オンライン服薬指導の解禁、支払基金改革、患者申出療養の活性化を断行せよ―規制改革推進会議



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 一気通貫の在宅医療の実現に向けて「処方箋の完全電子化」「オンラインによる服薬指導と対面服薬指導の組み合わせ」を認めるほか、社会保険診療報酬支払基金改革の断行、患者申出療養の活性化を順次図っていく必要がある―。

 政府の規制改革推進会議は6月4日に、こういった内容を盛り込んだ「規制改革推進に関する第3次答申—来るべき新時代へ―」をとりまとめました(内閣府のサイトはこちら)。

オンライン服薬指導、処方箋電子化により、在宅での「受診から薬の授受」を可能とせよ

 規制改革推進会議(以下、推進会議)は、内閣総理大臣の諮問機関として2016年9月に発足(従前は規制改革会議、2017年7月に改組)。各省庁が設けている制度・規制について、地方自治体や民間からの視点も踏まえて、見直しが行えないかを検討し、提言しています。今般の第3次答申では、既存の制度・規制には「必要性」があることを認めたうえで、▼技術革新のスピード▼多様性—を踏まえた見直しが必要と強調しています。

 医療・介護に関連する事項としては、(1)オンライン医療の推進(2)医療系ベンチャーの支援(3)医薬品医療機器総合機構(PMDA)による審査の効率化(4)社会保険診療報酬支払基金(支払基金)の見直し(5)患者申出療養の普及―などが目立ちます。高齢化の進展(受給者の増加)と少子化の進行(支え手の減少)を踏まえ、推進会議ではIoT・AIを全面的に活用した▼医療資源の効率的な活用▼生産性の向上▼国民の健康寿命の延伸—が不可欠であり、そのための制度構造改革を訴えています。

 まず(1)のオンライン医療については、厚労省が昨年(2017年)7月に通知「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」を発出し(関連記事はこちら)、「一定の場合には初診でも遠隔診療を行える」「離島等でなくとも遠隔診療を行える」旨などを明らかにしました。その後、2018年度の診療報酬改定では、電話再診とは異なる【オンライン診療料】等を明確にしたほか(関連記事はこちらこちら)、自由診療も含めたオンライン診療全般のベースとなるガイドライン「オンライン診療の適切な実施に関する指針」がまとめられています(関連記事はこちら)。

適切なオンライン診療の普及に向けて、厚労省は2018年3月末までにガイドラインを整備する方針だ
適切なオンライン診療の普及に向けて、厚労省は2018年3月末までにガイドラインを整備する方針だ
 
 このように、厚労省はオンライン医療に関する枠組みを着実に構築してきていますが、推進会議では「国民がオンライン診療の利便性は享受するために、受診から服薬指導、薬の授受までの『一気通貫の在宅医療』を実現する必要がある」と強調。具体的には、次のような制度改革・規制改革を提言しています(関連記事はこちらこちら)。

▽オンライン診療に用いられるIoT・AIは日々進歩しており、ルールを技術革新に合わせて更新しなければ普及を妨げてしまう。またオンライン診療のガイドラインについては、実務上の細かな質疑への対応が難しい。そこで、▼技術発展やエビデンス集積状況に応じた、ガイドラインの最低「1年に1回」以上の更新▼医療関係者の実務上の細かな疑問に対応できるQ&A等の作成―を2018年度中に検討し、措置する

▽患者が職場にいながら診療を受け処方薬を受け取ることができれば、生活習慣病の重症化予防に効果的との指摘がある。「患者がオンライン診療を受診した場所(職場等)で、薬剤師が服薬指導を実施できる」よう、薬剤師法施行規則の見直しを2018年度中に検討し、2019年度の上期に実施可能とする

▽2018年度診療報酬で導入された【オンライン診療料】などについて、データを収集・解析し、エビデンスを積み上げ、成果を適切に評価することが、今後の高付加価値型診療の発展につながる。そこで、オンライン診療の一層の充実を図るために、関係学会や事業者等とも協力し、オンライン診療の安全性・有効性等に係るデータや事例の収集、実態の把握を早急に(2018年度中に)進める

