保健師増員も地域格差拡大、がん検診受診率は低下傾向―厚労省



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地域保健事業に従事する保健師は、前年度に比べて増員となったが、都道府県間の格差は広がってしまった。また市町村の実施する「がん検診」の受診率は、全体として前年度に比べて低下しており、受診勧奨の強化に向けた取り組みが待たれる―。

 こうした状況が、厚生労働省が3月7日に公表した2016年度の「地域保健・健康増進事業報告の概況」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)(前年度の記事はこちら)。

地域保健事業に従事する保健師、人口比で見ても最多の島根県と最少の東京都で3.62倍

 「地域保健・健康増進事業報告」は、保健所・市区町村ごとに保健政策がどのように展開しているかの実態を調査するものです。

2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となり、医療・介護ニーズが増大することが予想され、現在の医療・介護提供体制ではこのニーズに十分に対応できないとされています。そこで、地域ごとに▼住まい▼医療▼介護▼予防▼生活支援―の各サービスを総合的・一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築が進められています。このシステムの中では、健康維持や疾病・介護予防といった分野で大きな役割を果たす保健師への期待がますます高まってきています(関連記事はこちらとこちら)。

 2016年度の事業報告を見ると、保健所・市区町村の地域保健事業に携わる保健師は2万5624名(前年度に比べて247名増員)であることが分かりました、内訳を見ると、▽都道府県保健所:3661名(同48名増員)▽政令市・特別区:6928名(同99名増員)▽政令市・特別区以外の市町村1万5035名(同100名増員)―となっています。

 また都道府県別に人口10万人当たりの配置状況みると、全国平均は20.0名で前年より0.2人の増員となりました。最多は島根県の41.6名(同0.5名増員)で、高知県37.7名(同3.3名増員)、山梨県34.3(同1.8名減員)と続きます。逆に最も少ないのは、東京都の11.5名(同0.1名増員)、ほか神奈川県12.1名(同0.1名増員)、埼玉県13.9名(同0.2名増員)などという状況です。

 最多の島根県と最少の東京都との格差は、3.62倍となり、前年度に比べてわずかに(0.01ポイント)拡大してしまいました。地域包括ケアシステムは「地域ごとの医療資源」(施設や設備、人員など)に応じて、柔軟に構築するものですが、やはり人口10万人当たりで4倍近い格差は大きすぎると考えられ、バラつきを埋めるための方策を具体的に検討し、実行に移す努力が各自治体に求められると言えます。

地域保健事業に従事する保健師の人口10万対配置を見ると、都道府県間で大きなバラつきがある
地域保健事業に従事する保健師の人口10万対配置を見ると、都道府県間で大きなバラつきがある
 
 このほか、保健所・市区町村の地域保健事業に携わる常勤の医療専門職の配置状況を見てみると、▼医師883名(前年度に比べて11名減)▼歯科医師131名(同23名増)▼薬剤師3071名(同55名増)▼理学療法士149名(同12名減)▼作業療法士98名(同7名減)▼管理栄養士3306(同123名増)▼助産師143名(同10名増)▼看護師743名(同105名減)▼准看護師116名(同6名減)―などとなっており、多くの職種で「減員」が目立ちます。その要因などを明確にした上で、人員確保策を練る必要があるでしょう。
地域保健に従事する医療職種別の人員数、職種によって前年度から増減の状況が異なっている
地域保健に従事する医療職種別の人員数、職種によって前年度から増減の状況が異なっている

市町村による「がん検診」の受診率、全体として低下傾向

 市区町村が実施したがん検診の受診率を見ると、▼胃がん:8.6%(同2.3ポイント上昇)▼肺がん:7.7%(同3.5ポイント減)▼大腸がん:8.8%(同5.0ポイント減)▼子宮頸がん:16.4%(同6.9ポイント減)▼乳がん:18.2%(同1.8ポイント減)―となっています。胃がんを除き、最近の受診率は低下傾向にあり、その要因をしっかりと分析することがまず求められます。

 また市区町村別・がん種別に、検診受診率の状況を見ると、「50%以上」のがん種類・市区町村ともに2桁以下にとどまっており、前年度からの「下落」状況には目を覆いたくなります。胃がん検診については、10%未満が605自治体で、全体の34.8%を占めています。前年度は過半数(53.0%)であったことを踏まえれば「改善している」と言えますが、さらなる改善に向けて「受診勧奨方法の検証」などを進めなければいけない状況です。なお、肺がんについては、10%未満が745自治体で、5大がんの中でもっとも「検診が遅れている」がん種となってしまいました。ただし、2016年度からは「がん検診の対象者数について、各がん検診の対象年齢の全住民を報告するよう徹底した」ため、数値の比較には若干の留意が必要となります。

がん検診受診率を密度、肺がんや大腸がん、胃がんでは、受診率が10%に満たない自治体が多いことが分かる
がん検診受診率を密度、肺がんや大腸がん、胃がんでは、受診率が10%に満たない自治体が多いことが分かる
 
 なお、2014年度に市区町村が実施したがん検診における要精密検査者のうち、「がんであった者」の「がん検診受診者」に対する割合は、▼胃がん:0.09%(前年度から0.01ポイント減)▼肺がん:0.04%(同増減なし)▼大腸がん:0.19%(同増減なし)▼子宮頸がん:0.04%(同増減なし)▼乳がん:0.33%(同0.01ポイント減)―という状況です。さなる精度向上に向けた取り組みが期待されます。
要精密検査の受診状況は、がん種によって相当程度異なっている
要精密検査の受診状況は、がん種によって相当程度異なっている
 

 

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