2(研修)、職場環境等要件もある

 さらに「研修実施・研修機会の確保」(キャリアパス要件2)が満たせない施設のうち、14施設は「研修時の人の補てんが困難である」ことを理由に掲げています。

 なお、事業継続のために「一旦、賃金水準を引き下げて、その上で処遇改善を行う」ことが認められていますが、この場合には「特別な事情に係る届出書」を提出しなければいけません。この届け出を行ったのは984施設で、処遇改善加算を届け出ている施設の98.2%に上ります。

 処遇改善の方法としては、手当の引き上げが最も多く626施設(介護職員の処遇改善を行った984施設の63.6%)で、ほか定期昇給が481施設・48.9%、一時金が452施設・45.9%、賞与356施設・36.2%、ベースアップが220施設・22.4%などとなりました。WAMは「恒久的な給与(ベースアップなど)財源の確保に懸念を抱いている」と見ています。

処遇改善の方法として最も多いのは「手当」で、逆に最も少ないのは「ベースアップ」である
処遇改善の方法として最も多いのは「手当」で、逆に最も少ないのは「ベースアップ」である

 また、基本報酬の引き下げを処遇改善加算でどの程度賄えているかについては、「若干賄える」が297施設・30.2%、「あまり賄えない」が317施設・32.2%、「全く賄えない」が328施設・33.3%で、65%の施設が「賄えない」と考えていることも分かりました。

15年度改定で特養ホームの基本報酬は引き下げられたが、処遇改善加算では「引き下げ分を賄えない」と考える施設が65%ある
15年度改定で特養ホームの基本報酬は引き下げられたが、処遇改善加算では「引き下げ分を賄えない」と考える施設が65%ある

日常生活継続支援加算、「重度者の受け入れ」要件が障壁に

 各種の加算について見てみると、次のような状況が分かりました。

▽日常生活継続支援加算の取得施設は736施設・72.7%で、取得していない理由としては「入所者要件(要介護4・5が7割以上、認知症患者が65%以上など)を満たしていない」、「従事者要件(介護福祉士が6対1以上)を満たしていない」などが多い

日常生活継続支援加算を取得しない理由として最も多いのは、「入所者要件」(要介護4、5が7割以上など)である
日常生活継続支援加算を取得しない理由として最も多いのは、「入所者要件」(要介護4、5が7割以上など)である

▽サービス提供体制強化加算の取得施設は249施設・24.6%で、取得していない理由は「必要なし」が最も多い

サービス提供体制強化加算を取得しない最大の理由は「必要なし」である
サービス提供体制強化加算を取得しない最大の理由は「必要なし」である

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