2018年3月までに945件の医療事故が報告され、67%で院内調査完了―日本医療安全調査機構



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 今年(2018年)3月に医療事故調査・支援センター(以下、センター)に報告された医療事故は33件。2015年10月の医療事故調査制度スタートから、累計で945件の医療事故が報告され、3分の2を超える67.0%で院内調査が完了するなど、調査スピードが上がっている―。

 日本で唯一のセンターとして指定されている「日本医療安全調査機構」が4月9日、こういった状況を公表しました(機構のサイトはこちら)(前月の状況はこちら)。もっとも、医療安全調査機構の調べでは「事故発生から報告までの期間が延びている」ことも分かっており、より詳細は分析が必要でしょう(関連記事はこちら)。

医療事故報告の件数、2018年3月は外科で10件、内科で5件

 2015年10月から「医療事故調査制度」がスタートし、すべての医療機関では、院長などの管理者が予期しなかった「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・死産」のすべてをセンターに報告することが義務づけられました。ただし、医療事故調査制度は「責任追及」を目的とする仕組みではなく、「事故の原因を究明する中で『再発防止』策を構築する」ことを主眼に創設された点には留意しなければいけません(関連記事はこちら)。

実際にセンターでは、再発防止策としてすでに(1)中心静脈穿刺合併症に係る死亡の分析―第1報―(2)急性肺血栓塞栓症に係る死亡の分析(3)注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例の分析—を策定・公表しています。

 医療事故調査制度の大きな流れは、▼管理者が医療事故を確認した場合、速やかにセンターに事故報告の旨を報告する → ▼当該医療機関で事故原因の調査【院内調査】を行い、その結果をセンターに報告する → ▼当該医療機関が、調査結果に基づいて事故の内容や原因について遺族に説明する(調査結果報告書などの提示までは不要) → ▼センターが事故事例を集積、分析し具体的な再発防止策などを練る—というものです(関連記事はこちら)。

医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける
医療事故調査制度の概要、「院内調査」を第一に行い、「医療事故調査・支援センター」がそれを補完する格好で調査が行われ、再発防止策に結びつける
 
我が国唯一のセンターとして指定された日本医療安全調査機構は、毎月、医療事故報告の状況を極めて迅速に公表しています(前月の状況はこちら、前々月の状況はこちら)。今年(2018年)3月に、新たに33件の医療事故が報告され、制度発足からの累計報告件数は945件となりました。

 今年(2018年)3月に報告された事故の内訳は、病院からが32件、診療所からが1件で、制度発足からの累計では、病院から888件(事故全体の94.0%)、診療所から57件(同6.0%)となっています。

今年(2018年)3月報告分を診療科別に見ると、▼外科10件▼内科5件▼整形外科4件▼消化器科3件―などが目立ちます。制度発足からの累計では、▼外科164件(同17.4%)▼内科123件(同13.0%)▼消化器科81件(同8.6%)▼整形外科80件(同8.5%)―などで多くなっています。

2018年2月に、新たに33件の医療事故が報告され、制度発足(2015年10月)からの累計で945件の医療事故が報告されている
2018年2月に、新たに33件の医療事故が報告され、制度発足(2015年10月)からの累計で945件の医療事故が報告されている

センターへの相談件数は累計で4777件、遺族への制度周知が依然として課題

 前述のとおり、センターに報告しなければならない医療事故は、「医療機関で生じたあらゆる死亡・死産事例」ではなく、死亡・死産事例のうち「院長などの管理者が▼予期しなかった▼医療に起因し、または起因すると疑われる—」ものに限定されます。交通事故や火災等で、瀕死の状態で救急搬送された患者が、治療の甲斐なく死亡した場合には、「死亡が予期された」ため報告対象からは除外されます。もっとも、そうした患者でも通常の治療過程とは異なるプロセスで死亡した場合には、「予期されなかった」ものとして、報告対象となります(例えば、医薬品の誤投与など)。

