介護医療院、利用者の個別ニーズに合わせたサービス提供が極めて重要―日本介護医療院協会



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 2018年度の介護報酬改定で▼医療▼介護▼住まい―の3機能を併せ持つ「介護医療院」が新設され、介護療養型医療施設や医療法上の看護配置基準を満たさない医療療養(25対1医療療養に近い)からの転換が期待される。転換施設は、▼医療▼介護―はこれまでにも提供してきており、問題ないと思われるが、新たなサービスである「住まい」機能を充実させていく必要がある―。

 日本介護医療院協会が4月2日に開催した設立記念シンポジウムでこういった議論が行われました。

4月2日、日本介護医療院設立記念シンポジウムが開催された
4月2日、日本介護医療院設立記念シンポジウムが開催された

介護医療院へ移行した場合の加算、「早期かつ一斉転換」がポイントに

 2018年度診療報酬・介護報酬改定の詳細が固まり、介護療養や医療法上の看護配置を満たさない医療療養について、他機能の病床への転換を促進していく方向が明示されています。その選択肢の一つとして、▼医療▼介護▼住まい―の3機能を併せ持つ新たな介護保険施設「介護医療院」があります。

こうした動きを受け、「日本介護医療院協会」(会長:江澤和彦・医療法人和香会倉敷スイートタウン理事長)が発足。4月2日には▼厚生労働省の鈴木康裕医務技監▼日本医師会の鈴木邦彦常任理事▼衆議院の安藤高夫議員▼日本慢性期医療協会の武久洋三会長—を招いた設立記念シンポジウムが行われました。

厚労省の鈴木医務技監は、我が国の医療提供体制を俯瞰すると「医師、看護師数は人口1000人当たりで見ると『欧米諸国と遜色がない』ものの、人口1000人当たりの病床数が多いために、『病床100床当たりの医師数、看護師数』が少なく(薄く)なっている」点を指摘。その上で「私見である」と強調した上で、「手厚い医療、看護を提供するために、救急医療提供体制等に十分配慮した上で、一定の集約化が避けられないのではないか」との考えを示しています。

その場合、「複数医療機関の再編・統合」などのほか、例えば「一部の病棟に医師・看護師等を集約化して高機能化し、他の病棟を住まい機能などに転換する」方策も考えられます。鈴木医務技監は、この「住まい機能」の1つとして「介護医療院」に注目し、「医療機関における新たな『住まい機能モデル』になるのではないか」と見通しました。

さらに、今般の診療報酬・介護報酬改定に盛り込まれた【移行定着支援加算】(介護療養などから介護医療院に転換した場合、1年間、1日につき93単位を算定可能)に触れ、▼早期に▼転換予定病棟を一斉に―転換したほうが、より多くの加算を算定できることを強調しています(関連記事はこちら)。

【移行定着支援加算】は、介護医療院への転換から1年間算定できますが、例えば「介護療養を2病棟(A病棟、B病棟)もつ病院があったとして、A病棟は2018年度に、B病棟は2019年度に介護医療院に転換した場合、A病棟は2018年度の1年間、【移行定着支援加算】を算定できるものの、B病棟では2019年度に加算を算定することはできない」仕組みとなっているのです。また加算の算定期限は「2021年3月末まで」とされているため、介護医療院への転換を予定している場合には、▼早期に▼転換予定病棟を一斉に―転換するべきなのです。

厚生労働省の鈴木康裕医務技監(写真、向かって左)と、日本医師会の鈴木邦彦常任理事(写真、向かって右)
厚生労働省の鈴木康裕医務技監(写真、向かって左)と、日本医師会の鈴木邦彦常任理事(写真、向かって右)

介護医療院、介護療養からの転換策として「初の成功事例になる」

 また、介護医療院創設論議をしてきた「療養病床の在り方等に関する検討会」「社会保障審議会・療養病床の在り方等に関する特別部会」の委員・構成員であり、介護医療院の報酬論議をした社会保障審議会・介護給付費分科会の委員でもある、日医の鈴木常任理事は、介護医療院創設の経緯を振り返ったうえで、「介護療養からの転換支援策の中で、初めての成功事例になるのではないか」と期待を寄せました。かつて「介護療養から介護老人保健施設への転換」が促進されましたが、十分に進まなかったことを踏まえた指摘と言えます。

 また鈴木医務技監と同様に【移行定着支援金】に注目し、やはり▼早期に▼転換予定病棟を一斉に―転換することが得策であるとコメント。ただし「一部には『介護療養からの手切れ金』との噂もある」とコメントし、会場からの笑いを誘う一幕もありました。

 なお、鈴木・日医常任理事は、「介護医療院を含めて、超高齢社会に適した日本型医療システムを構築する必要があり、医療機関・介護施設が中心となった地域活性化を進める必要がある」と、より大きな視点で介護医療院を考えていくことが重要と強調しています。

新たな「住まい」機能、個別ニーズを把握し、そこに合わせることが重要

 一方、武久・日慢協会長は、今後の超高齢社会において「慢性期病院は、療養病床だけでは生き残れない。外来医療、デイケア、訪問診療・介護などの多機能を持ち、地域のさまざまなニーズに応えていく必要がある」と強調。さらに、「介護施設や介護保険サービスを提供せず、『医療提供だけを行う』と考えている病院」にとって、極めて厳しい時代になると見通し、▼自前での介護サービス提供(介護医療院の設置もここに含まれる)▼地域の介護施設との協力―体制を早急に整える必要があると訴えています。

 ところで、介護療養などが介護医療院に転換した場合、これまでに▼医療▼介護―サービスは提供しているものの、新たな「住まい」サービスの提供に戸惑うのでないでしょうか。この点について、江澤・日本介護医療院協会会長は、「プライバシーの確保」「個別ケア(利用者の意思・趣向・習慣の尊重)」などが重要になると強調。例えば、前者の「プライバシーの確保」では、単に間仕切りを設けるというハード面の手当てにとどまらず、ソフト面でのプライバシー確保を各施設の状況に応じて工夫していくことが重要です。

また後者の「個別ケア」については、利用者の生活習慣に配慮し、まず「食事の時間を一律にしない(起床時間などは利用者でまちまち)」「好きなテレビ番組を見られるようにする」「レクリエーションについても、世代の変化を考慮する(例えば、演歌からビートルズへ)」「入浴の回数をできるだけ多くできるような工夫を行う」などを行ってはどうかと例示しています。

日本介護医療院協会の江澤和彦会長
日本介護医療院協会の江澤和彦会長
 
「住まい」機能の充実に向けて、「個別」利用者のニーズをできるだけ汲み取り、限界がある中で、どう実現するかを職員全員で考えていくことが、「選ばれる介護医療院」になる第一歩と言えそうです。

 
なお、安藤・衆議院議員は、今後の政策課題として▼施設における医療・介護の質向上▼▼継続性のある制度設計・運用▼マンパワーと財源の確保▼適切な加算の設定▼実態に即したハード・ソフトの検討(例えば都会における施設設置基準の緩和など)—を国政の場で議論していく点を強調しています。

日本慢性期医療協会の武久洋三会長(写真、向かって左)と、衆議院の安藤高夫議員(写真、向かって右)
日本慢性期医療協会の武久洋三会長(写真、向かって左)と、衆議院の安藤高夫議員(写真、向かって右)

 

 

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