特定行為研修、厚労省が詳細を通知―10月施行に向け



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 一定の研修を受けた看護師が、医師・歯科医師の包括的指示の下に行える特定行為を実施するための研修(特定行為研修)が10月1日から始まります。厚生労働省は研修施行に向けて、「保健師助産師看護師法第37条の2第2項第1号に規定する特定行為及び同第4号に規定する特定行為研修に関する省令の施行等について」を17日付けで各都道府県に通知しました。

 通知には、特定行為制度や研修の内容などが詳細に規定されています。

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経口用気管チューブの位置調節など38の特定行為

 2014年6月に成立した医療介護総合確保推進法には、看護師が医師の包括的指示を受けた上で、手順書(プロトコル)に基づいて一定の診療の補助(特定行為)を実施するための「研修」制度(特定行為研修)を創設することが規定されました(改正保助看法)。

 厚労省の検討会では、特定行為研修制度の施行に向けて、特定行為を「経口用気管チューブ・経鼻用気管チューブの位置の調整」など38項目とすることや、研修プログラムとして、315時間の共通科目(臨床病態生理学やフィジカルアセスメント、医療安全学など)と、特定行為ごとに関連の深い区分別科目を設けることなどが固められました。今回、制度の詳細を規定した通知が厚労省医政局長から出されました。

38の特定行為一覧とその概要(その1)
38の特定行為一覧とその概要(その1)
38の特定行為一覧とその概要(その2)
38の特定行為一覧とその概要(その2)
38の特定行為一覧とその概要(その3)
38の特定行為一覧とその概要(その3)
38の特定行為一覧とその概要(その4)
38の特定行為一覧とその概要(その4)
38の特定行為一覧とその概要(その5)
38の特定行為一覧とその概要(その5)
38の特定行為一覧とその概要(その6)
38の特定行為一覧とその概要(その6)

 通知では、上記の38項目を明示するとともに、特定行為を実施するための「手順書」に次のような事項を記載するよう求めています。手順書は、文書か電磁的記録で作成します。

▽看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲

▽診療の補助の内容

▽当該手順書に係る特定行為の対象となる患者

▽特定行為を行うときに確認すべき事項

▽医療の安全を確保するために、医師・歯科医師との連絡が必要となった場合の連絡体制

▽特定行為を行った後の医師・歯科医師に対する報告の方法

 看護師は患者の状態を確認し、手順書に示された病状の範囲内である場合には特定行為を行い、範囲外である場合には医師・歯科医師の判断を仰ぐこととなります。ただし、手順書に記載される患者の状態は「一般的な状態」にとどまるため、実際に手順書を適用する場面では、医師・歯科医師が「患者を具体的に特定した上で、看護師に対して手順書により特定行為を行うよう指示する」ことが必要です。

看護師特定行為、特定行為研修の概要
看護師特定行為、特定行為研修の概要

 手順書は、医療現場で医師・歯科医師が看護師などと連携して、あらかじめ作成しておかねばなりません。記載内容は上記のほかに必要な項目を追加することも可能です。

共通科目315時間と、特定行為区分ごとの科目を履修

 特定行為を実施する看護師は、事前に特定行為研修を受講することが必要です。受講対象者は「概ね3-5年以上の実務経験を有する看護師」が想定されています。

 研修では、すべての特定行為に共通する科目(共通科目)を受講した上で、特定行為の区分ごとに異なる科目(区分別科目)を受けることになります。その際、講義・演習を「通信」で行うことも可能ですが、「授業終了後、速やかにインターネットなどで添削指導を行う」などの体制確保が必要となります。

研修のうち講義や演習を通信で行うことも可能だが、具体的な管理方法などを明らかにする必要がある
研修のうち講義や演習を通信で行うことも可能だが、具体的な管理方法などを明らかにする必要がある
 

 共通科目は合計315時間で、次のような内容を学びます。

▽解剖学や病理学などを学ぶ「臨床病態生理学」45時間

▽診断学や検査学などを学ぶ「臨床推論」45時間

▽身体診察・診断学を学ぶ「フィジカルアセスメント」45時間

▽薬剤学などを学ぶ「臨床薬理学」45時間

▽悪性腫瘍・脳血管障害・急性心筋梗塞・糖尿病・精神疾患の主要5疾病の臨床診断・治療や、年齢・状況に応じた臨床診断・治療を学ぶ「疾病・臨床病態概論」60時間(主要5疾患を45時間、年齢・状況に応じた内容を15時間)

▽医療安全や医療倫理などを学ぶ「医療安全学」30時間

▽多職種による協働実践などを学ぶ「特定行為実践」45時間

 ところで、Aという特定行為を行うための研修を修了し、後にBという特定行為を行うために研修を受ける場合には、重複する科目が出てきます。この場合、履修状況に応じて、重複科目の研修の全部または一部が免除されます。さらに、特定行為研修の共通科目以外にも、▽特定看護師(仮称)養成調査試行事業における研修(10、11年度)▽看護師特定能力養成調査試行事業における研修(12年度)―の「病態生理学」「フィジカルアセスメント」「臨床薬理学」は、免除対象になると想定されています。

 また、指定研修機関が「既に特定行為を手順書に基づいて行うための能力を有している」と認めた場合にも、研修科目の一部が免除されます。

経口用気管チューブの位置調節などで実技試験を実施

 研修は、厚労相が指定した学校や病院などの「指定研修機関」で行われます。研修機関の指定は4月1日から行われ、各機関では研修カリキュラムを具体的に定め、必要な設備や指導者などの体制を敷いた上で、厚労相に申請します。

 一度指定を受けても、「2年以上特定行為研修を受けた看護師がない」場合や基準に適合しなくなった場合には、指定が取り消されます。

 研修修了後には、科目ごとに「筆記試験」「実技試験(OSCE:Objective Structured Clinical Examination)」「実習の観察評価」を行い、教育内容を修得できているかどうか評価されます。実技試験の対象となるのは、▽経口用気管チューブ・経鼻用気管チューブの位置の調整▽気管カニューレの交換▽胃ろう・腸ろうカテーテル、胃ろうボタンの交換▽膀胱ろうカテーテルの交換▽末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入▽褥瘡・慢性創傷における血流のない壊死組織の除去▽創傷に対する陰圧閉鎖療法▽直接動脈穿刺法による採血▽橈骨動脈ラインの確保―の各行為です。

 研修を修了したら、指定研修機関から看護師に「特定行為研修修了証」を交付し、研修機関はその旨を厚労相に報告します。

指定研修機関は、特定研修を修了した看護師の氏名、看護師簿の登録番号、修了した特定行為の区分などを厚生労働大臣に報告する
指定研修機関は、特定研修を修了した看護師の氏名、看護師簿の登録番号、修了した特定行為の区分などを厚生労働大臣に報告する
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