「特定行為研修を修了した看護師」のスキルアップ・地位向上に向けた協会を設立―日慢協・武久会長



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 「特定行為に係る研修を修了した看護師」は、医師等の包括的指示の下で一定の医行為(特定行為)を実施することが可能である。現在、1000名を超える看護師が特定行為研修を修了しており、技術や知識のフォローアップ、情報交換、地位向上、後進の指導などを目的とした看護師特定行為研修推進協議会(仮称「日本特定看護師協会」)を日本慢性期医療協会の中に設立し、日本看護協会や厚生労働省の医政局看護課と密接に連携していきたい―。

日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、7月12日の定例記者会見でこういった構想を明らかにしました。早ければ今秋(2018年秋)にも協議会(協会)を設立し(7月12日に設立準備会を開催)、来年初頭(2018年1月)には学会の開催も視野に入れています。

7月12日に、定例記者会見に臨んだ日本慢性期医療協会の武久洋三会長
7月12日に、定例記者会見に臨んだ日本慢性期医療協会の武久洋三会長
 

特定行為研修の修了看護師は1000名超、医療・介護現場ですでに活躍

 一定の研修(特定行為に係る研修、以下「特定行為研修」)を受けた看護師(以下、研修修了看護師)は、医師・歯科医師の包括的指示の下で、手順書に基づいて38の診療行為の補助(特定行為)を実施することが可能になります(関連記事はこちらこちら)。医師等から看護師へのタスク・シフティング(業務移管)が求められる中、極めて重要な取り組みと言え、厚労省の調べでは今年(2018年)3月末時点で1006名の看護師が特定行為研修を修了しています。

38の特定行為一覧とその概要(その1)
38の特定行為一覧とその概要(その1)
38の特定行為一覧とその概要(その2)
38の特定行為一覧とその概要(その2)
38の特定行為一覧とその概要(その3)
38の特定行為一覧とその概要(その3)
38の特定行為一覧とその概要(その4)
38の特定行為一覧とその概要(その4)
38の特定行為一覧とその概要(その5)
38の特定行為一覧とその概要(その5)
38の特定行為一覧とその概要(その6)
38の特定行為一覧とその概要(その6)
 
日慢協では、この制度発足時から特定行為研修を実施しており、これまでに119名の看護師が特定行為研修を修了しました(上述1006名の内数、関連記事はこちら)。日慢協の特定行為研修は、極めて広範で、現在(第5期より)は9区分[▼呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)▼呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)▼栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル管理)▼栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)▼創傷管理▼栄養・水分管理に係る薬剤投与▼感染に係る薬剤投与▼血糖コントロールに係る薬剤投与▼精神・神経症状に係る薬剤投与―関連]・16行為(人工呼吸管理がなされている者への鎮静薬の投与量調整、人工呼吸器からの離脱、気管カニューレ交換、PICC挿入、褥瘡等治療における壊死組織の除去、創傷に対する陰圧閉鎖療法、脱水症状への輸液補正、インスリン投与量調整など)に及びます。

こうした看護師は医療現場で活躍しており、一部の病院では「医師の包括的指示を受けて、気管カニューレのほとんどを研修修了看護師が実施し、終了後に的確な報告を実施」していたり、特別養護老人ホームにおいて「医師の包括指示の下で、脱水症状を把握し、適切に輸液管理を実施。終了後に報告を実施」している事例が目立つといいます(矢野諭副会長・多摩川病院理事長)。

7月12日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の矢野諭副会長
7月12日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の矢野諭副会長
 

特定行為研修修了看護師のフォローアップ・地位向上目指し、日看協とも連携

しかし、「医師がすべての行為を行ってしまい、せっかく身に着けた研修内容をなかなか現場で実践できない」と忸怩たる思いをしている看護師もいるようです。

武久会長・矢野副会長は「技術・知識を身につけても、使わなければ忘れてしまう」とし、研修修了看護師へのフォローアップの重要性を強調。あわせて、▼研修修了看護師の地位向上(現在は「資格」ではない)▼研修修了看護師による後進の指導—なども目指す必要があるとし、今般、日慢協の中に「看護師特定行為研修推進協議会」(仮称「日本特定看護師協会」)を設置することを決めました。協議会(協会)で研究を行い、「特定行為の拡大」に向けた取り組みも射程に入れているようです。

協議会(協会)では、研修修了看護師が積極的に上記の活動をするとともに、日慢協が全面的な支援を行います。早ければ今秋(2018年秋)にも協議会(協会)の設立総会を開き、来年初頭(2018年1月)には学会開催も視野に入れて動いているといいます。

また武久会長と矢野副会長は、日本看護協会や厚生労働省の医政局看護課との密接な連携の重要性も強調し、「日慢協主催の特定研修修了者にとどまらず、研修修了者すべてに日慢協の協議会(協会)の門戸を開く」「日看協が研修修了看護師の組織を設けた場合には、日慢協の協議会はそこに合流したい」(武久会長)旨の見解も示しました。

 
さらに武久会長は、研修修了看護師の更なる活躍に期待。とくに「ICUなどの高度急性期医療よりも、慢性期入院医療や在宅医療など、医師が少ない場面で活躍することに期待している」ことを強調。例えば、訪問看護ステーションの看護師が特定行為研修を修了し、訪問看護指示書を出した医師から包括的な指示を受けていれば、訪問の際に患者の状態が悪化していれば、指示の範囲内で必要な処置を直ちに行うことができます。

ナース・プラクティショナーには慎重姿勢、「医師の指示は必要」と武久会長

また、研修修了看護師がさらにレベルアップしていくことで、近い将来(例えば今後10年以内)には▼介護医療院では「研修修了看護師」も管理者となれる▼慢性期医療や介護現場では「研修修了看護師」の1名配置を必須とし、その代わり医師配置要件などを緩和する▼「研修修了看護師」の10名配置を、「医師1名配置」と同等と見做す―といった制度改革が行われる可能性もあると武久会長は見通します。

こう見ると、「日慢協は、『医師の指示を受けずともに一定の診断・治療を行える、例えばナース・プラクティショナー(NP)』の制度化・要請を目指しているのか」とも思われます。しかし、武久会長はこれを明確に否定。「医師の指示は必ず必要である。ここを譲ることはできない。しかし、指示の出し方にさまざまなバリエーションを持たせることが可能ではないか」とコメントしています。例えば、患者の状態(どれほど安定しているか)や看護師のスキルなどを考慮し、医師が「Aさんについて、褥瘡の管理を行う中で、壊死した組織があればそれを除去してよい。この指示は○○期間有効とする。行為終了後には適切に医師に報告することが必要である。また自身の判断可能な範囲を越えていると考えた場合には、速やかに医師に相談することが必要である」といった包括的指示を行うことで、看護師の活躍の場は相当広範になると考えられます。こうした指示は患者が比較的安定している「慢性期入院医療」や「介護」「在宅医療」の場で多くなされると想定されますが、そこでは看護師にも相当のスキルアップが求められることでしょう。
 
 

 

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