学識者を「地域医療構想アドバイザー」に据え、地域医療構想論議を活発化―地域医療構想ワーキング(2)



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 地域医療構想調整会議の議論は着実に進んできているが、必ずしも十分とは言えない。調整会議の議論を活性化させるために、都道府県単位の地域医療構想調整会議の設置を推奨するほか、公衆衛生学等の研究者に「地域医療構想アドバイザー」に就任してもらってはどうか―。

 5月16日に開催された地域医療構想ワーキンググループ(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)では、こういった方向が概ね了承されています。あわせて、2018年度の病床機能報告制度に関する見直し論議も進められています(関連記事はこちら)。

5月16日に開催された、「第13回 地域医療構想に関するワーキンググループ」
5月16日に開催された、「第13回 地域医療構想に関するワーキンググループ」
 

地元大学の公衆衛生研究者などを、地域医療構想アドバイザーに推薦

 地域医療構想の実現に向けて、地域医療構想調整会議が各区域で、2017年度には平均3.1回(1-14回)開催され、17の県では全公立病院・公的医療機関等の改革プランが地域医療構想と整合しているかなどの議論が始まるなど、議論が活発化しています。

一方で、厚生労働省は「調整会議は年4回開催してほしい」と要請しているものの、「実態は平均で0.9回少ない」こと、▼秋田県▼福島県▼京都府▼大阪府▼沖縄県―では公立・公的医療機関に関する論議が「手つかず」なこと、などを踏まえると、まだまだ調整会議の議論が十分に進んでいるとは言い難いのも事実です。

この点、調整会議で活発な議論が進んでいる佐賀県や奈良県の取り組みを踏まえ、厚労省は次の3つの活性化策を提案しました。

(1)「都道府県単位の地域医療構想調整会議を設置する」ことを推奨する
(2)国が都道府県主催の研修会を支援する
(3)地元に密着した「地域医療構想アドバイザー」を育成する

地域医療構想調整会議は、主に2次医療圏をベースとする「地域医療構想区域」毎に設置されます。会議の議長は、地域医師会(群市医師会)が担っているケースが多く(71%)、また事務局は「都道府県の保健所」が担っているケースが多く(74%)なっています。このため、各調整会議では「他の調整会議ではどのように議論が行われているのか」「県の方針はどうなっているのか」という疑問を持つことも多いようです。この点、佐賀県では「各調整会議の議長」が集い、併せて▼県医師会▼病院代表▼県(行政)▼特定機能病院・地域医療支援病院長—らが参加し、全県的事項を協議する「佐賀県の地域医療構想調整会議」を自主的に設置し、各調整会議の疑問を解消しているといいます。

この好事例を全国展開するために、(1)の「都道府県の地域医療構想調整会議」設置が今般提案されたものです。義務ではなく、「推奨」にとどまりますが、佐賀県では基幹病院の代表者が、「都道府県の調整会議」構成員と「構想区域の調整会議」構成員とを兼務することで、議論が活発化・円滑化していると報告されており、積極的な設置が望まれます。

 
また(2)は、都道府県自ら、あるいは都道府県と都道府県医師会が共催で、地域医療構想の進め方に関する研修会を開催し、「データの活用方法の提示」「好事例の共有」「グループワーク」などを行うことを求めるもので、講師派遣などを含めて厚労省が都道府県をサポートする考えを示しています。

 
さらに(3)は、地元の大学医学部で公衆衛生学などを研究し、データ分析などの高いスキルを持ち、地域医療構想の実現に向けた助言を行える研究者を「地域医療構想アドバイザー」として選定・任命するものです(活動経費は、地域医療介護総合確保基金の対象となる)。都道府県からの推薦をもとに、厚労省が任命する形となる見込みです。この点、奈良県の地域医療構想調整会議に研究者の立場で参画している今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)は「厚労省の調べによれば、調整会議に学識経験者として大学関係者が参画しているケースは、全体の8.8%・30構想区域にとどまっている。学識経験者は、さまざまな利害対立の中で『叩かれ役』になるが、1年も叩かれると利害関係者も落ち着いてくる」とコメント。中川俊男構成員(日本医師会副会長)は、「叩かれることも、アドバイザーの役目かもしれない」と期待を寄せています。

ただし、昨年(2017年)6月のワーキングでは、大学医学部関係者の中にも「病床機能報告における高度急性期は、1日当たりの医療資源投入量が3000点以上である」と誤解しているケースがあることが判明するなど、地域医療構想や病床報告への理解の度合いはさまざまなようです。このため、中川構成員は「独特の考えを持たれている方がアドバイザーになると困ってしまう」と、また邉見公雄構成員(全国自治体病院協議会会長)は「地域によっては適任者がいないこともある」と指摘。この点について厚労省医政局地域医療計画課の担当者は、「アドバイザーを育成していく」視点も重視している旨を示しています。

