医療費適正化対策は不十分、レセプト点検の充実や適正な指導・監査を実施せよ―会計検査院



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 2018年度(平成30年度)に予定される第2次医療費適正化計画の実績評価に当たっては、特定健診が医療費適正化に及ぼす効果などを十分に評価できるよう、システムの改修を行う必要がある。また保険者におけるレセプト点検を充実し、さらに医療機関に対する指導・監査を適正に実施するよう、地方厚生局などを指導する必要がある―。

 このような提言を会計検査院が16日に行いました。厚生労働省は、この提言内容を踏まえて医療費適正化対策をこれまで以上に強化すると考えられます。

特定健診などの実施状況が不十分、実績評価にも問題あり

 厚生労働省は、医療費の適正化に向けて「都道府県による医療費適正化計画の策定と評価」「レセプトの審査」「医療機関の指導・監査」などの取り組みを進めています。

 しかし今般、会計検査院がこうした取り組みについて調査を行ったところ「必ずしも十分に行われていない」実態が明らかになったため、安倍晋三首相らに宛てて提言を行いました。

 会計検査院は、内閣から独立した憲法組織(日本国憲法第90条第1項)で、国の収支決算を検査し、国会に報告する権能を持っています。また、検査の中で「会計経理に関し法令に違反し、または不当であると認める事項がある」場合」「制度又は行政に関し改善を必要とする事項があると認める」場合などには、必要な検査を行った上で主務官庁などに改善を求めることができます(会計検査院法第30条の2ほか)。今回の提言もこの権限に基づいて行われたもので、政府は、提言を踏まえた施策の改善に取り組むことになります。厚労省も、今後、医療費適正化対策をこれまで以上に強化すると見込まれます。

 まず高齢者医療確保法では、5年ごとに「5年を1期とした医療費適正化計画」を策定するよう、国と都道府県に指示しています。第1期計画は2008-12年度を、第2期計画は13-17年度を対象としています。具体的には、▽保険者による特定健診・特定保健指導の推進▽療養病床の再編成(第1期計画)、医療機関の機能分化・連携、在宅医療・地域ケアの推進、後発医薬品の使用促進▽重複頻回受診の是正、レセプトの審査・点検の充実などの支援・促進―などを実施することとしています。

医療費適正化計画には、「特定健診・特定保健指導」や「医療機関の機能分化・連携」「レセプト点検の充実」などに関する事項を盛り込む
医療費適正化計画には、「特定健診・特定保健指導」や「医療機関の機能分化・連携」「レセプト点検の充実」などに関する事項を盛り込む

 これについて会計検査院は次のような問題点があると指摘しました。

(1)生活習慣病予防対策である特定健診(いわゆるメタボ健診)の実施率は、第1期計画の最終年度である12年度平均で46.2%にとどまっており、目標の70%以上を相当下回っている

(2)保険者全体における特定保健指導の実施率は、第1期計画の最終年度である12年度平均で16.4%にとどまっており、目標の45%以上を相当下回っている

2012年度(平成24年度)における特定健診実施率は46.2%、特定保健指導は16.4%にとどまっている
2012年度(平成24年度)における特定健診実施率は46.2%、特定保健指導は16.4%にとどまっている

(3)医療療養病床から介護保険施設などへの転換促進を目的とした「病床転換助成事業」の実施状況を見ると、第1期計画期間中は3887床で、実施率は、同期間中の転換見込病床数2万5500床の15.2%にとどまっている。また、第2期計画期間中の全都道府県における転換病床数は、25年度279床、26年度171床にとどまっており、ほとんど実施されていない

第1期医療費適正化計画に盛り込まれた「療養病床から介護保険施設への転換」助成について、実施率は15.8%にとどまっている
第1期医療費適正化計画に盛り込まれた「療養病床から介護保険施設への転換」助成について、実施率は15.8%にとどまっている

(4)第1期計画の実績に関する評価について、厚労省は「メタボ該当者・予備群では、それ以外の者に比べて年間平均総医療費が約9万円高い」「特定健診などの効果は約250億円」と推計しているが、推計は生活習慣病関連疾患(糖尿病・高血圧症のほか、虚血性心疾患や脳血管疾患を含む)に対象疾患を限定して算出されたものではないなど、いくつかの問題がある

(5)平均在院日数の短縮について、厚労省は「第1期計画の目標値は概ね達成された」としているが、平均在院日数の短縮の背景が不明確であり、療養病床の再編は十分に進んでいない

保険者によるレセプトの2次点検、効率的に実施されていない

 またNDB(ナショナルデータベース)システムの運用状況と生活習慣病予防対策の効果分析については、多くの保険者の特定健診等データをレセプトデータと突合することができない状況となっており、システム構築の所期の目的を十分に達成していないと指摘。その上で、18年度に予定されている「第2期計画の実績評価」において、特定健診や特定保健指導が医療費適正化に及ぼす効果を適切に評価することができないと述べています。

保険者の特定健診データと、NDBのデータとを突合できないケースが一定程度ある
保険者の特定健診データと、NDBのデータとを突合できないケースが一定程度ある

 一方、レセプトの審査・点検については、2次点検(保険者による点検)の実施に当たり、▽1次審査(審査支払機関による審査)におけるコンピュータチェックの具体的な審査内容について十分に把握していない▽1次審査における査定の具体的な事由、再審査で原審どおりとした具体的な理由について十分に把握していない―などの非効率があると指摘。

 さらに、医療機関等に対する指導については、地方厚生局などで「集団的個別指導」および「個別指導」を指導大綱などに即して適切に実施していない事例が見受けられたとしています。

個別指導が実施されていない医療機関などの選定事由は「高点数」が多い
個別指導が実施されていない医療機関などの選定事由は「高点数」が多い

医療機関の指導・監査、大綱に沿って適切な実施を

 こうした状況を受け検査院は、医療費適正化対策を進めるに当たって次のような改善を行う必要があると提言しています。

▽医療費適正化計画については、各種の施策を着実に実施するとともに、医療費適正化計画の実績評価を適切に行うべきである

 特にNDBシステムについては、18年度に予定される第2期計画の実績評価に向けて、特定健診などが医療費適正化に及ぼす効果を、データを活用して適切に評価できるようにするため、「データの不突合の原因などを踏まえたシステムの改修」などを実施すべきである

▽レセプトの審査・点検については、「1次審査・再審査における具体的な審査内容、審査結果の理由などを可能な限り明確に保険者などに伝えるよう審査支払機関に周知する」とともに、「1次審査の内容をベースに2次点検の内容を適宜見直すなど、2次点検を一層効率的かつ効果的に行うよう保険者などを指導する」べきである

▽医療機関等に対する指導は、地方厚生局などに対して「指導大綱などに即して適切に実施する」よう改めて指示するとともに、実施体制を一層整備すべきである

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