2020年度中に、医療保険のオンライン資格確認を本格運用開始―社保審・医療保険部会



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 2020年度中に「オンラインによる医療保険の資格確認」について本格運用を開始する。これにより、資格確認等の事務コストが年間、保険者で約30億円、医療機関等で約50億円節減できると見込まれる。あわせて、特定健診データを保険者で連携する仕組みなどを整備し、近い将来、国民1人1人が「自分の医療費や薬剤などの情報を」を確認できるような仕組みを構築していく—。

5月25日に開催された社会保障審議会・医療保険部会で、厚生労働省からこういった方針が示されました(関連記事はこちら)。

5月25日に開催された、「第112回 社会保障審議会 医療保険部会」
5月25日に開催された、「第112回 社会保障審議会 医療保険部会」
 

オンライン資格確認を2020年度中に本格運用開始、被保険者個人単位の2桁番号も

医療保険制度は、病気やケガといった保険事故に備えて加入者(被保険者)が保険料を納め、事故に遭遇した際に、保険から給付(年齢や所得に応じて医療費の7-9割を給付、さらに高額療養費制度などによる手厚い給付も行われる)が行われる仕組みです。

医療機関側から見ると、患者が加入している医療保険に、医療費の7-9割を請求することになります(ただし事務の効率化や審査の整合性を確保するために、社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会に請求する)。このため、医療機関では窓口において、「患者がどの医療保険に加入しているのか」を被保険者証(保険証)で確認しているのです(資格確認)。

ところで、例えば「企業で働いていたサラリーマンが、退職後にも在職中の被保険者証(保険証)を返還せずに使用して診療を受ける」という事例が少なからずあります(1か月当たり30万―40万件)。この場合、医療機関は当該被保険者証を発行した保険者(健康保険組合や協会けんぽ)に請求を行いますが(社会保険診療報酬支払基金を通じて保険者に請求を行う)、その人は既に退職しているため、「医療機関への支払いが行われない」あるいは「保険者が退職者分(その人は保険料を支払っていない)の医療費を負担する」ことになってしまいます。

こうした点も考慮し、厚労省はマイナンバー制度のインフラを活用した「オンラインでの資格確認」を導入します。社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険中央会(国民健康保険団体連合会の中央組織)で全国民の資格履歴を一元的に管理し、医療機関が、患者の提示したマイナンバーカードや後述する個人単位の被保険者番号を記載した保険証をもとに、その場で「患者がどの医療保険に加入しているか」などを即時に確認できる仕組みが構築されるものです(関連記事はこちらこちらこちら)。

厚労省保険局医療介護連携政策課保険システム高度化推進室の廣瀬佳恵室長は、オンライン資格確認の導入によって、(1)(上述のような)資格喪失後受診に伴う事務コスト等の解消(2)高額療養費限度額適用認定証等の発行業務等の削減(3)特定健診結果や薬剤情報を照会できる仕組みの整備(4)保健医療データの分析の向上―などのメリットがある点を説明。あわせて、主に(1)に関連して、▼資格過誤による保険者・医療機関等の事務コストが年間80億円(保険者分が約30億円、医療機関等分が約50億円)▼医療費通知をWEBサービスに移行することによる保険者の事務コストが年間4-40億円―節減できる見通しであることを示しました。

2020年度中にオンライン資格確認を導入する
2020年度中にオンライン資格確認を導入する
 
オンライン資格確認は、2020年度中に本格運用が開始される見込みで、これに備えてシステムの設計や試行が順次進められていきます。
2020年度中に、オンライン資格確認の本格運用を開始する
2020年度中に、オンライン資格確認の本格運用を開始する
 
ところでマイナンバーカードの普及は遅れており、厚労省は「被保険者番号の個人単位での履歴管理」も行う考えです。この点、高額療養費は世帯合算が行われるため(例えば、親と子など複数の世帯員が病気やケガなどで医療機関を受診した場合、自己負担を世帯単位で合算して、高額療養費の対象とすることができる)、現在の「世帯単位の被保険者番号」をベースに、「個人を識別する2桁の番号」を付す方向で検討が進められています。これにより「世帯」と「個人」の両方を一度に把握することが可能になります。

この「個人番号の付記」は2020年度中に順次行われる見込みですが、保険者は「現在の被保険者証(旧保険証)を回収し、新たな被保険者証を交付する」などの事務が発生するため、廣瀬保険システム高度化推進室長は、旧保険証の回収まで「本人に2桁の個人番号を通知し、これを旧保険証に自署することも認める」「本人が2桁の個人番号を申告できない場合には、医療機関等は世帯単位の番号での請求も認める」などの軽減策について保険者等t調整していることを明らかにしており、「世帯谷の番号に個人単位の2桁番号を付したレセプト請求」は2021年5月から(2021年4月診療分)となる見込みです。

現在の「世帯単位の被保険者番号」に加え、「2桁の個人単位の番号」を被保険者証に記載することとなる(2020年度中)
現在の「世帯単位の被保険者番号」に加え、「2桁の個人単位の番号」を被保険者証に記載することとなる(2020年度中)
 
