2018年度から重度化予防等に力を入れる自治体に重点補助―厚労省・介護保険等課長会議(1)



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 2018年度は、地域包括ケアシステムの構築に向けて▼改正介護保険法の施行▼新たな介護保険事業(支援)計画のスタート▼介護報酬改定―という重要事項が重なる。とくに改正介護保険法で創設された「保険者機能推進交付金」の活用した保険者機能の強化や、医療・介護連携、多様な人材確保などに十分に取り組んでほしい―。

 厚生労働省は3月6日に全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議を開催。厚労省老健局の濵谷浩樹局長は、冒頭の挨拶の中でこのように強調しました。

 今回は、新設される「保険者機能推進交付金」についてお知らせし、2018年度の介護報酬改定の内容については別稿でお伝えします。

3月6日に開催された、2017年度の「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議」
3月6日に開催された、2017年度の「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議」

在宅医療等のニーズ拡大に対応するため、医療・介護計画の整合性確保も重要

 濵谷老健局長は、団塊の世代がすべて75歳となる2025年に向けて、医療・介護ニーズが急増していくことを強調し、2018年度には▼改正介護保険法(地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律)の施行(一部を除く)▼新たな(第7期)介護保険事業(支援)計画のスタート▼介護報酬改定―の3つの重要な動きがあると指摘。

3月6日に開催された、2017年度の「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議」の冒頭で挨拶した厚生労働省老健局の濵谷浩樹局長
3月6日に開催された、2017年度の「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議」の冒頭で挨拶した厚生労働省老健局の濵谷浩樹局長
 
このうち改正介護保険法では、地域包括ケアシステムの推進に向けて「保険者機能の強化」が重要となり、それを下支えするために「保険者機能推進交付金」(インセンティブ交付金)が制度化されました。この点については後述します(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

また第7期介護保険事業(支援)計画では、これまでの計画と比べ▼ニッポン⼀億総活躍プランに盛り込まれた「介護離職ゼロ」を踏まえる(人材確保やサービスの充実など)▼医療計画との整合性を確保する―という2点に留意する必要があります。とくに後者については、地域医療構想の実現に向けて在宅医療需要が増大する(療養病棟に入院する医療区分1の患者の70%を在宅移行することなどにより、2025年度時点で30万人分のサービス確保が求められる)ことを踏まえ、「在宅医療」と「介護施設等」とでどう対応するのか、介護保険担当部局と医療担当部局との密接な連携し、整合性を確保してほしいと濵谷老健局長は強く要望しています(関連記事はこちらこちら)。

さらに介護報酬改定でも、「自立支援・重度化予防」が重視されADL維持等加算(利用者のADL改善を指標とする加算)が創設されるなどしています。濵谷老健局長はさらに「人材確保が、喫緊かつ将来の課題である」と指摘。多様な人材の活用を図ってほしいと要望しました。例えば「生活援助を中心に行う生活援助者の研修」創設などもこの一環です。

自立支援・重度化防止に実際に取り組み、成果も出す市町村により多くの補助金を交付

 「保険者機能推進交付金」(インセンティブ交付金)は、昨年(2017年)5月に成立した改正介護保険法(地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律)で創設されたもので、「自立支援・重度化防止に向けた保険者機能を強化する」ことが狙いです((関連記事はこちらこちら)。

高齢化の進展で介護費は増加しており、介護保険財政はもとより、我が国の財政を圧迫しています。このため、介護費の増加を抑えることが重要であり(今後ますます重要性を増す)、「できだけ要支援・要介護状態にならないような」、また「要支援・要介護状態となっても重度化しない」ような取り組みを強化していくことが求められています。

そこで改正介護保険法では、自治体ごとに「自立支援・重度化防止等に向けた力の入れ具合」を評価し、評価結果に応じた補助金(交付金)を交付することとしたのです。厚労省老健局介護保険計画課の橋本敬史課長は、「自治体による自立支援・重度化防止の取り組みを補助金で支援することで、▼地域支援事業▼市町村の特別給付▼保健福祉事業―を充実すること」が期待される旨を強調しています。なお、詳細について厚労省は、2月28日付の事務連絡「平成30年度における保険者機能強化推進交付金(市町村分)について」「平成30年度における保険者機能強化推進交付金(都道府県分)について」で明らかにしています。

補助金は、市町村全体と都道府県のそれぞれに交付されます。まず市町村への補助について見てみましょう。

市町村には、高齢者の自立支援・重度化防止に向けた「実際の取り組み」を実施することが求められます。そこで厚労省は、次のような指標について「市町村の実際の取り組み状況」を点数化。各市町村で点数を合計し、その高低によって補助金にメリハリがつけられます。2018年度の補助総額(市町村全体)は約190億円です。

【市町村の指標例】
(1)PDCAサイクルを活用した保険者機能の強化に向けた体制等を構築しているか
▽地域包括ケア「見える化」システムを活用して自地域と他地域を比較し、「自地域の介護保険事業の特徴」を把握しているか

