介護予防事業への参加率や運動習慣の向上によって要介護認定率が下がる―内閣府



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 65歳以上人口に占める75歳以上・80歳以上等人口の割合が高くなると、要介護(支援)認定率は高くなる。一方、運動習慣のある高齢者の割合が高くなると、要介護(支援)認定率は低くなる。また介護予防事業などへの参加率が高くなると、要介護(支援)認定率は低くなり、全国で介護予防事業などへの参加人数が10倍になれば、270億円程度の歳出削減が見込まれる―。

内閣府が4月26日に公表した「要介護(要支援)認定率の地域差要因に関する分析」(政策課題分析シリーズ15)から、こういった点が明らかになりました(内閣府のサイトはこちら)。

若年世代から運動習慣がある地域では、要介護認定率が低くなる

高齢化の進展とともに社会保障費が膨張し、我が国の財政を圧迫していると指摘されます。介護分野についても費用の伸びが大きく(2017年度は前年度比4%程度の増加)、伸び率を適正な範囲に抑える必要があります。

その中で近年、介護費の地域差がクローズアップされています。例えば2016年度の介護給付費実態調査によれば、介護サービスの受給者1人当たり費用額は、最高の沖縄県(20万9400円)と最低の福島県(18万1000円)との間には1.16倍の格差があります。このため厚労省は今年度(2018年度)から重症化予防・自立支援に積極的に取り組み、かつ実績を上げている自治体に対し交付金(保険者機能推進交付金、通称「インセンティブ交付金」)を創設するなど、対策に本腰を入れています(関連記事はこちらこちらこちら)。

今般の内閣府の調査分析では、「要介護(支援)認定率」に着目し、なぜ地域差が発生するのかを詳しく調べています。介護費は、大きく(1)要介護(支援)認定率(2)サービス受給率(3)1人当たり介護サービス費―に分解でき、要介護(支援)認定率の高さは、介護費を増加させる大きな要因となるためです。内閣府の分析によれば、「(3)の1人当たり介護サービスが高い都道府県は、(1)の要介護(支援)認定率も高い」ことが分かっています。

介護費は、(1)要介護(支援)認定率(2)サービス受給率(3)1人当たり介護サービス費―に分解できる
介護費は、(1)要介護(支援)認定率(2)サービス受給率(3)1人当たり介護サービス費―に分解できる
要介護認定率の高い自治体では、1人当たり介護サービス費も高い傾向がある
要介護認定率の高い自治体では、1人当たり介護サービス費も高い傾向がある
 
 
まず「要介護(支援)認定率」と正の相関がある項目、つまり、要介護(支援)認定率を高くする可能性のある項目(相関関係の有無は、因果関係の有無を必ずしも意味しない)を見ると、▼75歳以上/65歳以上比率(0.813、相関係数と呼ばれ、数値が高いほど関係が強い)▼80歳以上/65歳以上比率(0.802)▼85歳以上/65歳以上比率(0.745)▼90歳以上/65歳以上比率(0.693)▼95歳以上/65歳以上比率(0.624)▼人口10万人当たり死亡者数(総数)(0.739)▼同(悪性新生物)(0.695)▼同(腎不全)(0.667)▼同(脳梗塞)(0.612)▼人口10万人当たり一般病床数(0.725)▼人口10万人当たり病床数(病院)(0.601)▼人口10万人当たり老人福祉費(0.783)▼人口10万人当たり保健師数(常勤)(0.610)—などとなっており、「高齢化」や「疾病・医療提供体制状況」と関係の深いことが分かります。もっとも、高齢になれば一般に心身の機能が低下するため、当然とも思えます。
要介護(支援)認定率」と正の相関がある項目としては、▼75歳以上/65歳以上比率(0.813)▼80歳以上/65歳以上比率(0.802)▼85歳以上/65歳以上比率(0.745)▼90歳以上/65歳以上比率(0.693)▼95歳以上/65歳以上比率(0.624)▼人口10万人当たり死亡者数(総数)(0.739)▼同(悪性新生物)(0.695)▼同(腎不全)(0.667)▼同(脳梗塞)(0.612)▼人口10万人当たり一般病床数(0.725)▼人口10万人当たり病床数(病院)(0.601)▼人口10万人当たり老人福祉費(0.783)▼人口10万人当たり保健師数(常勤)(0.610)—などがある
要介護(支援)認定率」と正の相関がある項目としては、▼75歳以上/65歳以上比率(0.813)▼80歳以上/65歳以上比率(0.802)▼85歳以上/65歳以上比率(0.745)▼90歳以上/65歳以上比率(0.693)▼95歳以上/65歳以上比率(0.624)▼人口10万人当たり死亡者数(総数)(0.739)▼同(悪性新生物)(0.695)▼同(腎不全)(0.667)▼同(脳梗塞)(0.612)▼人口10万人当たり一般病床数(0.725)▼人口10万人当たり病床数(病院)(0.601)▼人口10万人当たり老人福祉費(0.783)▼人口10万人当たり保健師数(常勤)(0.610)—などがある
 
