広尾病院・大塚病院は広域基幹型を、駒込病院はがん医療の専門性向上などを目指す―東京都



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 東京都立の8病院について、今年度(2018年度)から2023年度までの6年間をかけて、(1)墨東病院(墨田区)と多摩総合医療センター(府中市)を「広域的に総合的な医療を提供する」病院に(2)広尾病院(渋谷区)と大塚病院(豊島区)を「強みを活かしつつ、地域医療機関との役割分担・連携の下、地域医療の充実に貢献する」病院に(3)駒込病院(文京区)、神経病院(府中市)、小児総合医療センター(府中市)、松沢病院(世田谷区)を「専門機能を発揮する」病院に―類型化していく—。

 東京都が3月30日に公表した「都立病院新改革実行プラン2018」(以下、プラン2018)では、こういった方針が打ち出されました(東京都のサイトはこちら(概要版)こちら(本編))。

都立8病院を、地域性や機能などを踏まえて3つに類型化

 東京都では、▼少子高齢化の進展等による人口構造の変化▼地域医療構想の実現▼都立病院の経営安定化—といった点を総合的に考慮し、今般「都立病院新改革実行プラン2018」を策定しました(関連記事はこちらこちらこちら)。

 まず目を引くのが、8つの都立病院について次のような類型化を行うという点です。公立病院ならではの「政策医療」を提供していく役割と、公立病院といえども「地域医療の担い手」であるという2つの点を、地域特性(都心部には特定機能病院が多数あるが、都下には少ないなど)も考慮して実現するためのものです。

▼墨東病院(墨田区)と多摩総合医療センター(府中市)は、所在地域に高度・専門的な医療を提供できる病院が少ない点などを考慮し、「広域的に総合的な医療を提供する」病院とする

▼広尾病院(渋谷区)と大塚病院(豊島区)は、所在地域に高度・専門的な医療を提供する病院が数多くあり、それらとの機能重複もあるが、「強みを活かしつつ、地域医療機関との役割分担・連携の下、地域医療の充実に貢献する」病院とする

▼駒込病院(文京区)、神経病院(府中市)、小児総合医療センター(府中市)、松沢病院(世田谷区)を「専門機能を発揮する」病院とする

都立8病院の類型化構想(その1)
都立8病院の類型化構想(その1)
都立8病院の類型化構想(その2)
都立8病院の類型化構想(その2)
 
 さらに、例えば、広尾病院では「救急医療機能の強化(複数診療科の連携による血管内治療センター、外傷センターの設置など)「災害時オペレーション体制の確立」「島しょ部医療機関等との連携強化」などを、墨東病院では「高度医療が必要な救急患者の受入強化(ハイリスク妊産婦・新生児受入体制強化)」「総合診療基盤の強化(腎センター、内視鏡センターの体制強化)」などを、駒込病院では「がんゲノム医療の推進(がんゲノム医療中核拠点病院を目指す)」「早期介入・早期サポートモデルの推進」「地域医療機関では対応困難な進行がん、高齢者のがん、合併症を伴うがんなどの積極的な受け入れ」などを行うと言った具合に、どういった機能を強化し、何を目指すのかを個別病院について明確化しています。
都立8病院の個別機能強化・充実方向
都立8病院の個別機能強化・充実方向

患者支援体制を強化し、外来から入院、在宅移行まで継続してサポート

 この類型化、機能分化を実現するために、プラン2018では▼患者・都民第一▼地域特性の反映▼資源の有効活用—という点を踏まえた上で、次の6つの戦略を立てています。
(1)都の医療政策推進への貢献
(2)安全・安心で質の高い医療の提供
(3)地域の医療提供体制の確保・充実への貢献
(4)専門性が高く良質な医療人材の確保・育成
(5)サステイナブルな病院運営体制の構築
(6)都民にわかりやすく病院の状況を見える化

 まず(1)は「都立病院ならでは」の政策医療を提供するもので、例えば▼駒込病院では、個人の遺伝情報に基づく、個々のがん患者に最適な「がんゲノム医療」を実施▼多摩総合医療センターと小児総合医療センターの連携を推進し、AYA世代のがん患者に対する診療・相談支援体制を充実▼基幹災害拠点病院である広尾病院で、減災対策支援室の体制強化による地域の関係機関との緊密な連携体制を構築▼神経病院で、「難病に対する先進的な治療」や「ロボットスーツの活用等による先進的なリハビリテーション」を提供—するなどの具体策が示されています。

また(2)では、▼質の高い医療提供▼高度で先駆的な医療提供▼だれもが利用しやすい環境づくり▼患者支援機能の充実・強化▼医療安全管理対策等の充実▼情報システム管理体制の強化—という6施策を打ち出し、とくに現在の「患者支援センター」を「患者・地域サポートセンター(仮称)」へ再構築し、機能強化する方針を強調しています。具体的には、医療メディエータ―(医療対話仲介者)などを配置して患者の声・相談を吸い上げる「患者サービス部門」と、入院時支援・退院支援・在宅移行支援・医療連携地域連携等を推進する「地域移行支援部門」とを一体的に運営し、患者と地域を総合的にサポートする体制を構築するものです。

