「病院と在宅医療の協働」や「関係団体の連携」など旗印に在宅医療を推進―全国在宅医療会議



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 在宅の推進に向けて、(1)地域の病院と在宅医療との協働体制の構築(2)行政と関係団体との連携(3)関係団体同士の連携(4)ICT等最新技術の活用(5)国民への在宅医療に関する普及・啓発(6)在宅医療に関わる関係者への普及・啓発(7)在宅医療実践に関する研究および教育—の7つの柱を据える。医師会などの関係団体や学会、行政が、この柱を踏まえた共通認識を持って、在宅医療の普及・啓発に向けた取り組みを行っていくこととする―。

 4月25日に開催された全国在宅医療会議で、こういった方針が固まりました。各団体が、この柱に沿った取り組みの進捗状況を全国在宅医療会議に定期的(概ね年に1度)に持ち寄って確認しあい、在宅医療の推進に向けて足並みを揃えていくことが期待されます。

4月25日に開催された、「第4回 全国在宅医療会議」
4月25日に開催された、「第4回 全国在宅医療会議」
 

中間目標から、在宅医療の重点項目実現に向けた「7つの柱」に位置付けを見直し

全国在宅医療会議は、「国民1人ひとりの希望に応じて入院医療と在宅医療を柔軟に選択できる」ような体制の整備に向けて、行政や各団体が目指すべき方向を揃え、また各組織の動きがその方向からずれていないかなどをチェックしあうために2016年7月に設置されました(関連記事はこちらこちら)。

これまでに、在宅医療の推進に向けて(A)在宅医療に関する医療連携モデルの構築(B)在宅医療に関する普及啓発モデルの構築(C)在宅医療に関するエビデンスの構築―の3点を重点項目する((A)と(B)をセットとし、2点を重点分野とすることもある)ことを決定。さらに、重点項目の実現に向けて「中間目標」を設定することが有効と考えられ、下部組織「全国在宅医療会議ワーキンググループ」(以下、ワーキング)において、「各団体が在宅医療推進に向けた取り組みの現状と、そこで浮上した課題」を整理し、次の7項目を「中間目標」としてはどうか、その考えが厚生労働省から提示されました(関連記事はこちらこちら)。
(1)地域の病院と在宅医療との協働体制の構築
(2)行政と関係団体との連携
(3)関係団体同士の連携
(4)ICT等最新技術の活用
(5)国民への在宅医療に関する普及・啓発
(6)在宅医療に関わる関係者への普及・啓発
(7)在宅医療実践に関する研究および教育

 しかし、ワーキングでは、7項目の重要性・意義そのものは否定されなかったものの、「『目標』となると、定期的に進捗を管理していく必要があるが、医療現場はすでに在宅医療の推進に向けてそれぞれ動いており、後付けで『目標』を定めるのはいかがなものか」といった指摘がなされていました。

そこで、厚労省医政局地域医療計画課の松岡輝昌・在宅医療推進室長とワーキングの新田國夫座長(全国在宅療養支援診療所連絡会会長)との間で「目標ではなく、重点項目(上記A-C)と各団体の現状・課題とを紐づける『柱』として7項目を位置付けてはどうか」との調整が行われ、4月25日の全国在宅医療会議に報告されたのです。

各団体が在宅医療を推進する際の旗印として、7つの柱を立てることが決まった
各団体が在宅医療を推進する際の旗印として、7つの柱を立てることが決まった
 
この調整案に異論は出ず、全国在宅医療会議として了承された格好です。今後、地域医師会などの関係団体、学会、行政のそれぞれが、この7つの柱に沿って在宅医療推進に向けた取り組みを進めていくことになり、松岡在宅医療推進室長は、7つの柱が「旗印」の役目を果たすと見通しています。各団体の取り組みがそれぞれ「7つの柱のいずれに該当するのか」が明確であれば、他団体が連携・協力しやすくなると考えられます。例えば、地域の医師会と病院団体が合同会議を開く機会が増えていくと考えられますが、そこで「7つの柱の(1)『地域の病院と在宅医療との協働体制の構築』が重要だが、これを円滑に進めるために、まず(3)『関係団体同士の連携』を強めよう。さらに市町村や都道府県を巻き込んで(2)『行政との連携』も進めてはどうか」といった形で議論の筋道が見えてくると期待されるでしょう。

