介護事業の経営実態調査、「1年分の収支把握」や「定点調査」などを検討―介護給付費分科会



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 2018年度の介護報酬改定に向けて、介護事業経営実態調査の手法を見直す議論が始まりました。25日に開かれた社会保障審議会の介護給付費分科会には、厚生労働省から「1年分の収支状況を調査する」「同一事業所の複数年の収支を把握する」「法人全体の状況を把握する」といった論点が示されています。

 今後、分科会や下部組織の「介護事業経営調査委員会」で調査設計を行い、16年度に経営実態調査が実施される予定です。

6月25日に開催された、「第123回 社会保障審議会 介護給付費分科会」
6月25日に開催された、「第123回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

2年分の概況調査と1年分の実態調査を組み合わせる提案

 診療報酬改定と同じく、介護報酬改定についても介護事業所や介護施設の経営状況を調べ、それを改定内容などに反映させます。

 しかし現在、介護事業の経営実態調査に対しては「改定前年の3月だけを対象とした単月調査で季節変動などが大きい」「複数のサービスを一体的に提供する事業所も多く、そこではコストの按分が適切に行えていない」「制度創設後間もないことから稼働率が低調なサービスについては、ほかのサービスと別に扱うべき」などの課題が指摘されています。

 そこで厚労省は、18年度の次回改定に向けて経営実態調査の制度設計を見直すことを考えています。

 まず、季節変動などの要因を排除するために「1年分の収支状況を調査する」ことが考えられます。

 また、介護報酬改定の影響を適切に把握するために「同一事業所の複数年の収支状況を把握する」ことも必要でしょう。

 さらに、より多くのデータを集めるために「現在の介護事業経営概況調査も行う」ことが望ましそうです。

 こうした要素を組み合わせ、厚労省老健局老人保健課の迫井正深課長は次のような見直しイメージを示しました。

(1)2014年(改定前)と15年度(改定後1年目)の収支について、同一事業所を対象とした介護事業経営概況調査を行う。これにより「定点調査」が可能となり、15年度改定の影響を把握することができる。調査結果は16年度に集計し報告する。

(2)16年度(改定後2年目)の収支について、介護事業経営実態調査を行う。これによって18年度改定に最も近い経営実態を把握できる。調査結果は17年度に集計し報告する。

 しかし、この提案では(1)の概況調査と(2)の実態調査の客体が異なるため、厳密な比較分析は難しくなります。そこで鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は「同一事業所に2年分、3年分のデータを出してもらったほうが、改定の影響などを把握できるのではないか」と指摘しました。

 この点、迫井課長は「介護事業所は医療に比べて小規模な所も少なくなく、均一性が少ない。小規模な事業所に過去数年分のデータ収集を求めるのは大きな負担なのではないか。事業所に回答してもらうための期間も十分に取らなければならない」と述べ、鈴木委員の考えが介護事業所の実情に合っているのか、疑問を投げ掛けています。

 一方、東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)や村上勝彦委員(全国老人福祉施設協議会副会長)らは、迫井課長の提案した「1年分の収支把握」に賛同しています。

委員は「キャッシュフロー把握」を求めているが…

 また迫井課長は、経営実態調査の見直しに関して次のような論点も示しました。

▽財務諸表の活用をどう考えるか

▽法人全体の状況を把握することをどう考えるか

▽介護報酬以外の家賃や管理費などを含んだ事業全体の収取把握をどう考えるか

▽法人税の課税法人と非課税法人とで、税額控除前の収支差率把握をするのでは不公平があることをどう考えるか

▽回収率・有効回答率を上げるために、どのような方策があるか

 これに対し、鈴木委員や東委員、村上委員からは「借入金の元本返済は介護事業所の経営にとって大きな影響を及ぼす。収支だけを見るのではなく、キャッシュフローも見て経営状況を判断してほしい」との要望が出されました。

 しかし介護事業所の規模などを考慮すると、すべての事業所にキャッシュフロー計算書の提出を求めるのは難しいかもしれません。こうした点については、今後、介護事業経営調査委員会などで具体的な検討が行われる見込みです。

 また「法人単位の収支把握」や「介護報酬以外を含めた全体の収支把握」については、委員から「介護事業の調査でそこまですべきだろうか」といった消極的な意見が相次ぎましたが、堀田聰子委員(国際医療福祉大学大学院教授)は「実態調査の中では難しいだろうが、別の調査研究事業などで介護事業所の安定経営に向けた調査は行う必要がある」と述べています。

 なお「処遇改善状況調査」については、21日の「介護事業経営調査委員会」に示された調査票案などを一部修正(勤続1年未満の職員数を詳細に把握する)したものを了承しています。この調査は、今年10月に実施され、結果は年度末(16年3月)に報告されます。

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