NDB・介護DB連結、利活用促進のためデータベース改善やサポート充実等を検討—厚労省・医療介護データ有識者会議



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 NDBと介護DBの連結に向け、「データベース・データの利活用促進」「データベースの連結に当たっての技術的課題」「第3者へのデータ提供に当たっての考え方」などの議論が厚生労働省の「医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」で進められています。

 利活用を促進するためには、データベースの仕様改善や利用者へのサポート体制整備なども必要となり、費用もかさみますが、その際「利用者にも一定の負担を求めるべきか」という論点もあります。

 またデータベースを改善するに当たっては、「システム設計」だけでなく、「診療報酬・介護報酬」に関する深い知識も求められます。そういった人材を厚労省の中に配置するのか、あるいは外部人材をどのように活用するのかも、重要な論点となります。

 有識者会議では、7月にも中間とりまとめを行い、2018年秋以降に報告書をまとめ、社会保障審議会の医療保険部会・介護保険部会に報告を行います。議論の行方によっては、NDB・介護DBの根拠法(高齢者の医療の確保に関する法律、介護保険法)の改正なども提言される可能性があります。

6月14日に開催された、「第3回 医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」
6月14日に開催された、「第3回 医療・介護データ等の解析基盤に関する有識者会議」
 

「公益目的」を前提として第三者へのデータ提供を促進、利用者サポートの充実も

 医療保険レセプトと特定健康診査の情報を格納したNDB(National Data Base:医療レセプトと特定健診等情報を格納したデータベース)は医療費適正化計画の策定等に、介護保険レセプトと要介護認定の情報を格納した介護DB(介護保険総合データベース)は介護保険事業(支援)計画の策定等に用いるためのデータベースです(法律に規定)。

しかし、いずれのデータベースにも極めて重要なデータが格納されており、例えば診療報酬改定や介護報酬改定などの施策にも活用されています(運用ガイドラインに規定)。

両者は別個のデータベースですが、いわゆるデータヘルス改革の中で「医療、介護、健康データを連結し、分析可能とする」構想が持ち上がりました。例えば、「若い頃に●●の生活習慣を持ち、健診で■■と判定された人は、近く○○疾病に罹患する可能性が高い。その際には□□の治療法が有効である。また、こうした人は高齢になると▲▲により要介護状態になる可能性が高いが、その際には△△というケアが状態の維持・改善に有効である」といった知見が確立されれば、効果的かつ効率的な保健・医療・福祉(介護含む)サービスを提供することが可能になります(関連記事はこちらこちら)。

「NDBと介護DBの連結」構想に向けて、有識者会議では▼データの収集・利用目的、対象範囲▼第三者提供▼実施体制▼費用負担▼セキュリティ確保等を含む技術的課題―などに関する議論を進めています(関連記事はこちら)。

まず利用目的については、上述のように「法律」に規定されていますが、運用ガイドラインで拡大しています。法律に利用目的を規定した場合、「厳格に対応できる」(例えば不適切な申請や利用には断固とした対処が可能となる)というメリットがありますが、柔軟性に欠け、「極めて意義のある、新たな利用ニーズに応えられない」というデメリットもあります。一方、ガイドラインには柔軟性はあるものの、強制力に乏しいというデメリットがあります。有識者会議では、両者のメリットを活かすために▼運用実績を踏まえ、エッセンス(利用内容などが確立された部分)を強制力のある法律上の規定に格上げしてはどうか▼NDBと介護DBで利用目的を一定程度揃えてはどうか(現在は上述のように違いがある)—といった方向が固まりつつあります。

 
また研究者などへの第三者提供については、「公益目的」であることを必須とする点が確認されています。NDB・介護DBともに、もともとは行政による活用(医療費適正化計画、介護保険事業(支援)計画、報酬改定等の施策など)が想定されましたが、「極めて有用な大規模データであり、学術研究にも使用できないか」との要望が強く、NDBでは2011年度か第三者へのデータ提供が行われ、今年(2018年)3月末までに157件のデータ提供が行われています(介護DBについては第三者提供に向けたルール・体制の整備中)(関連記事はこちら)。

「7年間で157件(年間20件強)」というデータ提供実績について、有識者会議の構成員は「少ないのはないか」「より多数の研究に利活用されるべきではないか」と感じているようです。

