75歳以上の後期高齢者医療制度、2016年度は単年度で737億円の黒字―厚労省



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 75歳以上の方が加入する「後期高齢者医療制度」は、2016年度には単年度で737億円の黒字、前年度からの繰越金などを加味すると4951億円の黒字となり、不測の事態に備えるための積立金は2012億円となった―。

 このような状況が、厚生労働省が3月9日に発表した2016年度の「後期高齢者医療制度(後期高齢者医療広域連合)の財政状況等について―速報―」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
2016年度後期高齢者医療制度の財政状況 180309の図表

後期高齢者の医療費、公費5割、若年者の支援4割、保険料1割という構成で支える

 我が国では、すべての国民が何らかの医療保険制度に加入することになっています(国民皆保険制度)。大企業のサラリーマンであれば主に健康保険組合に、中小企業のサラリーマンは主に協会けんぽに、公務員は共済組合に、自営業者や無職者は市町村国民健康保険(2018年度から都道府県の国民健康保険となります)に加入します。

 ただし75歳以上の高齢者は、現役で企業に勤めていても、年金生活であっても、都道府県単位の「後期高齢者医療制度(後期高齢者医療広域連合)」に加入します。2008年の医療保険制度改革において「若人全体で高齢者の医療制度を支えていく必要がある」との考えの下に設立されたものです。

 このように後期高齢者医療制度は「75歳以上の高齢者のための医療保険制度」と考えることができます(厳密には医療保険制度ではない)が、一般に高齢者は所得水準が低く、一方で傷病になりやすく、かつ治療が長期間に及ぶことが多いため、医療費が高くなってしまいます。このため、単独で運営することは極めて難しく(極めて高額な保険料を設定するか、保険給付範囲を極めて狭くしなければならなくなってしまう)、若人からの支援が不可欠です。そのため、▽公費が約5割(国が25%、都道府県と市町村が12.5%ずつ)▽若人が加入する医療保険(健康保険組合や市町村国保)からの支援金が約4割▽高齢者自身の保険料が約1割―という財政構造になっています。

 2016年度における後期高齢者医療全体の収入(前年度からの繰越金などを除く単年度収入)は14兆6990億円で、前年度に比べて2812億円・2.0%増加しました。一方、支出(同じく単年度)は14兆6253億円で、前年度に比べて1349億円・0.9%の増加となっています。

 この結果、2014年度単年度の収支差は737億円(前年度から1463億円増加)となり、ここに国庫支出金の精算分を加味した「精算後単年度収支差引額」は329億円の黒字となりました。前年度は268億円の黒字だったので、財政状況がわずかに好転していると言えそうです。

 ところで、医療保険制度を運営していく上では、突発的な事態に備える必要があります。たとえば、強毒性の新興感染症が蔓延し(パンデミック)、医療費(給付費、支出)が急増することも考えられますし、また天災によって保険料(収入)が十分に確保できなくなるケースも考えられます。この場合、医療費が支払えないからといって、医療機関に「当面、収入がなくなりますが我慢してください」と依頼することはできません。医療従事者にも生活があるからです。そこで国は、医療保険者に対して「一定の期間、収入が確保できなくなるなどの事態が生じても保険制度を持続できる、つまり医療費の支払いを可能とする」ように、積立金の保有を求めています。後期高齢者医療制度も同様で、2016年度の積立金は2012億円となり、前年度の1949億円から63億円・3.2%の積み増しとなりました。財政好転による黒字を、いざというときのために積み立てたことによるものです。

 なお、この基金積立金や前年度からの繰越金などを加味した「収支差引合計額」を見ると、2016年度は4951億円の黒字となっています。前年度の黒字額は4260億円だったので、黒字幅が690億円拡大した計算となります。
 

高齢化が進展する中で、そろそろ「保険給付の在り方」を議論する必要も

ところで、後期高齢者医療制度を巡っては、健康保険組合など若人の医療保険者から「支援金負担が重過ぎる」との指摘があります。例えば2017年度における、健康保険組合全体の予算を見ると、後期高齢者(75歳以上、若人の医療保険全体で支援する)と前期高齢者(70-74歳、若人の医療保険に加入しており、加入者の多い国民健康保険等と財政調整を行う)への拠出金の合計が、保険料収入に占める割合は、▼全体の47.6%の組合で40-50%▼全体の28.4%の組合で40%未満▼全体の18.4%の組合で50-60%▼全体の4.8%の組合で60-70%▼全体の0.9%の組合で70%以上—となっており、平均で44.54%となっています。つまり、保険料収入の半数近くを「高齢者のために支出している」ことになります(関連記事はこちら)。

そうした中で、「どのようにして高齢者の医療費を支えるのか」という保険制度上の議論がさまざまなされています。しかし高齢化が進む中で、75歳以上高齢者の医療費はますます増加していき、「支え方の見直し」では対応しきれなくなることは確実です。後期高齢者の医療費そのものをどう考えるか、さらにその一環として「保険給付範囲をどう考えていくのか」という難しいテーマについても、そろそろ議論していく必要があるでしょう(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

 

 

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