薬剤師が「検査値から患者の状態を把握」し、重大な副作用発生を防止した好事例―医療機能評価機構



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 高コレステロール血症等の治療に用いる「アトルバスタチン」には横紋筋融解症やミオパチーといった重大な副作用があり、「CK(CPK)上昇」等の症状が出た患者では投与を中止することが必要であるが、医師がこれに気づかずに処方を行ってしまった。薬剤師が検査結果から患者のCK(CPK)上昇に気づき、疑義照会によって処方が中止された―。

 日本医療機能評価機構は4月4日、薬局からこのようなヒヤリ・ハット事例が報告されたことを公表しました。(機構のサイトはこちら)。薬局薬剤師には、「検査結果や聞き取り情報から患者の状態を把握し、処方内容の適正性を確認する」「一般用医薬品の適正使用を勧奨する」など、極めて重要な役割があることを再確認できる事例が紹介されています。

お薬手帳への記載漏れで、患者の副作用情報が医師に伝わらなかった事例も

 日本医療機能評価機構は、患者の健康被害などにつながりかねなかった事例を薬局から収集する「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」を実施。その中でも、医療安全対策に有用な情報を「共有すべき事例」として毎月公表しています(関連記事はこちら)。4月4日には、5つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

 まず1つ目は、一包化調剤を行う際に、高血圧症治療薬「ディオバン錠」の代わりに、同じく高血圧症治療薬である「コニール錠」が1錠混入してしまった事例です。

一包化を行う調剤機器の中に、前に調剤したコニール錠が残っており(静電気や糖衣錠のべたつきなどで機器に付着したと考えられる)、それに薬剤師が気づかなかったことが要因です。幸い、両剤は形状・色が異なるため、鑑査の時点で気づき、誤った薬剤が患者の手に渡ることはありませんでした。

機構では、「最新機器にも落とし穴が生じることを念頭において作業することが必要」「業務手順書にも反映させることが望ましい」とコメントしています。

 
 また2つ目は、初回来局時に「神経障害性疼痛などの治療に用いる『リリカ』で薬疹が出た」との情報を家族(患者本人は認知症)から得ていたにも関わらず、医師が『リリカカプセル』を追加処方してしまった事例です。

薬局では、家族から「リリカによる薬疹」情報を聞き取りによって得ていましたが、それを新しく作成したお薬手帳に記載していませんでした。このため処方医に、「リリカによる薬疹情報」が伝わっておらず、今回の事態が生じてしまったといいます。機構では、「お薬手帳の新規作成や更新時には、患者情報欄を確認して、もれなく記載する」よう強く求めています。

 
さらに3つ目は、以前から高コレステロール血症等の治療に用いる「アトルバスタチン」を服用している患者において、「CK(CPK):1245U/L」と極めて高い値(通常は男性40-250U/L、女性30-200U/L)であるにも関わらず、医師が同剤を処方してしまった事例です。

アトルバスタチンには横紋筋融解症やミオパチーといった重大な副作用があり、「CK(CPK)上昇や筋肉痛、脱力感、血中・尿中ミオグロビン上昇などが現れた場合には、直ちに投与を中止する」ことが添付文書に定められています。医師がこれに気づかず、患者が「処方箋とともに検査結果を薬局に提示して、相談をしてきた」ために、薬剤師が疑義照会を行い、事なきを得ました。

 機構では、薬剤師が▼検査値に関する情報▼患者とのコミュニケーションから得られる情報—などから、副作用や期待される効果などを確認し、患者の不利益を回避することで、安全かつ有効な薬物療法が行えると期待を寄せています。ヒヤリ・ハット事例ではありますが、各薬局で参考にすべき好事例と言えるでしょう。

 
また4つ目は、閉局間際に、一般用薬であるロキソニンSを販売したものの、「購入者は同剤の服用経験があった」が、「実際の服用者には服用軽減がなく、喘息の治療を受けていた」という事例です。服用者にアスピリン喘息(スピリンに代表されるNSIADsの服用で喘息発作が誘発される)の可能性を説明し、同剤は返却となりました。

機構では、▼一般用医薬品や要指導医薬品を販売する際、「使用されるのはどなたですか?使用されるご本人でないと販売できない薬があるので確認させて頂きます」などと使用者を確認する▼購入者が商品名を指定した場合、思い込みが生じ使用者の確認がおろそかになることがあるため、チェックシートを用いて確認漏れを防ぐ▼販売後でも疑問が生じたらすぐに再確認し、販売を中止する―などの対応をとるよう強く要請しています。

 
さらに5つ目は、甲状腺機能亢進症の治療等に用いる「メルカゾール錠」を服用している患者が、増毛剤の「リアップ」購入を希望した際、「内科の処方医に確認してほしい」旨を伝え、販売を見送ったという事例です。

リアップの説明書には、「甲状腺機能障害(甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症)の診断を受けている人は、医師・薬剤師に相談する」旨の記載があり、薬剤師がこれを遵守した好事例の1つと言えます。機構では「一般用医薬品や健康食品等の安全かつ適正な使用に関する助言」「健康の維持・増進に関する相談」「適切な専門職種や関係機関への紹介」なども、薬剤師に求められる役割であるとコメントしています。

 

 

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