見守り機器やタブレット端末の導入、8割近い特養で高評価―WAM



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 特別養護老人ホームの6割強では介護従事者の負担を軽減するためにさまざまなIT機器やロボットが導入されている。そのうち見守り機器やタブレット端末は多くの特養ホームで導入され、8割近くの施設では「導入してよかった」と高く評価している―。

 福祉医療機構が7月3日に公表した「社会福祉法人経営動向調査」(平成2018年6月調査)から、こういった状況が明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

介護人材確保の一環として「IT機器・ロボット」の活用が注目を集める

福祉医療機構は、毎年6月、9月、12月、3月の4回、社会福祉法人の経営動向を調査し、その結果を公表しています。

今般、2018年度介護報酬改定後はじめとなる、018年6月の調査が行われました。特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設)を開設する482の社会福祉法人を対象に、▼法人の経営状況▼特養ホームの経営状況▼職員の採用状況—のほか、「特養ホームへのICT機器導入状況」について詳しく調べています。

高齢化で介護ニーズが増大する一方、少子化によって介護人材の確保がますます困難となる中では、「介護現場の業務効率化・生産性の向上」が極めて重要なテーマとなっており、その一環として「ICT機器やロボットの導入」が注目されています。例えばタブレット端末やスマートフォンを用いて、より簡易に、かつ迅速・濃密な情報共有を行うことや、センサーを用いて要介護高齢者等の見守りを行うことで、介護職員等が「人でしかなしえない」本来業務に集中し、生産性を向上することが期待されるのです。

介護保険制度改革、介護報酬改定でも重視されていることは、ここで述べるまでもないでしょう。メディ・ウォッチでもこの点に焦点を合わせて経営動向調査結果を眺めてみます。

特養ホーム、もはや「IT機器・ロボット」導入が多数派

まず、特養ホームにおいてどのようなIT機器・ロボットが導入されているのかを見ると、「全く導入していない」施設は37%にとどまり、6割強の施設で何らかの機器等が導入されています。もはや「IT機器等を活用している施設」のほうが多数派な状況です。

具体的には、前述した「タブレット端末」(28%の施設で導入)や「見守り機器」(同28%)、「着圧センサー」(ベッド等からの離床状況などを把握できる、同22%)のほか、▼癒しや見守りのためのコミュニケーションロボット▼移譲介助ロボット(装着型、非装着型)▼入浴支援ロボット▼バイタルセンサー▼移動支援ロボット▼排泄支援ロボット―など、さまざまな機器が導入されています。なお、スマートフォンの導入は4%の施設にとどまっています。
WAM社会福祉法人経営動向調査(2018年6月調査)1 180703
 

見守り機器やタブレット端末の満足度は8割近い

次に「導入の目的」と「満足度」(目的が達成されたか)を見てみると、例えば次のようになっています。

【タブレット端末】
▼介護記録:86%▼職員の事務負担軽減:58%▼施設内における情報共有の迅速化:58%▼職員の労働時間の適正化:23%▼医療機関等、他事業所との情報共有の迅速化:7%―などのために導入、満足度は75%

【見守り機器】
▼職員の身体的負担の軽減:71%▼介護の質向上:43%▼職員の労働時間の適正化:14%▼業務の効率化:14%―などのために導入、満足度は79%

【移譲介助ロボット(非装着型)】
▼職員の身体的負担の軽減:94%▼介護の質向上:27%▼職員の労働時間の適正化:9%▼業務の効率化:6%―などのための導入、満足度は61%

【バイタルセンサー】
▼職員の身体的負担の軽減:73%▼介護の質向上:55%▼職員の労働時間の適正化:27%▼業務の効率化:18%―などのために導入、満足度は82%

【着圧センサー】
▼職員の身体的負担の軽減:54%▼介護の質向上:41%▼業務の効率化:12%▼職員の労働時間の適正化:9%―などのために導入、満足度は78%

 同じ機器・ロボットであっても施設によって活用方法が若干異なるようです。施設の規模や職員配置状況などとのクロス分析に期待が集まります。
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またIT機器・ロボットによって満足度には差があります。もっとも排泄支援ロボットは満足度100%ですが、導入施設がわずか2施設であり、「排泄支援ロボットこそ、特養ホームでの導入が待たれる」とは言いにくいでしょう。

