社会福祉法人、「人員確保」「設備投資」「事業展開」に注力することが経営安定化の鍵―福祉医療機構



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 社会福祉法人のうち、設立年数の短い法人では「人員確保リスク」を、設立年数の長い法人では「設備投資リスク」や「事業展開リスク」を意識する必要がある―。このような分析結果を、福祉医療機構(WAM)が29日にリサーチレポートとして公表しました。

社会福祉法人、13年度は26.2%が赤字

 WAMの調査によると、2013年度において社会福祉法人の26.2%が赤字経営で、09年度に比べて赤字割合は13.5ポイントも増加しています。15年度の介護報酬改定では、全体として2.27%のマイナス改定となったことや、介護事業や保育事業へは株式会社などの参入が増加していることから、社会福祉法人の経営はますます厳しくなると予想されます。

社会福祉法人では、赤字法人の割合が年々高まる傾向にある
社会福祉法人では、赤字法人の割合が年々高まる傾向にある

 こうした事態を踏まえてWAMは、赤字法人と黒字法人の差を分析し、今後の社会福祉法人経営に向けた提言を行っています。

設立から日の浅い法人では「人員確保」が最重要課題

 まず設立から5年未満の、比較的年数が短い社会福祉法人について分析すると、赤字法人ではサービス活動収益が2億3254万5000円なのに対し、黒字法人では2億5109万6000円であったことが分かりました。この背景には、「施設や事業所が本格稼働していない」可能性が考えられます。WAMは本格稼働できない原因として「必要な人員を確保できていない」ことを挙げています。

赤字の社会福祉法人と黒字の社会福祉法人を比べると、赤字法人ではサービス活動収益が小さい
赤字の社会福祉法人と黒字の社会福祉法人を比べると、赤字法人ではサービス活動収益が小さい

 また赤字法人では、黒字法人に比べて費用が高くなっている点にも注意する必要があります。

 WAMはこうした状況から、設立から年数の経っていない社会福祉法人の経営リスクとして「人員確保リスク」を挙げました。福祉業界では人員確保が大きな課題となっており、WAMは民間企業などと同様に▽就職サイトへの登録▽福祉人材センターやハローワークの活用▽専門学校や大学などの教育機関との連携強化▽キャリアパスの整備や研修制度の充実―を行う必要があると提案しています。

設備投資と事業展開を積極的に行い、収益規模の拡大が重要

 また社会福祉法人では、設立から年数が経つほど赤字法人の割合が増加する傾向にあります。

社会福祉法人では、設立から年数が経つにつれ、赤字法人の割合が高まる
社会福祉法人では、設立から年数が経つにつれ、赤字法人の割合が高まる

 さらに詳しく分析すると、「順調に収益を伸ばしている」法人と、「設立当初の収益規模のまま運営を行っている」法人の二分できることが分かります。

 前者の「収益を伸ばしている」法人では基本財産も大きい(逆に後者では小さい)ことから、WAMでは「収益を伸ばしている法人では、大規模修繕や増改築、事業展開などを積極的に行っている」のではないかと推測しています。さらに、設備投資を行わない場合には、施設の老朽化や、サービスとニーズの乖離が生じ、「集客が弱くなる」とも見ています。

 こうした点を踏まえてWAMは、設立から年数が経過した社会福祉法人の経営リスクとして「設備投資リスク」を挙げています。

 また、▽介護▽老人福祉▽保育▽障害福祉―の各事業を総合的に展開している法人と、単一の事業しか行っていない法人を比較すると、「収益規模が小さい法人では単一事業、収益規模が大きくなるにつれ複数事業を行っている」傾向があることも分かりました。

サービス活動収益が小さい法人では、単一事業を展開するところが多い
サービス活動収益が小さい法人では、単一事業を展開するところが多い

 ここからWAMは、設立から年数が経過した社会福祉法人のもう一つ経営リスクとして「事業展開リスク」を挙げています。

 さらに複数事業を展開する法人を詳しく見ると、「サービス活動収益の50%以上を単一事業収益で占めていない」法人(主たる事業のない法人)では赤字割合が高く、一方、「サービス活動収益の50%以上60%未満を単一の事業で占める」法人(主たる事業の収益が50%以上60%未満である法人)では赤字割合が少ない状況です。

「主たる事業の収益が50-60%」という事業構成の社会福祉法人で、赤字の割合が小さい
「主たる事業の収益が50-60%」という事業構成の社会福祉法人で、赤字の割合が小さい

 つまり、「主たる事業を経営の基盤としながら、それ以外の分野を実施する形態」が経営上効果的であることが分かります。

 こうした状況を踏まえてWAMは、▽積極的な設備投資▽複数事業への展開―を行うことを提案。小規模法人では「他法人との協働」も1つの手であると見ています。

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