協会けんぽ、健保組合に比べて単価の低い傷病で長期間入院する被保険者が多い―厚労省



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協会けんぽと健保組合の被保険者について、医療費の内容を分析すると、協会けんぽのほうが、▼単価の低い傷病で長期間入院する人が多い▼単価の低い傷病で外来受診する人が多い―傾向にあると推測される―。

 厚生労働省が6月11日に公表した2016年度の「健康保険・船員保険事業年報」からこういった状況が明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。

健保組合の加入者、減少が続いていたが、2016年度はわずかに増加

この年報では、健康保険(健康保険組合、協会けんぽ)と船員保険にどの程度の人が加入しているのか(適用状況)、医療費はどの程度支払われたのか、などの詳細を明らかにしています。メディ・ウォッチでは、健康保険に焦点を合わせて2016年度の状況を眺めてみます。

まず「どの程度の健康保険に加入しているのか」を2016年度の平均値(年度途中での退職や入職等があるため)で見てみると、協会けんぽでは3771万7631人(被保険者2219万3760人、被扶養者1552万3871人)、健保組合では2931万320人(被保険者1618万3538人、被用者1312万6782人)となりました。

 前年度(2015年度、平均)からの増減を見ると、協会けんぽでは84万4669人・2.3%の増加(被保険者77万158人・3.6%の増加、被扶養者7万4512人・0.5%の増加)、健保組合では18万6708人・0.6%の増加(被保険者34万4000人・2.2%の増加、被扶養者15万5292人・1.2%の減少)となりました。

協会けんぽでは2012年度以降増加が続いています。健保組合では2008年度以降減少が続いていましたが、2016年度で若干の増加となっています。

協会けんぽ・健保組合の年度別加入者数
協会けんぽ・健保組合の年度別加入者数
 

健保組合と協会けんぽ、依然として1.3倍の月給格差

 次に「健康保険加入者(被保険者)の給与(平均標準報酬月額、平均標準賞与額、平均総報酬額)」の状況を見てみましょう。健康保険の主な収入は、加入者が収める保険料です。その保険料は端的に言えば「給与×保険料率」で計算されるため、給与水準が上がれば保険財政は好転し、下がれば保険財政が厳しくなるのです。

 2016年度の平均標準報酬月額(いわば月給)、平均標準賞与額(いわばボーナス)、平均総報酬額(いわば年収)は次のようになっています。

【協会けんぽ】
▽平均標準報酬月額:28万3550円で前年度から1.1%増(男性:32万1641円・1.3%増、女性:22万4540円・0.8%増)

▽平均標準賞与額:42万8926円で前年度から0.7%増(男性:47万8016円・0.9%増、女性:35万3652円・0.3%増)

▽平均総報酬額:382万6000円で前年度から1.0%増(男性:433万円・1.3%増、女性:304万6000円・0.7%増)

【健保組合】
▽平均標準報酬月額:36万9820円で前年度から0.1%増(男性:42万954円・0.7%増、女性:26万6130円・0.2%増)

▽平均標準賞与額:111万2743円で前年度から0.6%減(男性:130万778円・0.2%増、女性:60万3423円・0.8%減)

▽平均総報酬額:551万8000円で前年度から増減なし(男性:637万円・0.6%増、女性:379万円・0.1%増)

協会けんぽ加入者の給与等の状況
協会けんぽ加入者の給与等の状況
健保組合加入者の給与等の状況
健保組合加入者の給与等の状況
 
 あくまで一般論ですが「協会けんぽには中小企業が、健保組合には大会社が加入する」という構図があります(もっとも同業集の中小企業等が総合健康保険組合を設立することも可能)。平均標準報酬月額について「健保組合」÷「協会けんぽ」の比率を見ると、徐々に格差はなくなってきているものの、全体で1.3倍程度の格差があります。
2016年度健保・船保事業年報の2の1 180611
 
また平均標準報酬月額の分布を見ても、健保組合加入者では比較的、所得の高い層に多く分布していることが分かります。
2016年度健保・船保事業年報の2の2 180611
 

協会けんぽ、健保組合に比べ「単価の低い傷病で長期入院する加入者が多い」傾向

 支出面に目を移してみましょう。まず、支出の中で最も大きなシェアを占める医療費・医療給付費(医療機関の窓口負担等を除く)について見てみると、2016年度は次のような状況です。

【協会けんぽ】
▽医療費:6兆5644億円で、前年度から2.3%増加

▽医療給付費:5兆1162億円で、前年度から2.4%増加(実行給付率は77.94%)

【健保組合】
▽医療費:4兆5169億円で、前年度から0.5%増加

▽医療給付費:3兆5254億円で、前年度から0.5%増加(実行給付率は78.05%)

協会けんぽと健保組合における年度別医療費の状況
協会けんぽと健保組合における年度別医療費の状況
 
 加入者の規模による違いなどを除去するため「1人当たり医療費」で見てみると、▼協会けんぽ(70歳未満被保険者):16万3484円(前年度から245円・0.2%増)▼協会けんぽ(70歳未満被扶養者):17万660円(同680円・0.4%増)▼健保組合(70歳未満被保険者):14万6843円(同308円・0.2%増)▼健保組合(70歳未満被扶養者):15万5016円(同382円・0.2%増)—などとなっています。

ところで、医療費を考える際には、(1)受診率(加入者のうちどれだけの割合が医療機関を受診するか)(2)1件あたり日数(1回の入院でどれだけの期間入院するか、また1つの病気・怪我で何回医療機関にかかるか)(3)1日あたり医療費―の3要素に分解することが有用です。例えば医療費が高騰している原因が、受診率にあれば「健康増進や適正受診勧奨」など患者へのアプローチを優先的に行い、1件当たり日数(とくに入院)にあれば「在院日数短縮に向けた診療報酬での対応」など医療機関へのアプローチが有用、といった具合です。

この点、70歳未満の被保険者を対象として協会けんぽと健保組合の状況を比較すると、次のような状況です。
【入院】(入院+入院時食事・生活療養費)
(1)受診率(件/人):協会けんぽ0.083 > 健保組合0.071
(2)1件当たり日数(日/件):協会けんぽ9.1 > 健保組合8.3
(3)1日当たり医療費(円):協会けんぽ5万7352 < 健保組合6万332

【入院外】(入院外+調剤)
(1)受診率(件/人):協会けんぽ5.57 > 健保組合5.42
(2)1件当たり日数(日/件):協会けんぽ1.4 = 健保組合1.4
(3)1日当たり医療費(円):協会けんぽ1万2477 > 健保組合1万2228

ここから、協会けんぽの被保険者のほうが、▼単価の低い傷病で医療機関に長期間入院する人が多い▼単価の低い傷病で医療機関の外来を受診する人が多い―ことが推測されます。

協会けんぽにおける1人当たり医療費を3要素に分解
協会けんぽにおける1人当たり医療費を3要素に分解
健保組合における1人当たり医療費を3要素に分解
健保組合における1人当たり医療費を3要素に分解
 
 

 

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