介護保険の被保険者年齢引下げなどで財源確保し、介護報酬プラス改定を―老施協



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 2019-2021年において、介護報酬の引き上げを目指すべきであり、介護費財源の確保に向けて「保険料を負担する年齢の引き下げ」も模索する必要がある。また軽度者の介護サービスのうち、介護予防訪問リハビリ、介護予防通所リハビリ、介護予防訪問看護については地域支援事業への移行を検討する余地がある―。

 全国老人福祉施設協議会(老施協)は6月1日、こういった内容を盛り込んだ提言「2019年-21年における介護分野等の経済財政運営と改革の基本方針に関する提案」を公表しました(老施協のサイトはこちら)。

介護保険の保険料をより若い世代に負担してもらい、介護報酬の引き上げを目指すべき

 我が国の経済を再生し、同時に財政を健全化するために、政府は毎年度、「経済財政運営と改革の基本方針」(いわゆる骨太の方針)を策定しています。そこでは、高齢化の進展や医療技術の高度化などにより膨張を続ける社会保障費を、我々国民が負担しきれる範囲に抑えるための方策も打ち出され、現在、「骨太の方針2018」策定に向けた検討が経済財政諮問会議を中心に進められ、近く取りまとめられる予定です(関連記事はこちらとこちら)。

 2016-18年度の3年間は「集中改革期間」と位置付けられ、社会保障関係費の伸びは「高齢化による増加分に相当する伸びとする」こととされ、具体的には「3年間で1兆5000億円程度にする」との目安が置かれました。医療・介護分野を中心に、この目安の範囲内に費用を抑えるため、さまざまな改革(例えば、現役並み所得者の介護サービスの自己負担割合を3割に引き上げるなど)が行われています。

 この点、老施協では「社会保障給付費適正化のために事業者の倒産は過去最多となり、事業の持続可能性が失われている」「高齢者増を踏まえれば、過度な給付抑制はサービスの低下を招き、ひいては国民の介護・福祉を毀損する」と指摘し、社会保障給付を「地域や将来世代への投資」と捉え、将来にわたって安心できる制度設計が必要と訴えます。

このため、2019-21年度には、社会保障費の伸びを抑える「目安」を明記せず、2020・21年度は「第二次大戦後生まれの方が少ない」という特殊要因を踏まえた給付費減にとどめるべきと提案。さらに、「介護報酬の引き上げ」を目指すべきと訴えています。

他方で、介護費財源を確保するために「ある程度の保険料負担年齢の引き下げ」を模索すべきとも提案しています。介護保険制度創設時には、「親世代の介護問題が顕在化してくる40歳以上であれば、費用負担に理解が得られる」とされ、被保険者、つまり保険料負担者が40歳以上とされました。しかし、高齢化とともに少子化が進行する中で制度の持続可能性を確保するためには、「支え手」の範囲を広げていくいことに一定の合理性があるでしょう。

もっとも老施協では、▼「介護医療保険料控除額」を増額する▼介護に要した諸経費の一定部分を「特定支出控除」可能とする―などの税制上の配慮を行い、国民の家計を支援する必要もあるとしています。

介護人材の確保に向けて、「介護職員処遇改善加算」の対象職種拡大など検討せよ

 また老施協では、介護サービス提供体制の確保にも言及。現在の介護サービス提供体制を俯瞰すると、▼都市部では人材不足による「特別養護老人ホームの空床」が発生している▼地方部では「非効率な地域密着型特養」の整備が進み、介護人材の枯渇が発生している▼サービス付き高齢者向け住宅の整備が進んでいるが、空床も少なくない―などの問題があるとし、「介護保険事業(支援)計画の見直し」(例えば、サ高住の定員増を整備計画に含め、総量規制の対象とする、など)を行うよう求めています。

ところで、財政制度等審議会では、「介護事業所・施設の経営効率化に向けて再編・統合を進めるべき」旨の提言を行っています(関連記事はこちら)。この点について老施協は、「各法人の成り立ち、地域性、サービス種別、経営状況等を踏まえない画一的な合併、統合はあり得ない」などと反論し、▼隣接地域や法人、保険者を跨ぐ場合の人員配置の考え方(緩和)▼加算配置による職員の柔軟な活躍▼休憩時間や研修時間における職員の融通—など「適時適切に横断的なサービスを提供できる体制」を確保すべきとの考えを示しています。

なお、人材確保については、厚生労働省が「ICT活用などで生産性を高め、2040年度に必要となるマンパワーを抑制できる」旨を示しています(関連記事はこちら)。この点、老施協もICT確保を積極的に進めることの必要性・重要性は認めていますが、一律は対応(例えば、ICT活用による人員配置基準の緩和と、これに伴う介護報酬の適正化)には反対。まず、▼基準配置を手厚く行っている場合に体制加算を講じる▼加算申請等を効率化する▼タブレット端末などICT機器の導入費用を支援する▼介護職員処遇改善加算の対象を他職種にも拡大する▼人材派遣業者への手数料などに制限を設ける▼新たな担い手確保のために、各種研修への助成制度を拡充する▼非正規雇用を正規雇用に転換するための支援を行う▼介護助手等について、「専門性」「資質向上」「裾野拡大」など多面的な検討を行う▼外国人介護人材の受け入れに関する費用面での支援を行う―ことなどを検討するよう要請しています。

2040年度には医療・介護分野で1065万人の従事者が必要になる(全就業者の18.8%)と見込まれるが、健康寿命の延伸によるニーズ減、ICT等活用による生産性向上によって、130万人少ない935万人(同16.5%)で済むと考えられる
2040年度には医療・介護分野で1065万人の従事者が必要になる(全就業者の18.8%)と見込まれるが、健康寿命の延伸によるニーズ減、ICT等活用による生産性向上によって、130万人少ない935万人(同16.5%)で済むと考えられる
 

軽度者サービスの一律の地域支援事業への移行には反対、サービス種類を限定すべき

 なお、従前より「介護サービスの重点化」を行い、重度者に資源を集中させるべきとの指摘があります。この観点、さらに「より広範な人材の活用」という観点から、軽度者(要支援者)の訪問・通所介護については、介護保険給付から市町村の実施する「地域支援事業」へ移行が行われ、さらに 財政制度等審議会では、「要介護1・2の生活援助サービスについても、地域支援事業へ移行する」ことなどが提案されていますこちら)。

 この点について老施協は、要支援者への訪問・通所介護の単価が下がり、事業者の撤退が進んでいると指摘し、「要介護1、2のサービスを地域支援事業へ移行することについては、地域の介護崩壊を招きかねず、一律の移行は容認できない」と強く訴えています。

一方で、▼介護予防通所リハビリ▼介護予防訪問リハビリ▼介護予防訪問看護—については、市町村事業の一環としてすでに展開されている実態も踏まえ「地域支援事業への移行が考えられる」と提案しています。

 
 
 このほか、▼特養ホームの建て替え費用を助成するとともに、会計基準を見直す▼ケアプラン作成のける利用者負担については、過度の負担増を避けるため、500円や1000円といった定額負担とする▼保険者の介護予防・重度化防止への取り組みについては、ランキング(インセンティブ交付金、保険者機能推進交付金)の前に、保険者の規模等を踏まえた前提条件の公平性を担保する▼在宅介護サービスへの総量規制を検討する―ことなども提案しています。
 
 

 

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