そこで、「要介護(支援)認定率」と負の相関がある項目も調べています。「どのような点が要介護(支援)認定率を低下させる可能性があるのか」(同じように因果関係を意味するものではない)という分析です。要介護(支援)認定率を低下させる可能性のある項目としては、▼スポーツ行動者割合(75歳以上)(マイナス0.841)▼同(65歳以上)(マイナス0.835)▼同(55歳以上)(マイナス0.779)▼同(45歳以上)(マイナス0.777)▼自治体の財政力指数(マイナス0.730)▼保険料負担が基準額を上回る者の割合(マイナス0.711)—などがあり、高齢になってからだけでなく、若年世代からの「運動習慣」が自立にとって極めて重要な要素であることが分かりました。
要介護(支援)認定率を低下させる可能性のある項目としては、▼スポーツ行動者割合(75歳以上)(マイナス0.841)▼同(65歳以上)(マイナス0.835)▼同(55歳以上)(マイナス0.779)▼同(45歳以上)(マイナス0.777)▼自治体の財政力指数(マイナス0.730)▼保険料負担が基準額を上回る者の割合(マイナス0.711)—などがある
要介護(支援)認定率を低下させる可能性のある項目としては、▼スポーツ行動者割合(75歳以上)(マイナス0.841)▼同(65歳以上)(マイナス0.835)▼同(55歳以上)(マイナス0.779)▼同(45歳以上)(マイナス0.777)▼自治体の財政力指数(マイナス0.730)▼保険料負担が基準額を上回る者の割合(マイナス0.711)—などがある
 

介護予防事業へ住民が積極的に参加する自治体では、要介護認定率が低くなる

 また内閣府は「要介護(支援)認定率」を、「要介護2以下の認定率」と「要介護3以上の認定率」に分けて分析。そこからは、市町村別に見ると▼要介護2以下の認定率は全国で8.16倍▼要介護3以上の認定率は全国で5.19倍―と、「要介護2以下の認定率」に大きな地域差があることが分かりました。さらに、「要介護2以下の認定率」が高い自治体では、「要介護3以上の認定率」が高いという関係もあります。

要介護2以下の認定率は、要介護3以上認定率に比べて、より地域差が大きい
要介護2以下の認定率は、要介護3以上認定率に比べて、より地域差が大きい
 
ここから「比較的軽度と言える『要介護2以下』の高齢者が生じない」ような取り組みへの力の入れ具合が自治体間で大きく異なり、また軽度の要介護者(要介護2以下)発生を抑える取り組みは、重度化(要介護3以上に悪化する)防止にも大きな効果を及ぼしている、との仮説が成り立ちそうです。つまり「軽度の要介護者発生を抑えることが、要介護者全体の発生防止につながる」可能性が考えられるのです。

保険者単位(市町村単位)で「要介護2以下の認定率」と正の相関がある項目をみると、年齢構成のほかに「第1号被保険者10万人当たり介護老人福祉施設定員医療供給体制の拡充」があげられ、「供給がニーズを生み出している」可能性が考えられそうです。逆に、負の相関がある項目としては、▼訪問型介護予防事業(総数)参加実人数/二次予防事業対象者▼介護予防普及啓発事業(講演会や相談会)参加者延数―があり、自立支援・重度化防止に向けた取り組みに大きな効果の可能性があることが分かりました。

保険者単位(市町村単位)で「要介護2以下の認定率」と正の相関がある項目をみると、年齢構成のほかに「第1号被保険者10万人当たり介護老人福祉施設定員医療供給体制の拡充」があげられ、負の相関がある項目としては、▼訪問型介護予防事業(総数)参加実人数/二次予防事業対象者▼介護予防普及啓発事業(講演会や相談会)参加者延数―がある
保険者単位(市町村単位)で「要介護2以下の認定率」と正の相関がある項目をみると、年齢構成のほかに「第1号被保険者10万人当たり介護老人福祉施設定員医療供給体制の拡充」があげられ、負の相関がある項目としては、▼訪問型介護予防事業(総数)参加実人数/二次予防事業対象者▼介護予防普及啓発事業(講演会や相談会)参加者延数―がある
 
