通所介護、安定経営の条件は「事業規模拡大」と「利用時間・回数の増加」―福祉医療機構



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 老人デイサービス(通所介護)事業所の安定経営には、(1)大規模化(2)長時間のサービス提供(3)利用率の向上(4)年間サービス提供日数の多さ―の4点がポイントとなる―。このような分析結果を、福祉医療機構(WAM)が9月30日にリサーチレポートとして公表しました。

通所介護事業所は13年度から4倍に増加し、競争が激化

 通所介護の利用は急激に増加しており、2013年度末時点で利用者数は173万人で、「介護保険の利用者全体のおよそ3人に1人が通所介護を使っている」計算になります。このため、通所介護事業所数も増加を続けており、13年度末時点で3万9196か所となりました。

介護保険創設直後の2001年(平成13年)度に比べて、通所介護の利用者、事業所ともに大幅に増加している
介護保険創設直後の2001年(平成13年)度に比べて、通所介護の利用者、事業所ともに大幅に増加している

 介護保険創設直後の01年度末時点から比べると、利用者数は2.6倍、事業所数は4倍になっているため、「競争」が激化していると考えられます。また15年度の介護報酬改定は「全体で2.27%」という大幅なマイナス改定となり、通所介護全体を取り巻く環境も厳しくなっています(関連記事はこちら)。

 こうした状況を踏まえてWAMは、通所介護事業所の安定経営のポイントについて研究しました。

 ところで、通所介護には「一般型」と「認知症対応型」(認デイ)がありますが、WAMは「収益性を見る指標である経常増減差額比率には、両者に大きな差はない」と分析しており、今回の研究は主に「一般型」に的を絞っています。

年間のサービス提供日数を多くすることも経営安定化のポイント

 一般型の経営状況をさまざまな角度から分析すると、次のような状況が分かりました。

▽他事業との併設をしている施設のほうが、通所介護単独の施設よりも労働生産性が高く、労働分配率は低くなっており、併設型施設のほうが効率的な経営を行えている(特に規模の大きな介護保険施設などとの併設が効率的)。

▽事業規模が大きくなるほど「収益性」の指標となる経常増減差額比率が大きい

通所介護事業所の経営状況を規模別に見ると、規模が大きくなるほど、経常増減差額比率が高くなっており、収益性が高いことが分かる
通所介護事業所の経営状況を規模別に見ると、規模が大きくなるほど、経常増減差額比率が高くなっており、収益性が高いことが分かる

▽事業規模が大きくなるほど利用率が高く、年間実施日数も多い

▽サービス提供時間の長い施設のほうが、経営効率が高い(解釈が難しいが、従事者1人当たり人件費は高いものの、収益が大きいため人件費比率は低く抑えられている)

通所介護事業所をサービス提供時間別に見ると、長時間のサービス提供を行っている事業所ほど、経常増減差額比率が高くなっており、収益性が高いことが分かる
通所介護事業所をサービス提供時間別に見ると、長時間のサービス提供を行っている事業所ほど、経常増減差額比率が高くなっており、収益性が高いことが分かる

▽1日平均利用者数、利用率ともに、黒字施設(利用率73.2%)のほうが赤字施設(利用率66.6%)に比べて高いが、1人1日当たりサービス活動収益には大きな差はない

通所介護事業所では、利用率が高いほど黒字施設の割合が顕著に高くなっていることが分かる
通所介護事業所では、利用率が高いほど黒字施設の割合が顕著に高くなっていることが分かる

▽年間サービス提供日数が長い施設ほど、経常増減差額比率が顕著に高くなる

年間実施日数の多い通所介護事業所のほうが、黒字事業所の割合が高い傾向にある
年間実施日数の多い通所介護事業所のほうが、黒字事業所の割合が高い傾向にある

 こうした分析結果を基に、WAMは通所介護事業所を安定的に経営するためには(1)大規模化(2)長時間のサービス提供(3)利用率の向上(4)年間サービス提供日数を多くする―ことが必要と提言しています。

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