▽現在の【オンライン診療料】などは、「初診から6か月は、毎月、同一医師の対面診療を受ける」ことなどが要件になっている。今後、オンライン診療の報酬上の評価を拡充し、また、「見守り」「モニタリング」などのオンライン診療の特性に合わせた包括評価や、医療従事者の働き方改革による負担軽減を進めていくために、ガイドラインの内容を踏まえ、新設された【オンライン診療料】等の普及状況を調査・検証しつつ、2020年度以降の診療報酬改定に向けて、2019年度に検討を進め、結論を得る

▽移動困難な患者に対し、薬剤師が患者宅等を訪問して服薬指導・薬剤管理等を行う「訪問薬剤管理指導制度」があるが、実働する訪問薬剤師は不足しており、当該制度の推進だけで患者ニーズに応えることは難しい。オンライン診療や訪問診療の対象患者のような、必要に迫られた地域や患者が、地域包括ケアシステムの中でかかりつけ薬剤師・薬局による医薬品の▼品質▼有効性▼安全性—についての利益を享受できるよう、2018年度中に「薬剤師による対面服薬指導とオンライン服薬指導を柔軟に組み合わせて行う」ことについて検討し、結論を得て、2019年度の上期に実施する

▽厚労省が2016年3月に策定した「電子処方せんの運用ガイドライン」では、「電子処方箋引換証・処方箋確認番号を、患者が薬局に『持参』する」モデルが定められている。しかし、電子処方箋の交付から受取までを完全に電子化し、紙のやり取りをなくさなければ電子処方箋のメリットはなく、「一気通貫の在宅医療」は実現できない。オンラインを活用した「一気通貫の在宅医療」の実現に向けて、2018年度中に当該ガイドラインを改め、電子処方箋のスキームを完全に電子化するための具体的な工程表を作成し、公表する。

 医薬品、とりわけ医療用医薬品では「重篤な副作用」を伴うものも少なくないため、薬剤師による対面での服薬指導が重要となっています。推進会議では「スマートフォンなどでも、こうした指導は可能」と考えており、今後、どういった議論・調整が行われるのか注目が集まります。

支払基金、依然として非効率であり改革を順次断行せよ

また(4)の支払基金改革は、すでに推進会議からの「提言」を受け、厚労省の「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」において、具体的な改革案をまとめています(関連記事はこちら)。しかし推進会議が「支部の統合」などを強く求めていたのに対し、検討会では「47都道府県への支部設置」を一定程度容認するなどしており、推進会議は「非効率な業務運営が継続し、審査における判断基準の明確化や統一性の確保が十分でない」と改めて強調(関連記事はこちら)。第3次答申でも、次のような改革を行うよう要請しています。

 
▽新コンピュータシステムの開発プロセスにおける内閣情報通信政策監との連携を確保する(関連記事はこちら
●例えば、以下のような事項について、2018年に基本設計を行い、2019年度に新システムを開発し、2020年秋までに総合試験を行う
・支払基金の担う▼レセプト受付▼レセプトの適切な審査プロセスへの振り分け▼審査▼支払—などの機能単位にモジュール化されていること。
・各モジュールが、標準的な接続方式(インターフェース)で統合され、必要に応じ、モジュール単位での改善等を機動的に行え、保険者自身による利用や、外部事業者への委託等が可能な仕組みとなっている
・「レセプトへの入力ミス」など、専門的審査を待たずに是正し得る箇所について、「医療機関自ら対処し得る」ようコンピュータチェック機能を提供する等の工夫
・審査機能モジュールについて、極力、多くのレセプトを効率的・集中的に処理するため、地域ごとに設置されている現在の機能を前提にするのではなく、地域差を最小化し、できるだけ同一のコンピュータシステムで処理できる範囲を拡大する
●「コンピュータチェックに適したレセプト形式への見直し」「システム刷新」を2020年度までに実施する