導入施設数が30以上のIT機器・ロボットについて満足度を見てみると、高いほうから▼見守り機器:79%▼着圧センサー:78%▼タブレット端末:75%▼移譲介助ロボット(非装着型):61%▼コミュニケーションロボット:53%▼移譲介助ロボット(装着型):42%—となっています。

移譲支援ロボなどには「人手のほうが効率的」といった改善点も

このように、多くのIT機器・ロボットについて「導入して良かった」との評価がなされていますが、一部には「導入しないほうが良かった」との声もあります。非常に重要な意見であり、少し詳しく見てみましょう。

まず、最も満足度の高い「見守り機器」ですが、2%の施設では、▼使用方法の研修や操作方法を覚えるのに手間がかかる▼セキュリティの管理にコスト・手間がかかる―ことから「導入しないほうが良かった」と答えています。

また「着圧センサー」については、「感知してからタイムラグがある」との理由で「導入しないほうが良かった」と考える施設があります。

「移譲介助ロボット(非装着型)」では、12%もの施設が「導入しないほうが良かった」と答えており、その理由として「人手のほうが効率的にできた」ことをあげています。移譲介助ロボット(装着型)についても13%の施設が同様に答えています。

「コミュニケーションロボット」では、3%の施設が「人間的な温かみがない」として、導入を後悔しています。

ただし、こうした意見から「IT機器・ロボットなどは導入しても意味がない」と考えるのは早急でしょう。IT機器・ロボットの技術は飛躍的に進歩しており、また、こうした厳しい意見・声をもとにメーカーが改善を行っていくことも予想されます。自施設の規模や職員、入所者の状況を踏まえ、適切なIT機器・ロボットを選択し、導入を検討していくことが求められます。

なお、タブレット端末については、134施設で導入されており、導入を後悔している施設はありません。導入施設の60%では「導入して最も良かった」と評価しており、これらを例えば「一部の職員からパイロット的に導入し、状況を見て拡大していく」ことなどが円滑な導入につながりそうです。

介護従事者の負担軽減のほかに、「安全管理」や「サービス質向上」といった効果も

また、具体的に「導入して良かった」点として、例えば次のような声が上がっています。

【タブレット端末】:▼情報共有と情報管理が容易になった▼記録業務の時間が短縮した▼介護記録が画一化(標準化)された▼申し送り時間が短縮され、利用者の見守り時間が増加した▼データの分析が行えるようになった▼残業がなくなった▼データが検索しやすくなった

【見守り機器】:▼職員の業務負担が軽減した▼事故が未然に防げる

【移譲介助ロボット(非装着型)】:▼職員の負担軽減になった▼職員の腰痛予防になった

【バイタルセンサー】:▼夜勤の精神的負担が軽減した▼夜勤時の巡視が適切に行えるようになり、入所者も安眠を妨げられなくなった

【着圧センサー】:▼巡回の回数を減らすことができた▼職員の身体的・精神的負担が軽減した▼事故防止につながった▼事故が減少した

このようにIT機器・ロボット導入には、職員の負担軽減のみならず、「職員の安全確保」「利用者の安全確保」「利用者の介護サービスへの満足度向上」という効果もあることが分かります。

移譲介助ロボなどでは7割の施設が補助を活用

ところで、IT機器やロボットの導入、運用・維持には相応の必要がかかります。この点に関連して、WAMの調査では、▼タブレット端末:13%▼スマートフォン:14%▼見守り機器:59%▼着圧センサー:18%▼コミュニケーションロボット:41%▼移譲介助ロボット(装着型):71%▼移譲介助ロボット(非装着型):76%▼入浴支援ロボット:72%▼バイタルセンサー:64%▼移動支援ロボット:57%▼排泄支援ロボット:50%―で補助が行われていることが分かりました。IT機器・ロボットの導入にあたっては、「補助の対象となるか」「補助を受けるためにはどのような要件をクリアすればよいか」なども、事前に検討しておくことが重要でしょう。
WAM社会福祉法人経営動向調査(2018年6月調査)8 180703
 
 

 

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