在宅医療、14年度改定前後で大きな変化ないが、「重症度に応じた評価」など求める声も―中医協総会



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 前回、2014年度の診療報酬改定では「同一建物居住者への在宅医療」に大きなメスが入りましたが、在宅医療現場で大きな変化はない―。こういった調査結果が、7日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会でまとまりました。

 しかし、委員からは「訪問診療が必要でない患者への対策」や「在宅患者の重症度に応じた診療報酬」などを求める意見も出ています。在宅医療については次回の16年度改定でも重要テーマの1つとなる見込みです。

10月7日に開催された、「第305回 中央社会保険医療協議会 総会」
10月7日に開催された、「第305回 中央社会保険医療協議会 総会」

在宅医療の見直しで、現場からは大きな悲鳴も

 この調査は診療報酬改定の効果・影響を調べる「結果検証調査」の1つとして、14年度に実施されたものです。中医協へは昨年(14年)12月に中間報告が行われており(関連記事はこちら)、今般、最終とりまとめが報告され、了承されました。

 14年度診療報酬改定では、在宅医療のうち、複数の同一建物居住者に対して同一日に訪問診療などを行った場合の点数を大幅に引き下げました。この見直しについて、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会)は、▽在宅患者を紹介する業者との取り引きの是正(集合住宅患者を紹介する代わりに、医療機関からリベートを受けるなど)▽効率的な「複数患者への同一日の訪問診療」の評価をコストに見合ったものとする▽訪問診療の対象と考えられない(徒歩で医療機関を受診できるなど)患者への対策―という3つの目的があったと整理しています。

2014年度の前回診療報酬改定では、同一建物に居住する複数の患者に同一日に訪問診療を行った場合などの点数が大幅に引き下げられた
2014年度の前回診療報酬改定では、同一建物に居住する複数の患者に同一日に訪問診療を行った場合などの点数が大幅に引き下げられた

 こうした見直しに対し、在宅医療現場や高齢者向け住宅からは「訪問診療が行えなく(行われなく)なってしまう」との悲鳴が相次いだため、厚労省は、在宅医療の見直しの影響を早急に調査したものです。

厚労省は、調査結果から在宅医療に大きな変化なしと判断

 検証調査の結果からは、次のような状況が明らかになりました。

(1)訪問診療を行っている居宅・施設数・患者数は横ばい、またはやや増加しており、在宅医療の提供状況に大きな変化はない

2014年度改定の前後で、訪問診療を行った患者数は横ばいまたは増加している
2014年度改定の前後で、訪問診療を行った患者数は横ばいまたは増加している

2014年度改定の前後で、訪問診療を行った居宅・施設数は横ばいまたは増加している。
2014年度改定の前後で、訪問診療を行った居宅・施設数は横ばいまたは増加している。

(2)同一建物の患者では診療に要する時間が短い(患者1人当たり診療時間の中央値は、同一建物は約7.5分、同一建物以外は約19分)

患者1人当たりの診療時間は、同一建物以外に居住する患者のほうが、同一建物に居住する患者よりも長い
患者1人当たりの診療時間は、同一建物以外に居住する患者のほうが、同一建物に居住する患者よりも長い

(3)同一建物と同一建物以外では、患者に提供している医療内容に差がある(「健康相談」「血圧・脈拍の測定」「服薬援助・管理」のみの患者は同一建物では約55%、同一建物以外では約40%)

在宅患者に提供している医療内容を見ると、「人工呼吸器の管理」などもあるが、「健康相談」「血圧・脈拍の測定」「服薬指導・管理」が多く、この3つのみの患者は同一建物居住者で多い
在宅患者に提供している医療内容を見ると、「人工呼吸器の管理」などもあるが、「健康相談」「血圧・脈拍の測定」「服薬指導・管理」が多く、この3つのみの患者は同一建物居住者で多い

(4)患者紹介の契約があると回答した診療所は、改定前後で1.3%から0.2%に減少した(病院は改定前後ともにゼロ%)

患者紹介契約をしている診療所は、改定後に減少した(病院は改定前からゼロ)
患者紹介契約をしている診療所は、改定後に減少した(病院は改定前からゼロ)

(5)患者紹介契約について無回答だった医療機関が、改定後で増加しているが、無回答の医療機関が同一建物の居住する複数の患者に同一日に訪問を行っている割合は全体よりも低い

(6)集合住宅における訪問診療・往診は進んでいる(改定前後で、訪問診療などを行っている医療機関は、有料老人ホームで平均1.6か所から1.8か所に増加、サービス付き高齢者向け住宅で1.4か所から1.7か所に増加)

(7)改定後に訪問診療等を行っている病院・診療所が減ったと答えた集合住宅は59 施設で、調査全体の10%以下

(8)(7)で減ったと答えた集合住宅のうち、「引受先の目処が立っていない」と回答したのは1 施設だけで、それ以外の施設には必要な医療を確保できる引受先の目処がついている

 こうした状況を受け、厚労省保険局医療課保険医療企画調査室の三浦明室長は「速報と同様に、改定前後で大きな変化はない」とし、必要な在宅医療提供が行われていると判断しています。

支払側は「訪問診療の対象外患者への対策強化」を要望

 しかし、白川委員は「訪問診療の対象と考えられない患者への対策」が不十分であり、16年度の次期診療報酬改定に向けて議論していく必要があると指摘しています。

 例えば(3)を見ると、「健康相談」「血圧・脈拍の測定」「服薬援助・管理」のみの患者が一定程度いますが、こうした患者に本当に在宅医療が必要なのか疑問が生じます。

 また、訪問診療を行っている理由を見ると、「身体機能の低下で、介助があっても通院が困難」な患者が最も多くなっていますが、中には「通院が困難なわけではないが、患者が希望したから」(同一建物で1.1%、同一建物以外で1.2%)、「通院が困難なわけではないが、患者が居住する施設が希望したから」(同一建物で3.6%、同一建物以外で1.0%)という患者もいることが分かります。

訪問診療を行っている理由は、「身体機能が低下し通院が困難」が最も多いが、一部に「通院が困難ではないが、患者・施設が希望した」というケースもある
訪問診療を行っている理由は、「身体機能が低下し通院が困難」が最も多いが、一部に「通院が困難ではないが、患者・施設が希望した」というケースもある

 14年度改定のいわゆる医療課長通知(14年3月6日発出)では、「継続的な診療の必要のない者や通院が可能な者に対して安易に算定してはならない」とされ、「例えば、少なくとも独歩で家族・介助者等の助けを借りずに通院ができる者などは、通院は容易であると考えられるため、在宅患者訪問診療料は算定できない」ことが明確にされました。

 こうした規定の厳格な適用が行われる可能性もあり、在宅医療現場や集合住宅などでは適正な在宅医療提供に留意しなければいけません。

 なお、診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は、(3)の結果に関連して、在宅医療の対象患者には「健康相談」などが中心の患者と、「人工呼吸器の管理」などを行う患者とにグルーピングできると指摘し、「次期改定で患者の重症度などを勘案した評価」の導入が必要と訴えています。

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