▽新コンピュータシステムに係る投資対効果について、2018年中に「試算」を国民に分かりやすく開示する

▽2018年度に実施するモデル(実証)事業において、支部の最大限の集約化・統合化を前提に、集約化の在り方(▼集約可能な機能の範囲▼集約化の方法▼集約化に伴う業務の在り方—など)を早急に検証し、結論を得た上で公表する。あわせて、その検証結果を踏まえた法案を2019年の国会に提出する

▽審査の一元化に向けた体制を整備する
●各支部で独自に設定しているコンピュータチェックルールについて、2018年度上期に「具体的な差異の内容」を把握し、一元化に向けた具体的な工程表を示す
●次の事項について2018年度中に検討し、結論を得る
・「データに基づき、支払基金本部で専門家が議論を行う体制を整備し、エビデンスに基づいて審査内容の整合性・客観性を担保する」仕組み
・審査支払機関の法的な位置づけやガバナンス
・審査委員会の三者構成の役割と必要性
●次の事項について、2018年度から検討を初め、2019年度に中間報告を行い、2020年度までに結論を得る
・支払基金と国保中央会等の「保険者の代行機関」としての最も効率的な在り方
・各都道府県に設置されている審査委員会の役割と必要性

▽2018年度に手数料体系の見直し(各保険者と支払い基金の間で、業務・作業に見合った価格を定める仕組み)を検討し、結論を得て、2019年までに実施する

患者申出療養、患者への周知、医療機関の負担軽減により活性化せよ

 また(5)の患者申出療養は、一昨年(2016年)4月からスタートした新たな保険外併用療養制度(保険診療と、未承認の抗がん剤などの保険外診療との併用を認める仕組み)です。「海外で開発された未承認(保険外)の医薬品や医療機器を使用したい」などの患者からの申し出を起点として、安全性・有効性を専門家の会議で確認した上で、保険診療との併用を認めるもので、これまでに「腹膜播種・進行性胃がん患者へ「パクリタキセル腹腔内投与・静脈内投与・S-1内服併用療法」など4種類が認められています(関連記事はこちらこちらこちら)。

患者申出療養を初めて実施する場合、患者は国に対して申し出を行う(臨床研究中核病院が協力、支援)
患者申出療養を初めて実施する場合、患者は国に対して申し出を行う(臨床研究中核病院が協力、支援)
前例のある患者申出療養を実施する場合、患者は臨床研究中核病院に対して「実施を希望する医療機関」で当該医療を行いたいと申し出る
前例のある患者申出療養を実施する場合、患者は臨床研究中核病院に対して「実施を希望する医療機関」で当該医療を行いたいと申し出る
 
 推進会議では、実施計画などを作成する医療機関側の負担が大きいことなどが「4種類にとどまっている」原因ではないかと分析し、次のような見直しによって制度の活性化を図るべきと提言しています。

▽「患者の気持ちに寄り添う」という制度趣旨に鑑み、患者が新たな治療を希望した場合には、安全性・有効性等が確認される限り原則として制度を迅速に利用できるよう、2018年度から具体的な運用改善策を検討し、結論を得次第、所要の措置を講ずる

▽困難な病気と闘う患者がこれを克服しようとする場合に、選択肢として患者申出療養が適切に認知され、患者が制度を容易に利用できるよう、▼制度の周知方法▼医療機関の負担軽減(Q&Aの策定、書面の簡素化、既に実施された患者申出療養・先進医療の臨床研究計画書の可能な範囲での提供など)—を、2018年度中に検討し、実施する

 
 いずれも「重要なテーマ」ですが、すでに専門家等による慎重な議論(例えば患者申出療養については中央社会保険医療協議会)が行われています。今後、推進会議の提言を踏まえ、どういった議論が展開されるのか、注目する必要があります。
 
 

 

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