患者サポート体制を拡充する
患者サポート体制を拡充する

ICTを活用して島しょ部の医療機関と連携するなど、地域包括ケアシステムを支援

さらに(3)の「地域の医療提供体制の確保・充実への貢献」では、▼ICTを活用した、大学病院・地域医療機関・島しょ部の医療機関等との連携体制強化▼地域包括ケアシステムを支援するモデルの構築▼地域医療機関の医師との合同カンファレンス開催や、東京医師アカデミー(都立病院・公社病院による後期臨床研修システム)の活用などによる「地域連携を支える人材育成の支援」▼都立病院・公社病院(東部地域病院、多摩南部地域病院、大久保病院、多摩北部医療センター、荏原病院、豊島病院)との連携体制強化―などが行われます。

このうち地域包括ケアシステムを支援するモデルとしては、例えば次のような具体的な構想も出来上がっています。

▽広尾病院による「島しょ部医療サポート」モデル:ICTを活用した島しょ部患者の円滑な在宅移行(帰島)支援の実施、地域貢献病床を活用した島しょ部患者への柔軟な対応の検討など

▽大塚病院による「在宅医療支援」モデル:連携医と協定を締結し、一般医療機関では対応困難な合併症などを有する在宅療養患者が急変・増悪した際に、円滑な受入れを行う仕組みを整備する

▽神経病院、小児総合医療センター、松沢病院による「地域医療支援」モデル:各病院の専門領域の患者(例えば神経病院では難病患者、松沢病院では精神疾患患者)が、在宅で安心して療養生活を送れるような支援を行う

都立8病院・公社6病院が、地域医療機関と連携し「人材育成・確保」も強化

 また(4)の人材確保・育成に関しては、▼採用からその後の配置管理等を一連のものとしたスキル習得やキャリア形成▼職員1人ひとりの能力伸長・発揮を反映する処遇の確立▼ライフ・ワーク・バランス推進に資する柔軟な勤務時間の工夫—などに関する人材マネジメントの基本方針「都立病院版人材育成活用方針(仮称)」を策定し、具体的な施策を検討・推進していく方針を打ち出しています。

 さらに前述した都立病院・公社病院による後期臨床研修システム(専門医研修)である東京医師アカデミーを充実させ、「地域医療機関との相互研修・人材交流」「地域での復職を希望する女性医師などの受け入れ・復帰訓練」を積極的に行う考えを示しています。「医師の東京一極集中」という指摘・批判に対し、東京から地域に医師を派遣するといった形で一つの答えを出す構想とも言えるでしょう。

地域医療機関と連携した医師確保・育成などに取り組む
地域医療機関と連携した医師確保・育成などに取り組む
 

DPCデータの活用、共同購入強化等により「コストを抑え、収益を拡大」する

一方、(5)の病院運営体制については、▼病院マネジメント機能の強化(院長のトップマネジメントを補佐する体制の構築、自律的な病院経営を実践する病院組織のあり方検討など)▼病院経営を支える事務職員の育成▼働き方改革の推進(専門性を活かす職種間役割分担の見直し、医師事務作業補助者・看護補助者の活用、病棟業務を担う薬剤師の活用など―を打ち出しました。

さらに、こうした基盤強化と同時に「経営力強化」も重視し、次のような取り組みを行う考えを強調しています。

【収益の確保】
▽紹介・逆紹介や地域医療機関への連携訪問の推進などを通じた、積極的な「新規患者」の受け入れ
▽これまで都立病院が強化してきた医療機能を最大限発揮するとともに、上位の施設基準の取得等による「診療単価」の向上
▽DPCデータ分析や他病院との比較データ等を活用した、「診療プロセス」の見直し、「医療の質」の向上、「効率性」に対する意識醸成
【支出の抑制】
▽材料費・経費の抑制に向けた、「共同購入」の拡充、多様な契約手法の検討
▽民間の経営ノウハウ活用、PFI事業者とのパートナーシップ醸成
▽都立・公社病院間での費用削減につながる効果的な取組等の情報共有

収益改善・コスト適正化を図り、自己収支比率を2023年度に79%弱にまで上げたい考え
収益改善・コスト適正化を図り、自己収支比率を2023年度に79%弱にまで上げたい考え

 
 また(6)では、▼医療の質に関する新たな評価指標の設定▼病院機能の第三者評価結果の公表▼病院毎の経営指標分析結果の公表—などにより「都立病院の状況」の見える化を進めると同時に、外部有識者で構成される「都立病院経営委員会」での計画進捗状況の評価、さらに評価結果のホームページでの公表などを進める考えです。

 

 

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