2019年10月の消費増税に向け、「病院団体のメッセージ」をまとめる―日病協



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 診療報酬プラス改定による消費増税対応には限界がある。2019年10月には消費税率が10%に引き上げられる予定であり、今夏(2018年夏)の2019年度予算概算要求や年末(2018年末)の2019年度予算編成・税制改正に向けて、病院団体としてのメッセージを明確に出せるように議論していく—。

4月17日の日本病院団体協議会・代表者会議で、こうした点を確認したことが、会議後に記者会見を行った山本修一議長(国立大学附属病院長会議常置委員長、千葉大学医学部附属病院長)から明らかにされました(関連記事はこちら)。

4月17日の日本病院団体協議会・代表者会議後に記者会見を行った山本修一議長(国立大学附属病院長会議常置委員長、千葉大学医学部附属病院長)
4月17日の日本病院団体協議会・代表者会議後に記者会見を行った山本修一議長(国立大学附属病院長会議常置委員長、千葉大学医学部附属病院長)

2018年夏の概算要求、2018年末の税制改正等見据え、迅速にメッセージをまとめる

 診療報酬や介護報酬に係る消費税は「非課税」とされています。このため、医療機関等が物品等を購入する場合の消費税は、患者に転嫁できず、医療機関等が最終負担者となっています(いわゆる控除所対象外消費税)。この医療機関等の負担を放置することはできず、1989年の消費税導入時から「医療機関等における消費税負担を補填するための、特別の診療報酬プラス改定」(消費税対応改定)が行われてきています(消費税導入時の1989年、消費税率引き上げ時の1997年、2014年)。

社会保険診療報酬については消費税が非課税となっており、患者や保険者は消費税を医療機関に支払わない。このため医療機関が卸に納めた消費税(80円)について「仕入税額向上」も受けられず、医療機関が負担することになり、いわゆる「損税」が発生する。
社会保険診療報酬については消費税が非課税となっており、患者や保険者は消費税を医療機関に支払わない。このため医療機関が卸に納めた消費税(80円)について「仕入税額向上」も受けられず、医療機関が負担することになり、いわゆる「損税」が発生する。
 
 1989年、97年の消費税対応改定では「消費税の影響を大きく受けると予想される」診療報酬項目について点数の引き上げが行われましたが、「その後の診療報酬改定で、当該点数項目が廃止されるケースなどもある」「当該点数を算定しない医療機関では、消費税負担への補填がなされないことになり、大きな不公平が生じている」との課題が指摘されました。

 そこで2014年度の消費税対応改定では、「可能な限りの公平性」を確保するために、多くの医療機関等で算定する「基本報酬」(初・再診料や入院基本料、特定入院料など)への上乗せ(補填)が行われました。

 厚生労働省が「2014年度の消費税対応改定の効果・影響」を調べたところ、医療機関等全体で、消費税負担に対し102.07%の補填(診療報酬収入の上乗せ)がなされている」ことが分かり、中医協では「マクロ(医療機関等全体)では概ね補填されている」と結論付けられました(関連記事はこちら)。

しかし、医療機関の種類別に見ると、▼病院:102.36%▼一般診療所:105.72%▼歯科診療所:100.68%▼保険薬局:86.03%―、また病院を種類別に見ると、▼一般病院:101.25%▼精神科病院:134.47%▼特定機能病院:98.09%▼こども病院:95.39%―となっており、補填率にはバラつきがあり、「やはり補填に格差が出てしまう」ことが再確認されています(関連記事はこちら)。

特定機能病院(98.09%)や子ども病院(95.39%)では、消費増税に対する補填が十分なされていない
特定機能病院(98.09%)や子ども病院(95.39%)では、消費増税に対する補填が十分なされていない
 
補填率が100%に近いほど「適切な補填」となり、補填率が100%よりも大きければ「益税」(消費税負担を上回る収益増)が、補填率が100%に満たなければ「損税」(診療報酬で消費税負担を補填しきれていない)が発生していることを意味し、山本議長は「急性期病院における補填不足が明らかである」と評しています。

国立大学附属病院長会議や日本精神科病院協会、日本病院会、全日本病院協会などの病院団体で構成される日本病院団体協議会(日病協)では、「診療報酬による消費税補填には限界があり、このままでは困る」という点で一致。今夏(2018年夏)の2019年度予算概算要求や年末(2018年末)の2019年度予算編成・税制改正に向けて、「病院団体としてのメッセージを明確に出せるように議論していく」方針を決定しています。

もっとも消費税問題を含めた税制改正については、日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会で構成される四病院団体協議会で要望項目が検討されることとなっており、この動きと連携を取りながら「日病協メッセージ」を作成していくことになります。メッセージがどのような内容になるのか(例えば、ゼロ税率対応などの具体的提案に踏み込みのか)、メッセージをどのような形で活用するのか(例えば、与党の税制調査会などに直接提出するのか)などは、今後の調整を待つ必要があります。

 
また、4月17日の日病協代表者会議では、「医師の働き方改革」も議題に上がり、その中で「現在、厚労省の『医師の働き方改革に関する検討会』で、医師への時間外労働上限適用に関するルールが議論されている。そのルール策定論議の最中にも関わらず、労働基準監督署が各地の病院に入り、指導等を行っている。これは『停戦協定中に爆撃するようなもの』だ。現場を混乱させないでほしい」との意見が出されたことも紹介されています。医師の働き方改革に関する検討会では、来年(2019年)3月に報告書をまとめる予定で、そこでは、「医師の負担軽減」「働き方改革」に関する提言とともに、「医師に対する時間外労働上限の適用ルール」が固められることになります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

 
さらに財政制度等審議会の財政制度分科会では、「地域別の診療報酬」設定論議が熱を帯びています(関連記事はこちら)。この点について日病協内では「国民皆保険の下で、報酬に地域格差を設けることは好ましいのか」「介護報酬では地域別の単価が設定されているが、これをどう考えるか」といった根本に遡った検討も行われることになりそうです。

 
山本議長は、「2018年度診療報酬改定論議は終了したが、消費増税対応、働き方改革など、病院経営に大きな影響を及ぼす重要議論がこれから行われる。病院団体の意見を集約し、よりよい病院医療提供を目指したい」と強調しています。

 

 

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