(2)自立支援・重度化防止等に資する施策をどれだけ推進しているか
▽保険者独自の地域密着型サービスを実施しているか
▽地域包括支援センターに保健師・社会福祉士・主任ケアマネの3職種を配置しているか、地域包括支援センターと協議してケアマネ対象の研修会・事例検討会を計画しているか
▽地域の医療・介護関係者で「在宅医療・介護連携」の課題を検討し対応策を立てているか、介護報酬の「入院時情報連携加算」(利用者が入院した際、ケアマネから医療機関への情報連携を評価)や「退院・退所加算」(入院した利用者が退院する際、ケアマネが医療機関から情報収集することを評価)をどれほど算定しているか
▽介護予防を目指す「地域リハビリ活動支援事業」などに、リハビリ専門職種が関与しているか
▽生活支援コーディネーターが、地域資源の開発に向けて「地域ニーズや既存資源の把握」「問題提起」などを行っているか
▽要介護度の改善度合いはどの程度か

(3)介護保険運営の安定化に資する取り組みをどれだけ推進しているか
▽ケアプラン点検や医療情報との突合・縦覧点検などをどの程度実施しているか
▽介護人材確保に向けた具体的な取り組みを行っているか

 指標の中には「要介護度の改善度合い」など、いわゆるアウトカムを評価する者も含まれている点、「要介護度の改善度合い」は相対評価である(上位の市町村のみが評価される)点など注目されます。各項目に10点、または5点が設定されており、取り組みを積極的に行う市町村ほど高得点を獲得でき、より多くの補助金が交付されることになります。

 補助金は、▼地域支援事業▼市町村独自の特別給付(例えば要介護度改善に対するインセンティブなど)▼保健福祉事業―など、高齢者の自立支援・重度化防止に資しる幅広い事業に活用することが期待されます。

4月から各項目の実施状況をアンケート調査し、来年(2019年)3月(つまり2018年度内)に補助金が実際に交付されます。

「市町村の自立支援・重度化防止」をしっかりサポートする都道府県にも補助金

次に都道府県への補助について見てみましょう。

都道府県は、高齢者の自立支援・重度化防止に取り組む市町村の「支援」が求められます。次のような指標について支援状況を点数化し、都道府県ごとに点数合計の高低によって補助金にメリハリがつけられます。2018年度の補助総額(都道府県全体)は約10億円です。

【都道府県の指標例】
(1)管内市町村の介護保険事業に係るデータ分析等を踏まえて、地域課題を把握し、支援計画を作成しているかの強化に向けた体制等を構築しているか

▽地域包括ケア「見える化」システムなどを活用して管内市町村を分析し、実状や課題を把握した上で、その内容を市町村と共有しているか
▽市町村の行う「自立支援・重度化防止などに向けた取り組み」の実施状況や課題を把握した上で、その内容を市町村と共有しているか

(2)自立支援・重度化防止など、保険給付の適正化事業を行う市町村をどれだけ支援しているか
▽地域ケア会議に関し、自立支援・重度化防止等に資するような市町村への研修事業、アドバイザー派遣などを行っているか
▽リハビリ専門職等の人的支援を関係団体と連携して取り組んでいるか
▽在宅医療・介護連携に向けて、「診療報酬や介護報酬のデータ提供」「データ活用方法の指導」「退院支援ルールの策定」などの支援を行っているか
(例えば、福井県では▼高齢者の入院時に病院側がケアマネに連絡し、ケアマネから情報提供を受ける(ケアマネがいない場合には、病院側が要介護認定申請を支援)▼入院中には病院とケアマネで情報連携する▼退院支援が開始されたら病院からケアマネに連絡し、ケアマネがケアプラン作成などを始める—という退院支援ルールを定めている)
▽介護保険事業支援化計画の中で「必要な人材数」を推計し、確保に向けた取り組みを実施しているか

(3)管内市町村において、評価指標は達成できているか
▽要介護認定等の基準時間(介護の手間を時間で評価し、これをベースに要介護度を測定する)がどれだけ改善しているか
▽要介護認定率がどれだけ改善しているか
▽管内市町村が、どの程度指標を達成できているか

都道府県でも、「要介護認定率の改善度合い」などは上位自治体のみが評価される「相対評価」となっている点が注目できます。「自地域で頑張る」だけでなく、他地域の状況を見て「自地域の取り組み内容を改善していく」ことが必要で、競争を促す仕組みと言えるでしょう。

都道府県には「市町村の支援」が求められるため、(1)の点数が「15点」と高く設定されています。
 
なお橋本介護保険計画課長は、都道府県への補助金の使途(使い道)として、▼市町村が保険者機能を発揮するための研修▼市町村自身が、地域包括ケアシステム「見える化」システムを活用して、現状分析や地域の特徴を把握できるような支援▼自立支援・重度化防止等に資する地域ケア会議の開催、効果的な介護予防を実施するためのアドバイザー派遣▼生活支援体制を整備するための人材育成や助言・指導▼リハビリ専門職の広域派遣調整—などを例示。とくにリハビリ専門職については、市町村サイドから職能団体(理学療法士協会など)へ派遣依頼することは難しいとされ、都道府県が地域医師会などと連携して、市町村への職員派遣を依頼するような仕組みの構築が求められます。

また、新たな補助金は、▼施設整備関係▼介護給付費▼地域支援事業▼低所得者への保険料軽減▼財政安定化基金に係る都道府県負担分▼地域医療介護総合確保基金に係る都道府県負担分―などに充当することはできません(これらは介護保険制度として負担するもの)。

都道府県についても4月から各項目の実施状況をアンケート調査し、来年(2019年)3月(つまり2018年度内)に補助金が実際に交付されます。

 

 

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