このため、医療現場では「患者が死亡してしまったが、センターに報告すべき医療事故に該当するのだろうか?」といった疑問が生じることでしょう。また、初めての報告などでは、「センターへの報告方法などがよく分からない」といった疑問も当然生じます。また遺族側は、「家族が医療機関で死亡したが、医療事故として報告されていない。医療機関側が隠蔽しているのではないか」といった疑念を抱くこともあります。

 こうした疑問・疑念を放置することはできず、センターでは相談対応を行っています。今年(2018年)3月には、新たに191件の相談がセンターに寄せられました。制度発足からの累計相談件数は4777件にのぼっています。

今年(2018年)3月に寄せられた新規相談の内訳は、▼医療機関から85件▼遺族などから99件▼その他・不明7件―となっています。

医療機関からの相談内容としては「報告の手続き」がもっとも多く54件(医療機関からの相談の63.5%)。次いで「院内調査に関するもの」が18件(同じく21.2%)、「報告すべき医療事故に該当するか否かの判断」が11件(同じく12.9%)となりました。一昨年(2016年)6月に医療事故調査制度の運用改善(医療事故該当性の判断などを標準化するための「支援団体等連絡協議会」を設置するなど)が行われており、こうした効果によって医療現場に「報告すべき医療事故に該当するか」の情報・知識が浸透してきていると言えます(関連記事はこちらこちら)。

 一方、遺族などからの相談内容を見ると、依然として「医療事故に該当するか否かの判断」が圧倒的で、82件(遺族などからの相談の82.8%)となりました。前月(2018年2月)にはこの割合が大きく低下したため、「一般国民にも医療事故調査制度が浸透してきた」とも思われましたが、まだまだ時間はかかりそうです。この相談の中には、「制度開始前の事例」「生存事例」など、そもそも「報告すべき医療事故でない」ものも含まれており、さらなる「制度の普及・啓発」が必要な状況です。

センターへの相談は2018年3月に191件あり、うち85件が医療機関から、99件が遺族などからのものとなっているが、これらの中には「制度の対象外の事例」も含まれている点には注意が必要である
センターへの相談は2018年3月に191件あり、うち85件が医療機関から、99件が遺族などからのものとなっているが、これらの中には「制度の対象外の事例」も含まれている点には注意が必要である

センターへの調査依頼は累計65件、うち4件ではセンター調査も完了

 前述のとおり、医療事故調査制度の目的は「再発防止」にあります。このため、事故が発生した医療機関が「自ら」が原因究明に向けた調査【院内調査】を行い、その過程で自院の体制や院内ルールを見直し、改善を行っていくことが期待されます。

今年(2018年)3月に新たに院内調査が完了した事例は26件で、制度発足からの累計では633件となりました。これまでに報告された全945件の医療事故のうち3分の2を超える67.0%で院内調査が完了しており、院内調査のスピードがさらに向上していることが分かります。

医療事故を報告した医療機関のうち、新たに院内調査が完了したものは2018年3月に26件、制度発足からの累計で633件となった(報告された事故全体の67.0%)
医療事故を報告した医療機関のうち、新たに院内調査が完了したものは2018年3月に26件、制度発足からの累計で633件となった(報告された事故全体の67.0%)
 
 ところで、遺族の中には「院内調査の結果に納得できない」「院内調査が遅すぎる(時間稼ぎをしていないか)」と感じる人もいるでしょう。また、小規模医療機関等の中には「自力での院内調査が難しい」ところもあるでしょう(医師会や病院団体などの支援団体によるサポート体制がある)。

そこで、センターでは、「遺族や医療機関からの調査依頼を受け付ける」体制も整えています。ここでは、「院内調査が時期・内容ともに適正に実施されたか」という観点での調査が中心となります。

今年(2018年)3月に、センターになされた調査依頼は3件(すべて遺族から)で、制度発足からの累計では65件(遺族から50件・76.9%、医療機関から15件・23.1%)となりました。進捗状況をみると、4件ではすでにセンター調査が終了しており、ほか「院内調査結果報告書の検証中」(院内調査が適切に行われたかどうかを確認)58件、「院内調査結果報告書検証準備作業中」2件、「院内調査の終了待ち」1件という進捗状況です。

 

 

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