被保険者数や賃金水準の増加などで協会けんぽは8年連続の黒字―全国健康保険協会



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 昨年度(2017年度)の協会けんぽの医療分の収支は4486億円の黒字となり、8年連続の黒字決算となった。また不測の事態に備えるための準備金は2兆2573億円で、保険給付費の3.1か月分を確保できている―。

 協会けんぽを運営する全国健康保険協会が7月6日に発表した、2017年度の「協会けんぽの決算見込み(医療分)について」から、こういった状況が明らかになりました(協会のサイトはこちらこちら(概要))(2016年度の状況はこちら)。

黒字決算が続き、不測の事態に備えるための準備金は増加を続けている
黒字決算が続き、不測の事態に備えるための準備金は増加を続けている
2010年度以降、協会けんぽは8年連続の黒字決算となっている
2010年度以降、協会けんぽは8年連続の黒字決算となっている
 

収入は前年度から3.4%、協会けんぽ発足後「最大の被保険者数の伸び」を記録

 協会けんぽは、主に中小企業のサラリーマンとその家族が加入する公的医療保険です。

昨年度(2017年度)の収入は9兆9485億円で、前年度に比べて3265億円・3.4%の増加となりました。収入増の主な要因は「保険料収入」の増加(前年度に比べて3833億円・4.6%増加)で、保険料を負担する被保険者(サラリーマン本人)の増加(3.9%増)と、保険料計算のベースとなる賃金(標準報酬月額)の増加(0.6%増)によるものです。

 被保険者数の増加率3.9%は、全国健康保険協会による医療保険の運営が始まった2008年度以降、最大の増加率となっています(従前は国(社会保険庁)が政府管掌健康保険を運営していた)。これには、▼雇用環境の改善によるサラリーマンの増加(国民健康保険から協会けんぽへの流入)▼制度改正による短時間労働者の協会けんぽへの加入(同)▼主に大企業のサラリーマン等が加入する健康保険組合の解散(健保組合から協会けんぽへの流入)―の大きく3要素が考えられます。

加入者増に伴う給付費増、高齢者医療への拠出金増で、支出は4.1%の増加に

 一方、支出は9兆4998億円で、前年度に比べて4765億円・4.1%増加しました。加入者(サラリーマン本人+家族)の増加に伴う保険給付費(つまり医療費)の増加と、高齢者医療制度(75歳以上)などを支えるための拠出金等の増加によって支出が増えています。

 前者の保険給付費は、「加入者数」と「1人当たり医療費」に分解することができます。「1人当たり医療費」は医療技術の高度化などにより増加する傾向にありますが、2011年度から14年度までは、対前年度伸び率は1%台後半から2%台前半にとどまっていました。しかし、2015年度に高額な新薬(画期的なC型肝炎治療薬のハーボニーなど)が登場して対前年度伸び率は4.4%に急騰(関連記事はこちら)。その反動もあり、2016年度には低い伸び率(1.1%増)となりました(関連記事はこちら)。2017年度には、こうした急激な変動はなく、2014年度までの水準(1.9%増)に戻っています。

8年連続の黒字、不測の事態に備える準備金は2兆円を超える水準になったが、、

 この結果、2017年度の収支差は4486億円の黒字で、黒字幅は前年度に比べて500億円減少しました。

 協会けんぽは、2009年度に5000億円近い赤字決算に陥ってしまったため、財政を回復させるために▼国庫補助割合の16.4%への引き上げ▼保険料率の引き上げ(現在は10.00%)▼後期高齢者支援金計算における、段階的な総報酬割の導入(これにより後期高齢者の支援金負担、つまり支出が減少する)―などの特別措置が行われました。

 これらの特別措置や、後発医薬品の使用推進などといった協会自身の取り組み、さらには賃金水準の上昇などによって、協会けんぽの財政は2010年度から黒字に転換。2017年度にも黒字となり、8年連続の黒字決算となりました。

 なお大災害などにより「収入が大幅に減少し、一方で医療費が急増する」ような不測の事態に備えるために積み立てが義務付けられている準備金は、2017年度には2兆2573億円に増加しました。これは保険給付費などの3.1か月分に相当します。

 健康保険法では、協会けんぽに対して「保険給付費や拠出金などの1か月分」を準備金として積み立てることを求めており(法第160条の2)、この指示は現時点では、十分クリアできています。(大きく上回っている)できています。

 このように協会けんぽの財政状況は「安定している」と見ることもでき、「限界に来ている」と指摘される保険料水準の引き下げを求める声も出てきそうです。しかし、医療技術は高度化を続け、また少子高齢化がますます進行する状況に鑑みれば、財政状況の安定は「一時的なもの」と見るべきで、保険料率の引き下げは慎重に検討すべきテーマと考えられます。

賃金増に比べ、はるかに高い水準で1人当たり医療費が伸びており、協会けんぽの財政状況は未だ不安定である
賃金増に比べ、はるかに高い水準で1人当たり医療費が伸びており、協会けんぽの財政状況は未だ不安定である
 
 

 

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