剖検の意義は依然大きく、剖検教育の成否は「上級医」が握っている―病理学会、内科学会



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 Ai(死亡時画像診断)などの技術が進む中でも、剖検でしか検証しえない病態があり、依然として剖検の意義は大きい。遺族から病理解剖(剖検)の許諾を得るために行う説明について、研修医は「上級医の説明の場に同席して見学する」形で学ぶことが多く、剖検に関する教育の成否の鍵は上級医が握っていると言える―。

 日本病理学会と日本内科学会が6月11日に公表した「病理解剖の許諾 剖検合同アンケート」結果から、こういった状況が明らかになりました(日本内科学会のサイトはこちら)。

剖検許諾に関する指導、「上級医の説明」を見学する形が多い

剖検は、個々の症例の死因や病態などを検討することで、医師の「相互検証力」を高めるために極めて重要でが、その件数は減少傾向にあります。こうした状況について「Ai(死亡時画像診断)の普及により、剖検の必要性が低下しているのではないか」「病理医の不足が原因ではないか」「遺族から許諾を得ることが難しくなっている」などの指摘がありますが、いずれも十分な説明とは言えないようです。

両学会では、教育的側面も含めて剖検件数を増やすことが重要との認識に立った上で、まず「剖検に関する取り組みの現状」を把握する必要があるとし、「遺族へ剖検を許諾してもらう」点について研修医にどのような教育が行われているのかを明らかにするため、内科学会の認定教育施設を対象としてアンケート調査を実施しました。492施設(大学病院55施設、臨床研修指定病院である一般病院390施設、臨床研修指定病院でない一般病院47施設)から回答が得られています(日本内科学会のサイトはこちら)。

まず、病床規模別に剖検件数を見ると、当然とも思われますが「規模が大きな病院ほど件数が多い」のですが、大学病院と臨床研修指定病院で若干の相違(1000床超の臨床研修指定病院では必ずしも剖検が多いわけではない)があるようです。

【大学病院】
▼201-500床:10件以下が100%
▼501-1000床:10件以下が5.6%、11-20件が25%、21-50件が69.4%
▼1000床超:10件以下が0%、11-20件が7.7%、21-51件が61.5%、51-100件が30.8%

【臨床研修指定病院(一般病院)】
▼200床以下:10件以下が88%、11件-20件が12%
▼201-500床:10件以下が70%、11-20件が29.2%、21-50件が1.1%
▼501-1000床:10件以下が37.2%、11-20件が53.2%、21-50件が11.7%、51-100件が1.1%
▼1000床超:10件以下が33.3%、11-20件が33.3%、21-51件が33.3%

 
 次に、「遺族に剖検の許諾依頼をする」ことに研修医がどの程度関与しているのかを見ると、初期研修医(医師免許取得から2年間)と後期研修医(初期研修終了後、専門医取得を目指す専攻医)とで状況が異なり、後期研修医では「遺族に説明を行う」ケースが多くなっています。

 また大学病院と臨床研修病院とを比べると、大学病院では「後期研修医であっても自分自身で遺族に説明する」ケースが少なく、逆に「説明には立ち会うが、上級医を見学するのみで、自分自身で説明は行わない」ケースが多くなっています。両学会では「大学病院では、教員などが説明を行う頻度が高い」と見ています。
剖検アンケート(病理学会、内科学会)1 180611
 
 さらに、病理解剖に関する研修医への指導について見てみると、▼初期研修医・後期研修医ともに指導を行う病院が多く、大学病院では後期研修医へも指導を行うところが多い▼剖検件数の多い病院では、初期研修医・後期研修医ともに指導を行うところが多い―状況が伺えます。
剖検アンケート(病理学会、内科学会)2 180611
 
 指導内容としては▼病理解剖の意義▼CPC(臨床病理症例検討会)—が多く(病理解剖関連法規への指導は少数派)、また「病理解剖許諾」に関する指導については「上級医の説明の場に立ち会う」という実地指導が圧倒的多数を占めています(講義などは少数派)。
剖検アンケート(病理学会、内科学会)3 180611
 
また「病理解剖許諾」において苦労している点としては、やはり「遺族の心情への配慮」「遺族からの剖検拒否」をあげる声が多くなっています(日本内科学会のサイトはこちら)。

一方、「病理解剖許諾」を得るために行っている工夫としては、▼病院長名での「剖検お願い」の文書作成▼内科学会による「剖検の際の説明例」の活用—などが参考になるでしょう(日本内科学会のサイトはこちら)。

遺族への説明は「実地で学ぶ」しかない、剖検の意義の再確認を

両学会が、調査結果を踏まえて特筆しているのは、剖検の許諾を得るための説明力などについては「実地で身につけるしかない」といったコメントが剖検件数の言い施設からも寄せられている点です(日本内科学会のサイトはこちら)。上述のような「病院長名のお願い文書」や「学会による説明の雛形」などは参考にはなるものの、それだけで十分な説明を行えるものではなく、実際に遺族に寄り添い、その心情に配慮した上で説明を行うという経験こそが重要なようです。

一方で、「内科学会の認定教育施設(内科剖検体数10体以上、CPC5症例以上などの基準あり)になるためだけに剖検を実施している」との声が指導医クラスからも出ている点にも触れ(日本内科学会のサイトはこちら)、「剖検の意義」(体内の状態を直接確認し、形態にとどまらないさまざまな情報を手に入れられる)を再確認する必要がありそうです。上述のように研修医への指導の圧倒的多数は「上級医の説明の見学」形式(実地指導)となっており、上級医が剖検の意義を十分に理解し、研修医に伝えなければ、研修医は剖検の重要性を理解できず、剖検の必要性・重要性を遺族に適切に説明できません。これでは遺族の理解を得られず、剖検件数が増えていくはずもありません。

 
こうした結果を受けて両学会では、▼「剖検の許諾から死因説明」といった指導は上級医の見学という形で行われることが多く、剖検に関する教育の成否の鍵は指導医である「上級医」が握っている▼剖検に携わる人材の確保、費用面での支援が急務である▼剖検でしか検証しえない(Ai等ではなしえない)病院もあり、剖検とCPCの役割は依然として大きい―ことを強く訴えています(日本内科学会のサイトはこちら)。
 
 

 

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