なお厚労省は、オンライン資格確認を発展させ、▼2020年度の特定健診データから保険者間での連携や、マイナポータル・PHR(Personal Health Record)サービス事業者を通じて本人等への情報提供を開始する▼医療費・薬剤情報について、マイナポータル等での本人等への情報提供を可能とする―構想も打ち立てています。
オンライン資格確認を発展させ、将来的には国民1人1人が自分の特定健診データを確認できる仕組みも検討していく
オンライン資格確認を発展させ、将来的には国民1人1人が自分の特定健診データを確認できる仕組みも検討していく
オンライン資格確認を発展させ、将来的には国民1人1人が自分の医療費や薬剤の状況を確認できる仕組みも検討していく
オンライン資格確認を発展させ、将来的には国民1人1人が自分の医療費や薬剤の状況を確認できる仕組みも検討していく
 
こうした新システムについて医療保険部会では、保険者等の関係者の声を十分に聴取するとともに、現場の機器・システム導入経費を支援してほしいとの要望が出されました。

佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)は、「オンライン資格確認の効果が発揮されるのは、患者の医療保険が変わったときである。健保組合、協会けんぽ、国保、審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会)と十分に協議・準備するとともに、すべての医療機関や薬局がオンラインでつながる必要がある」とコメント。

また遠藤秀樹委員(日本歯科医師会常務理事)や森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、とくに特に小規模な歯科医療機関や保険薬局において設備投資(機器の導入など)の負担が大きくなる点を懸念し、丁寧な情報提供を要望しています。

今後、骨太方針2018を踏まえて医療保険制度改革案の制度化に向けた検討

 また5月25日の医療保険部会では、厚労省から2040年を見据えた「社会保障の将来見通し」と「マンパワーのシミュレーション」が報告されました。これは、5月21日の経済財政諮問会議で提示されたもので、例えば、▼医療・介護の給付費(自己負担を除く)は、現状のままでは2040年に92.9-94.7兆円に膨らみ、地域医療構想の実現や医療費適正化計画の推進などによっても92.5-94.3兆円にまでしか抑えることができない▼医療・介護・福祉分野のマンパワーは、2040年度には1065万人が必要になるが、健康寿命の延伸やICT活用などで935万人に抑えることができる―ことなどが示されています(関連記事はこちら)。

医療・介護給付費は、現状のまま推移すると、2040年度には92.9-94.7兆円となり、対GDP比は11.7-12.0%になる見込み
医療・介護給付費は、現状のまま推移すると、2040年度には92.9-94.7兆円となり、対GDP比は11.7-12.0%になる見込み
地域医療構想の実現や医療費適正化計画などにより、医療・介護給付費は、2040年度には92.5-94.37兆円となると考えられる
地域医療構想の実現や医療費適正化計画などにより、医療・介護給付費は、2040年度には92.5-94.37兆円となると考えられる
2040年度には医療・介護分野で1065万人の従事者が必要になる(全就業者の18.8%)と見込まれるが、健康寿命の延伸によるニーズ減、ICT等活用による生産性向上によって、130万人少ない935万人(同16.5%)で済むと考えられる
2040年度には医療・介護分野で1065万人の従事者が必要になる(全就業者の18.8%)と見込まれるが、健康寿命の延伸によるニーズ減、ICT等活用による生産性向上によって、130万人少ない935万人(同16.5%)で済むと考えられる
 
 厚労省は合わせて、「社会保障・税の一体改革」時点(2012年8月に一体改革関連法が成立、2019年10月の消費税率10%への引き上げで一応の完了をみる)では「2015時点で、社会保障給付費は119兆8000億円になる」と見込んでいましたが、その後の改革により実績値は「5兆円程度節減でき、114兆9000億円となった」ことも紹介しています。

こうした試算結果については、多くの委員から「社会保険改革の必要性が改めて浮き彫りとなった」旨のコメントが相次ぎました。

佐野委員ら被用者保険関係者は「医療保険制度の持続可能性を考慮すれば、早急に75歳以上の後期高齢者の自己負担引き上げ(1割→2割)を行うとともに、元気な高齢者の増加などによる医療費の伸びの抑制を検討する必要がある」ことを強調(関連記事はこちら)。

また松原謙二委員(日本医師会副会長)も、改革の必要性を確認し、「例えば、いわゆる人生の最終段階において、患者が望まない医療等が提供されないよう、ACP(Advanced Care Planning)の普及等を急ぐ必要がある」と訴えています(関連記事はこちらこちら)。

医療保険部会では、6月にもまとめられる予定の「骨太の方針2018」を待ち、具体的な医療保険改革案について制度化に向けた検討を行っていくことになります。

医療保険部会では、骨太方針2018を待ち、具体的な医療保険改革の制度化に向けた検討を行う
医療保険部会では、骨太方針2018を待ち、具体的な医療保険改革の制度化に向けた検討を行う
 
 

 

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