もっとも、進捗状況に大きなバラつきが出ることは好ましくありません。そこで松岡在宅医療推進室長は、「1年に1度を目安に、各団体が『7つの柱への取り組み、成果に関する自己評価』を行い、それを全国在宅医療会議に報告してもらい、意見交換等を行ってほしい」と要望しています。報告の中で、例えば「(2)の『行政と関係団体との連携』が思うように進んでいない」ことが明らかになれば、「厚労省から都道府県や市町村への支援・指導を強化することが必要」といった対応を早期に打つことが可能になるでしょう。

なお、4月25日の会合では「重点分野の先にあるゴールを設定したほうがより分かりやすい」(川越雅弘構成員:埼玉県立大学大学院保健医療福祉学研究科教授)、「在宅医療に関わる関係者の『育成』という視点も考慮してはどうか」(蘆野吉和構成員:日本ホスピス・在宅ケア研究会理事長)といった注文もついており、今後、「現場でより活用しやすいような形」へのブラッシュアップも検討されます。

国民への在宅医療の普及・啓発策を練るため、5・6月に小グループで集中討議

7つの柱の(5)「国民への在宅医療に関する普及・啓発」に向けては、例えば「国が大々的なキャンペーンを打ってはどうか」「自治体で啓発ポスターやパンフレットを作成してはどうか」といった行政に対する様々な注文が出ています。しかし、「行政のキャンペーンやパンフレットは、在宅医療に関心のある国民の目には止まるが、本当に知ってほしい、あまり在宅医療に関心のない一般国民への効果は乏しい」といった指摘もあります。

そこで、例えば、患者と信頼関係が構築できているかかりつけ医が「入院医療だけでなく、在宅医療という選択肢もある」ことなどを丁寧に説明すること、地域医療を提供する病院や地域医師会が、住民向けに「分かりやすい在宅医療教室」等を積極的に開催することなどが期待されますが、こういった関係団体による取り組みは、まだ十分には進んでいないようです。

一方で、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となり、医療・介護ニーズが急増する2025年までに、医療提供体制を再構築することが求められており(地域医療構想の実現、地域包括ケアシステムの構築)、在宅医療についての体制整備はもちろん、国民への普及・啓発を行うために使える時間は限られています(在宅医療体制を十分に確保したとしても、患者サイドが利用を希望しなければ、機能分化・地域包括ケアシステムは成立しない)。

松岡在宅医療推進室長は、こうした状況を踏まえ、「国民への在宅医療に関する普及・啓発」策を集中的に議論する必要があると判断。今般、ワーキングの下に小グループを設置し、この5月・6月に「国民への在宅医療に関する普及・啓発」策案を練ることも決まりました。この案を素材として、今夏以降、ワーキングで具体的な普及・啓発策を検討していくことになります(関連記事はこちら)。

 
ワーキングでは、あわせて「7つの柱に関する先進的な取り組み」も報告され、そこからは「各団体が取り組みを進める際のヒントやコツ」などが抽出できそうです。これらは最終的に親組織である全国在宅医療会議に報告され、各団体は、そのヒントやコツをもとに、自組織の取り組みをブラッシュアップすることが期待されます。

今年(2018年)5・6月を目途に小グループで「在宅医療に関する国民への普及・啓発」策を練る。これをもとにワーキングで具体策を検討する。一方、「7つの柱」について先進事例の報告をワーキングで行うとともに、関係団体全体の進捗状況確認を年明けの全国在宅医療会議で行う
今年(2018年)5・6月を目途に小グループで「在宅医療に関する国民への普及・啓発」策を練る。これをもとにワーキングで具体策を検討する。一方、「7つの柱」について先進事例の報告をワーキングで行うとともに、関係団体全体の進捗状況確認を年明けの全国在宅医療会議で行う
 
 

 

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