団塊ジュニアが65歳となる35年を見据え、「医療の価値」を高める―厚労省、保健医療2035



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 20年後の2035年に向けて医療提供者の技術や、医薬品の効能などの「医療技術評価」を導入し、診療報酬点数に反映させることなどを通じて「保健医療の価値」を高めていく必要がある―。

 塩崎恭久厚生労働相が設置した「保健医療2035」策定懇談会が、このような提言(保健医療2035)をまとめました。

 いわゆる団塊の世代が75歳以上となる「2025年」をターゲットにした医療・介護改革論議が進んでいますが、その際の「団塊ジュニアが65歳を迎える2035年」に向けて、医療の姿を見据えた内容となっています。

医療の価値向上のため、費用対効果評価の導入を

 35年には▽少子高齢化や人口減少がさらに進む▽ICTの技術が発展する▽グローバル化が進展する―ことなどが予想されることから、懇談会では「新たな価値やビジョンを共有し、イノベーションを取り込み、システムとしての保健医療の在り方を転換しなければならない」と指摘し、次の3つビジョンを打ち出しました。

(1)保健医療の価値を高める(リーン・ヘルスケア)

(2)主体的選択を社会で支える(ライフ・デザイン)

(3)日本が世界の保健医療をけん引する(グローバル・ヘルス・リーダー)

 (1)では「保健医療システムへの投入資源に対して、人々が得られる価値を最大化する」ため、「価値の高いサービスをより低コストで提供する」ことが必要と強調しています。

 目指すべき姿としては、「最善の質と適切な量の保健医療が、必要な人すべてに最適なタイミングと適切な価格、多様なアプローチで提供される」「資源のインプット量ではなく、患者にとっての価値を主眼とした評価体系を日本が確立し、世界標準となっている」「保健医療のベンチマーキングと情報開示が進み、ケアの選択肢が大幅に多様化している」ことなどが掲げられました。

 さらに、こうしたあるべき姿を実現するために、次のような取り組みを行うよう求めています。

▽医療提供者の技術、医療用品の効能などの医療技術評価を導入し、診療報酬に反映する

▽医療機関のサービスの費用対効果の改善や、地域医療の中で果たす機能の見直しなど、医療提供者の自律的努力を積極的に支援する

▽医療機関や治療法の患者による選択と、その実現を支援する体制を強化する

 前者では、「16年度の次期診療報酬改定での一部導入を視野に入れながら、費用対効果評価の仕組みを制度化・施行する」ことや、「保険料や税金1円当たりの効果・価値を高め、35年までに『より良い医療をより安く』という価値観へ転換する」こと、技術評価を行う専門スタッフを確保することなどを求めています。

 費用対効果評価に当たっては、英国で導入されているQALYなどをそのまま移入するのではなく、時代環境に応じた「患者の総合的な価値に関する指標」を定めることを提案しました。現在、中央社会保険医療協議会を中心に費用対効果評価の試行導入に向けた検討が進められており、今回の提言が後押しとなりそうです。

 一方、患者による選択を可能とするために、「自分の手術にはどのようなリスクがあり、死亡・合併症がどのくらいの確率で発生するのか、どういった治療法や服薬の組み合わせが現状では最善なのか」などの情報を入手できるようにする体制を構築することも求めています。

 なお、GHCでは「医療の価値」に従来、着目しており、質を上げ、かつコストを削減するための支援を積極的に行っています(関連サイトはこちら)。

「医療の価値」の方程式
「医療の価値」の方程式

地域における保健医療政策人材の育成を

 医療の価値を上げるために、懇談会は「地域主体の保健医療に再編する」必要があるとし、次のような取り組みを行ってはどうかとも提言しています。

▽地域の状況やニーズに応じた保健医療を計画するために、行政、医療従事者、保険者、シビル・ソサエティー(市民組織)、住民による制度横断的な地域独自の意思決定の場の構築

▽地域包括ケアへの対応、地域医療構想の実現に向けた保健医療政策人材の育成

▽都道府県による保健医療関連のデータ突合に基づく病床・病院機能の再編の促進

▽保健医療の地域差を分析した上で、都道府県の努力の違いに起因する要素を、都道府県に財政責任を担わせる仕組みの導入

▽地域ごとのサービス目標量を設定し、不足している場合の診療報酬の加算、過剰な場合の減算などの仕組みの導入

 また、将来的に医師偏在などが続く場合には、「保険医の配置・定数の設定」や「自由開業、自由標榜の見直し」なども検討すべきと、非常に踏み込んだ提言も行っています。

疾病に応じた患者負担割合の検討も要請

 優れた医療を確保するためには、相応の財源も必要となります。しかし、それは「保険料」「公費(税金)」「患者負担」の組み合わせで賄うしかありません。

 この点については、次のような考え方を提示しました。

 まず患者負担については、後期高齢者に代表される「年齢によって軽減される仕組み」について、若年世代との負担の均衡や、世代内の均衡などを踏まえて検証する必要があるとしました。ほかにも、「軽度の疾病では負担を高くし、重症の場合に負担割合を低くする」仕組みなども検討するよう要請しています。

 また保険料については、公平性を確保するために、▽所得だけでなく資産も勘案する▽リバースモゲージ(自宅などを担保にし、死後に負担分を精算する仕組み)を検討する―ことが必要と述べています。

 さらに、「扶養の有無に応じた負担の公平性」を打ち出し、保険料を通じた少子化対策の必要性にも言及しました。

 一方、公費については、▽たばこ、アルコール、砂糖などの健康リスクにも課税する▽環境税を社会保障財源とする―などを例示し、あらゆる財源確保策を検討するよう強く求めています。

 ただし、医療費が急激に膨張する中では、国民による負担に限界が来ることは避けられないので、「定期的に全国の医療費伸びを確認し、医療費適正化計画の効果が十分でない場合には、更なる予防施策の推進や給付範囲の見直しを行った上で、新たな財源確保を寛解者と議論し、決定する仕組み(中期調整システム)を導入する」ことも提案しています。

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