厚労省は、前述の「インセンティブ交付金」による重度化防止の推進のほかに、現在、個別に展開されている▼生活習慣病対策(40歳以上を対象に市町村国保等が実施、国保の財政責任主体が都道府県となった後も、きめ細かな保健事業等は市町村が担う)▼フレイル対策(75歳以上を対象に後期高齢者医療制度を運営する後期高齢者広域連合が実施▼介護予防(65歳以上を対象に介護保険の保険者である市町村が実施)—などを、一体的に実施する構想を打ち出しており(関連記事はこちら)、今般の分析結果に照らせば、その効果には大きな期待が持てます。

内閣府では、介護予防事業の推進によって要介護(支援)認定率が低下し、介護費増の抑制が考えられるとし、「介護予防普及啓発事業参加延人数(2015年度には、65歳以上人口10万人に対し延べ5582人が参加)が10倍になれば、平均270億円(58-477億円)の歳出効率化効果が期待される」と試算しています。

介護予防普及啓発事業参加延人数(2015年度には、65歳以上人口10万人に対し延べ5582人が参加)が10倍になれば、平均270億円(58-477億円)の歳出効率化効果が期待される
介護予防普及啓発事業参加延人数(2015年度には、65歳以上人口10万人に対し延べ5582人が参加)が10倍になれば、平均270億円(58-477億円)の歳出効率化効果が期待される
 
また、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の増加がニーズを掘り起こしている可能性がある点についても、「特養ホームの定員(2015年度には、第1号被保険者10万人当たり1480人の定員)が40%減少すると、平均177億円(38-314億円)の歳出削減効果がある」と試算しています。
特養ホームの定員(2015年度には、第1号被保険者10万人当たり1480人の定員)が40%減少すると、平均177億円(38-314億円)の歳出削減効果がある
特養ホームの定員(2015年度には、第1号被保険者10万人当たり1480人の定員)が40%減少すると、平均177億円(38-314億円)の歳出削減効果がある
 
 
このほか、今般の分析では次のような「地域差の要因」も明らかになってきました。

▼高知県土佐清水市、鹿児島県徳之島町、山梨県身延町、鹿児島県いちき串木野町などでは「体操」実施が増加しており、要介護2以下の認定率の低さに寄与している可能性がある(このほかにも定量分析が難しい「小規模な住民の集いなど」の要素が、認定率低下に効果を及ぼしている可能性もある)

高知県土佐清水市、鹿児島県徳之島町、山梨県身延町、鹿児島県いちき串木野町などでは「体操」実施が増加しており、要介護2以下の認定率の低さに寄与している可能性がある
高知県土佐清水市、鹿児島県徳之島町、山梨県身延町、鹿児島県いちき串木野町などでは「体操」実施が増加しており、要介護2以下の認定率の低さに寄与している可能性がある
 
▼沖縄県、鳥取県、石川県など「1人当たり介護サービス費用が高い地域」では、介護供給体制の拡充が要介護(要支援)認定者1人当たり介護サービス費用の押上げに寄与する(潜在ニーズを掘り起こしている可能性がある)

▼首都圏近県など「1人当たり介護サービス費用が低い地域」では、介護供給体制によるプラス寄与は小さい(潜在ニーズの掘り起こしの可能性は小さい)

沖縄県、鳥取県、石川県など「1人当たり介護サービス費用が高い地域」では、介護供給体制の拡充が要介護(要支援)認定者1人当たり介護サービス費用の押上げに寄与するが、首都圏近県など「1人当たり介護サービス費用が低い地域」では、介護供給体制によるプラス寄与は小さい
沖縄県、鳥取県、石川県など「1人当たり介護サービス費用が高い地域」では、介護供給体制の拡充が要介護(要支援)認定者1人当たり介護サービス費用の押上げに寄与するが、首都圏近県など「1人当たり介護サービス費用が低い地域」では、介護供給体制によるプラス寄与は小さい
 
 
要介護者の減少は、介護費の適正化はもちろん、「住民のQOL」向上に大きく寄与します。地域の特性(マンパワー、地理的状況なども含めて)に合わせた、さまざまな取り組みが行われることが期待されます。
 
 

 

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