 
厚労省は、今後、都道府県向けの研修会(直近では6月1日開催予定)や通知などを通じて、上記(1)から(3)について周知を促す考えです。

 
また、併せて公立・公的医療機関等の機能分化を推進するために、「各構想区域における取組内容の分析」や「再編・統合事例などの見える化」も進められます(関連記事はこちら)。

病床機能報告の「定量基準」導入に向けて議論続く

地域医療構想は、調整会議において、各種データから地域の実情や将来をしっかりと把握したうえで、各医療機関が自院の役割を再考して「自主的に機能分化を進める」ことや、地域の医療機関同士が協議することで実現に向けて進んでいきます。

このベースとなるのが、病床機能報告制度です。病床機能報告制度は、一般病床・療養病床を持つ全病院・有床診療所が、自院の構造・設備・人員に関するデータや、各病棟の機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)などを毎年、都道府県に届け出る(義務)ものです。

この点、各病院では「自院のこの病棟は、果たしてどの機能として報告すべきだろうか」と頭を悩ませることが少なくないと指摘されます。病床機能報告制度では、各機能についての厳密な定量基準を設けていないためです(診療報酬上の入院料と機能との紐づけは相当程度行われている)。

このため、一部には「定量基準を定めるべき」との指摘もありワーキングでも、議論が続けられています(関連記事はこちら)。

5月16日のワーキングでは、厚労省から、高度急性期・急性期と報告しながら、▼幅広い手術▼がん・脳卒中・心筋梗塞などへの治療▼重症患者(ハイリスク妊娠管理加算・分娩管理加算、救急搬送診療料、経皮的心肺補助法、頭蓋内圧持続測定などの算定患者)への対応▼救急医療▼全身管理(中心静脈注射、観血的動脈圧測定、人工呼吸、経管栄養カテーテル交換など)—などのいずれも行っていない病棟について、地域医療構想調整会議で、その機能を確認することが改めて確認されました。2017年度報告では14%・3014病棟が、上記の「高度急性期・急性期」であれば、いずれかは実施している医療行為について、一つも実施していないことに驚かされます。

 
また埼玉県からは、独自の「各機能を報告する際の目安」として、例えば次のような方針が採られていることが紹介されました。高度急性期であれば、「救命救急入院料やICUのほとんどがクリアする」ような、急性期であれば「旧7対1の多くが合致し、多くの有床診療所などではクリアできない」ような要件となっています。

▽一般病棟などが高度急性期と報告する際の目安(1か月・稼働病床1床当たり)
▼手術2.0回▼胸腔鏡・腹腔鏡下手術0.5回▼悪性腫瘍手術0.5回▼超急性期脳卒中加算の算定▼脳血管内手術の実施▼経皮的冠動脈形成術0.5回▼救急搬送診療料の算定▼救急医療(救命のための気管内挿管、カウンターショック、心膜穿刺、非開胸的心マッサージなどの合計)0.2回▼重症患者への対応(観血的肺動脈圧測定や3時間以上の頭蓋内圧持続測定、持続緩徐式血液濾過、人工心肺、人口尊像などの合計)0.2回▼全身管理への対応(1時間を超える観血的動脈圧測定、胸腔穿刺、ドレーン法、5時間以上の人工呼吸の合計)8.0回―のうち1つ以上を満たす

▽一般病棟などが急性期と報告する際の目安(1か月・稼働病床1床当たり)
▼手術2.0回▼胸腔鏡・腹腔鏡下手術0.1回▼放射線治療0.1回▼化学療法1.0回▼予定外の救急医療入院の人数10人▼一般病棟用の重症度、医療・看護必要度(2016年度改定版)を満たす患者割合25%以上―のうち1つ以上を満たす

 
 これらは「目安」に過ぎませんが、中川構成員や織田正道構成員(全日本病院協会副会長)は、「『病棟をベースにした病床機能報告制度』と『患者数をベースにした地域医療構想』を比較し、急性期が過剰、回復期が不足という議論になり、両者の整合をはかるために、データをひねっている。各病院が自主的に機能を判断するという根本を崩してはいけない」と述べ、埼玉県のような定量基準導入には慎重な構えを崩していません。

 今後、さらに検討を深め、可能な範囲で2018年度の病床機能報告に「定量的基準を盛り込む」ことになりそうです。今夏(2018年8月頃)には、2018年度の病床機能報告マニュアルを公表しなければならないため、検討の時間はそう多くなく、どこまで調整が進むのか調整が待たれます。

 
 なお、2018年度の診療報酬改定を受け、病床機能報告の内容が一部修正されることになります。例えば、これまでの「一般病棟7対1・10対1」は「急性期一般入院料の1-7」に、「退院支援加算」は「入退院支援加算」に名称や内容が修正されており、病床機能報告でもこれらに沿った名称での報告を求める(レセプトデータから抽出するため、病院では「確認」と必要があれば「訂正」を行うことになり、個別に「自院は急性期一般入院料2を届け出ている」などと報告することはない)ことになります。
 
 

 

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