6月14日の有識者会議でも、「公益目的」という大前提を踏まえた上で利活用が促進される方策を検討すべき、との見解で概ね一致。そのためには「データ利活用を申請する人や、実際の利用者へのサポート」を行うべきではないかとの意見が多数出ています。例えば松田晋也構成員(産業医科大学医学部公衆衛生学教授)は、「エクセルなどの操作方法、そもそもデータベースとは何か、これを活用して何が可能なのか、などを無料動画サイトでe-ラーニングできるような環境を整えるなどしてはどうか」「○○の分析を試みたい場合には、●●の診療報酬に着目すると良い、などの簡易マニュアル・事例集などを準備してはどうか」と具体的に提案しています。

こうしたサポートは現在でも一定程度行われており、夏以降(中間とりまとめ以降)に、より具体的に議論していく予定です。

NDB等の利活用促進のため、データベース改善や運用体制充実などを検討

 「多くの研究者がNDB・介護DBを利活用し、さまざまな研究に結び付けてほしい」との点で有識者の意見は一致していますが、利活用を大きく促進するためには▼セキュリティ面も含めた堅牢な運用体制の確保▼データベースの改善▼利用者サポートの充実▼これらを実現するための財源確保―などが必要になります。

 例えば、運用については現在、国(厚労省)が担っています。しかし「利用を大幅に進めるべき」と考えたとき、申請・提供件数が増え、それぞれのニーズに合わせた対応(迅速かつ的確(研究目的にマッチした)データ提供など)が求められる中では、▼厚労省に新たな人材を配置する▼データ抽出などの一部業務を「外部の専門組織」などへ委託する―ことなども考えなければいけません(外部委託を行った場合でも、データ管理等に関する最終責任は国が負う点では変わりなし)。

  
また、データベースそのものの構造改善や解析機能の充実、さらに上述したような利用者サポートメニューの確保なども必要になってくるでしょう。その際には、「ICT技術やシステム開発」の知識・スキルだけでなく、「診療報酬・介護報酬」などに関する知識を持ち合わせた人材の意見を十分に踏まえることが必要となります。前述のように「○○の分析には、診療報酬の●●加算に着目する必要がある」といった知識がなければ、見当違いな改善が行われてしまう可能性があるのです。厚労省大臣官房の伊原和人審議官(医療介護連携担当)は、この点を特に強調。松田構成員や石川広己構成員(日本医師会常任理事)も「現場の意見を踏まえることが極めて重要」と、伊原審議官と同様の考えを示しています。

 
さらに、こうした機能充実等を図るためには「十分な財源」を確保しなければいけません。現在は、システムの運用・データ提供などの費用はすべて国費で賄われており、NDBは年間約4億7000万円、介護DBは年間約2億8000万円となっています。

この点について山本隆一座長代理(医療情報システム開発センター理事長)は、「データを活用して研究を行い、その成果は自身や所属組織の評価につながるのであるから、申請・利活用を妨げない水準で、利用者負担を導入すべきである」旨を提案しています。

 
このように、まず「利活用をどの程度推進するべきと考えるのか、そのために機能改善がどの程度必要になるのか」を固め、そこから「運用体制をどう考えるのか」「利用者負担を求めるべきか」といったテーマを考えていくことになるでしょう。

匿名加工されたデータ同士でも紐づけは可能、今後、具体的な紐づけ手法など検討

 なお、NDBと介護DBには、患者・利用者の生データは格納されておらず、個人を特的できないように「匿名加工」されたデータが格納されています。両データベースを連結したとき「Aさんに関して、医療と介護のデータを紐づけすることができるのか」が気になります。個人を特定できないため、紐づけは困難なように思われるからです。

この点、厚労省保険局医療介護連携政策課の黒田秀郎課長は、「▼氏名▼性別▼生年月日―をもとに、共通の技術を用いて匿名加工することで、両データを紐づけることは可能」と説明した上で、今後、具体的な連結手法を検討していく考えを示しました。例えば、現在検討されている「医療保険の個人単位の被保険者番号」を活用する方法などが思い浮かびます(関連記事はこちら)。

なお、厚労省では、いわゆる医療等ID(医療等分野における識別子)の検討も進めており、この議論の行方によっては「紐づけにおける有力なツール」になる可能性もあります(関連記事はこちら)。

 有識者会議では、今後「利活用をどこまで進めるのか」「どのような改善をすべきなのか」などの大枠を「中間とりまとめ」として固め(7月予定)、その後、より具体的な論点に関する検討を行います。議論の行方によっては、上述したように「利用目的のエッセンスを法律に規定する(格上げする)」といった法改正(高齢者医療確保法、介護保険法)も視野に入ってきます。
 
 

 

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